高射幸性パチスロ機の設置期限が再設定。業界とホール側の事情とは?

HARBOR BUSINESS Online / 2019年11月30日 8時33分

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一撃数千枚も可能な高射幸性機は人気機種でもある FINEDESIGN_R / PIXTA(ピクスタ)

◆高射幸性パチスロ機の設置期限が再設定へ

 パチンコホールによる組合である全日本遊技事業協同組合連合会(以下、全日遊連)は、11月13日に開催された全国理事会において、高射幸性パチスロ遊技機の設置比率に関する自主規制期限の再設定を決議した。

 国が推進するギャンブル等依存症対策の流れのなか、パチンコ業界は過去2万枚以上の出玉実績のある「高射幸性回胴式遊技機(パチスロ機)」の自主的な段階的撤去を決めていた。

 その自主規制の内容とは、店舗のパチスロ設置台数に対しての高射幸性パチスロ遊技機の比率を――

① 2018年1月末までに30%

② 2019年1月末までに15%

③ 2020年1月末までに5%

④ 2021年1月末までに完全撤去

と段階的に削減し、最終的に撤去することを定めていた。

 しかし2018年11月、全日遊連は、②の「2019年1月末までに15%」という自主規制の目標を、代替機となる新規則機(2018年2月1日の改正遊技機等規則に沿って製作された遊技機)が市場に十分に出回っていないことを理由に「延期」しており、本年9月の全国理事会においても同様の理由で新たな期限を定めないとしていた。

 結果、全国のパチンコホールは設置比率30%までの高射幸性パチスロ機の設置が黙認される状況となっており、パチンコ業界が掲げている依存問題対策の足枷になっていた。

◆「延長」を苦々しく思っていた警察庁と業界側の着地点

 このような状況で苦虫を噛んだのは、国策でもあるギャンブル等依存症対策を他の公営ギャンブルに先んじて推進したい警察庁であり、高射幸性パチスロ機の設置比率のパーセンテージとその期限に関しては、全日遊連と警察行政との間で幾度も協議が行われた。

 高射幸性パチスロ機はホールの収益の柱となっている主力機でもある。可能であれば、出来るだけ長く、出来るだけ多台数の設置を望む業界の思惑もある。本来であれば、2カ月後の「2020年1月末」までには5%まで引き下げなくてはならないものを、「新規則機が市場に供給されていない」ことを理由に、あえて明確な数値と期限を切らずに乗り切りたかったのが業界側の本音であろう。

 そのような背景を考える時、この度の全日遊連の全国理事会で決議した新たな目標期限「2020年1月末までに15%」というのは、明確なパーセンテージと期限を設定させたい警察行政と、少しでも多くの高射幸性パチスロ機の設置を勝ち取りたい業界側の思惑が一致した妥協点であるし、どちらかと言えばパチンコ業界側が望む形での決着であったと分析できる。

◆数値目標だけでない「3つの条件」

 今回の全日遊連の決議には、「2020年1月末までに15%」という数値目標の他に、3つの条件が課せられている。

① 設置比率5%の期限については延期となるが、早期達成に向け、一貫して「減少傾向」となるよう努めること。

② 高射幸性パチスロ機を増台するような行為を行わないこと。

③ お客様が遊技することを想定していないような遊技機を設置して総設置台数を増台することによって、高射幸性パチスロ機の設置比率を下げるような行為を行わないこと。

以上の3つである。

 これには業界内からも不満が漏れ聞こえる。本来の目標期限であった「2020年1月末までに5%」を遵守するために、計画的に高射幸性パチスロ機の減台を行っていたホールがバカを見るという意見である。一貫して減少傾向に努め増台は認めないというのであれば、ギリギリまで高射幸性パチスロ機を設置していたホールが有利になる。計画的に減台に努めていたホールが、それでも競合他店との関係性のなかで高射幸性パチスロ機の増台に踏み切るのか、自らの「遵法精神」と意志を貫くのか、難しい判断を迫られることになる。

◆繁忙期を迎えるパチンコ業界。今回決定でどう対応するか?

 もう一つの問題は③の条件だ。

 業界外の人には一読して何のことを言っているのか分からないだろうが、要は「立ちスロ」の設置である。この「立ちスロ」に関しては、2018年6月に本サイトに寄稿した拙文『なぜ客が付いてない「立ちスロ」が増えているのか? そのカラクリと問題点』を参照してほしい。

 ちなみにパチンコ業界の統計によれば、全国のパチンコ店に設置されている高射幸性パチスロ機の設置比率は既に15%を切っていると言われている。更に年末迄には全国に多台数設置されている高射幸性パチスロ機の法的な設置期限も迎える。2020年1月末迄には自動的に設置比率10%を切るのだ。

 それなのになぜ、敢えて「2020年1月末までに15%」という数字が出てくるのか。パチンコホールの思惑としては、より集客がしやすく、本来の稼働が良い優良店や旗艦店に高射幸性パチスロ機を集約させ、売り上げ効率を高めたいとの思いがある。今回の全日遊連の決議に付帯された条件には、そのような対策を取ろうとするホールへの牽制も含まれているのだ。

 何はともあれ、パチンコ業界が繁忙期を迎える年末年始。全国のパチンコホールが、今回の全日遊連の決議を受けてどのような対応をするのか、様々な意味で注目である。

<取材・文/安達夕>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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