マンパワー社員の内部告発「東京都の外郭団体委託の企業説明会で、サクラの学生」

HARBOR BUSINESS Online / 2019年11月4日 8時33分

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◆「サクラの学生を雇っていた」と、筆者へ実名での通報

 10月18日、東京都と「東京しごと財団」(東京都の外郭団体。以下、財団)は、「団体別採用力 スパイラルアップ事業の受託者における契約違反について」という報道発表を行った。

 それによると、財団が「マンパワーグループ」(大手人材派遣会社。以下、マンパワー)などへ委託している合同企業説明会で「契約違反の事実が確認された」、具体的には「金銭を提供して学生を集客していた」という。

 つまり、マンパワーなどが説明会を盛況に見せるため、サクラの学生を雇って参加させていたわけだ。

 東京都と財団は、「(事実が確認された)2件の違反に係る合同企業説明会に要した委託費用約180万円を不支給とする」ほか、「過年度分を含めて本事業に関連する全ての合同企業説明会について、調査を実施し、同様の事案が発覚した場合は、厳正に対処していく」という。

 なお「本件については、令和元年7月に都に対して匿名の通報があったことをきっかけとして、都と東京しごと財団が事業者への聞き取り及び書類の調査を行い、これまでに上記の2件の契約違反があったことを確認した」としている。

 実は、東京都と同時に筆者へも通報があった。しかも、実名での通報だ。

 これは公益通報(内部告発)者の保護と、東京都の調査の公正さが問題となる事件なので、現時点で筆者も中間報告しておきたい。

◆マンパワー従業員の証言「学生1人当たり1万5000円を支払い集客」

 マンパワーで働くAさんからツイッターのダイレクトメッセージが届いたのは、2019年7月中旬のこと。以下はAさんと筆者とのやりとりだ(明らかな誤字など、一部を修正)。

Aさん:企業側のための採用イベントを税金で運営していますが、学生を集客するために学生1人あたり1万5000円を代理店に支払い集客しています。

 当然、学生はその企業採用イベントには興味がなくても、バイト感覚で来ている。これって税金の無駄遣いだし、東京都および都民や企業を騙す行為だと私は思うのです。しかし会社は毎年、当たり前のように金でサクラを使っています。

 先ほど、東京都に「不正な行為に当たるか」と確認の連絡をしたところ、直の担当者は不在でしたが「不正行為にあたると思う」といった回答で、「詳しく聞きたい」と言われました。やはり問題はあるかと思います。

筆者:とりあえず面従腹背で、証拠、特に物証を集めたほうがいいです。役員らの発言の隠し録りもいいと思います。証拠を固めきって動かないと、A(原文実名)さんが不利益を被ります。ちょっと東京都に言うのが早かったかもしれませんね。会社も警戒するでしょう。

Aさん:代理店を通しているので、会社は「サクラを利用しているとは知らなかった」と代理店に責任を押しつけることは可能だと思います。

筆者:その責任逃れを許さない証拠固めが必要ですね。

Aさん:私は会社には恨みはないのですが、税金の無駄遣いはちょっと心が痛いというか、やめてほしいのですよね。血税ですから。企業が人材採用できると期待して参加しているのに、サクラを呼んでいるとは申し訳ないです。こんなことを、少なくとも3年は続けています。

筆者:詐欺ですね。

◆社内で不正の証拠を集めるAさんに、東京都就業推進課から連絡

 以後、Aさんと筆者はツイッターのダイレクトメッセージ、メール、電話で連絡をとるようになった。

 Aさんが社内で不正の証拠を収集している時期に、東京都就業推進課から連絡があった。しかし、Aさんは以下のように伝えたという。

「調査した結果、問題がありませんでしたとなったら、会社での私の立場もあるので、詳細は一切お伝えできません。理由は、東京都が身内で揉み消すことも考えられるからです」

 2019年7月末、証拠固めが完了したので、筆者はAさんに東京都の公益通報の弁護士窓口へ通報するようすすめた。Aさんは所定の通報用紙に不正の詳細を記入し、証拠文書を添付して弁護士窓口へ送信した。

 以下、記入内容の一部を紹介する(一部の固有名詞をアルファベットに置き換えるなど修正)。

◆Aさんが公益通報の弁護士窓口に通報した内容とは

【通報概要】

 東京都→公益財団法人東京しごと財団が委託をしているマンパワーグループ株式会社において、把握している限り2017年の学生合同説明会等のイベントにマンパワーグループは株式会社B(代表取締役はC大講師)に依頼をして、学生をサクラ(報酬を支払いイベントに参加をさせる)として2019年現時点までのイベントで複数回に渡り雇っている。

【具体的な通報内容】

 2019年7月18日、ホテル「マロウドイン赤坂」で開催された就活合同説明会において、参加した約半数以上が株式会社Bを通して学生サクラを雇った。

 また今週の2019年8月3日、浜松町マンパワーグループ株式会社の会議室で開催される東京管工事組合コンソーシアムとして開催する学生就活合同説明会においては、参加予定の約40名全員が株式会社Bに依頼した学生のサクラである。

 マンパワーグループ株式会社は、恐らく株式会社Bがどのような手段で学生を集客したのか把握していないと言い逃れできると思っているようだが、マンパワーグループ社内ではイベントに「サクラを雇う」という会話が日常的に交わされおり、DとA(私)との会話の中でハッキリと「サクラを雇う」という内容の会話が交わされている。(録音あり)

◆Aさん「これは氷山の一角にすぎません」

 翌日、弁護士からAさんへ以下のメールが届いた。

「通報を拝受いたしました。都の公益通報制度は、都の職員の違法行為を対象といたします。そこで、本件は制度の対象となりませんが、事柄が重要と思われますので、関係部署に情報提供いたします。通報ありがとうございました」

 現在、Aさんはどう考えているのか。

「今回、東京都は合同企業説明会2回分の委託費用約180万円を不支給としましたが、これは氷山の一角にすぎません。もし今後、無駄遣いされた税金の全額が返還されないなら、もともと東京都や財団とマンパワーが癒着していたということだと思います」

 確かに、従前、サクラの学生が合同企業説明会に参加していたことを東京都や財団が知らなかったのは不自然だ。なぜならネットで検索すれば、そのような「アルバイト」の情報はいくらでも見つかるからである。

 今後、Aさんの処遇や東京都の調査の動きを見ながら、続報をお伝えしていきたい。

【文・写真/寺澤有】

【寺澤有】

フリージャーナリスト。出版社「インシデンツ」代表。9月27日にe-book『政務官が汚染水を飲むまで』を上梓)。その他の著書に『ドキュメント! 倒産した出版社から未払い印税を回収した話』、『こうして監視社会は始まった』、『裁判所が考える「報道の自由」』、『記者クラブとは』、『最高裁が隠蔽するGPS捜査令状報告書』』(ともにインシデンツ)など。

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