モラ夫との調停では、離婚したい理由をわざわざ示す必要はない<モラ夫バスターな日々43>

HARBOR BUSINESS Online / 2020年1月15日 8時33分

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まんが/榎本まみ

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<43>

 法律相談で、「調停委員を味方につけるにはどうしたらよいですか」と訊かれることがある。特に、見通しの立たないまま離婚調停が長引くと、当事者の焦りが募って、調停委員を味方に引き入れたいと思うようだ。

 結論から言おう。

「調停委員を味方にする」必要は全くない。

 調停委員にこちらの言い分を分かってもらう必要も全くない。離婚調停における目標は、なるべくよい条件にて、なるべく早期に離婚を成立させることであり、調停委員に分かってもらうことではない。調停委員の理解や共感は、離婚調停成立に必要、有益な場合にのみ、必要な限度でのみで十分である。

◆モラ離婚では、離婚理由を示してはいけない

 モラ離婚(モラ夫との離婚)の進め方について、多くの被害妻は間違った選択をする。例えば離婚を要求すると、モラ夫は、「なぜだ! 理由を示せ!」という。被害妻は、真っ正直に、具体的理由を示そうと努力する。しかし、これは間違った対応である。離婚理由を示してはいけない。離婚成立が遠のいてしまう。

 まず、モラ夫が理由を言わせるのは、離婚要求を潰すためである。したがって、具体的理由を示しても反論がくるだけで、離婚協議は進まない。

 調停で離婚理由を示すとモラ夫は、公的場所で自分が非難/否定されたと思い、論争を仕掛けてくることが多い。

 多くのモラ夫は「勝ち負け」にこだわるので、自らの具体的モラ言動を否定し、妻を悪者にし、自分の努力、行いを最大限誇張した、読むだけで気分の悪くなるモラ書面を出してくる。それに対し、妻側が再反論してもきりがない。お互いに長い書面を提出し合っても、時間、労力、精神力を消耗するだけで、肝心の離婚条件の話合いは一向に進まない膠着状態となる。

 なお、調停委員には、長い書面を読む時間はない。調停手続きにおいて有効な主張書面/陳述書は、A4で1~2枚、1400字程度までが限界であり、それ以上に長い書面は当事者の自己満足に過ぎない(監護に関する陳述書や財産資料を除く)。

→次ページモラ夫との離婚調停を成功させるための3つのポイント

◆モラ夫との離婚調停を成功させるための3つのポイント

 離婚裁判では、当事者が離婚理由を主張・立証すれば、裁判官は離婚理由の有無を判断し、相手方の意向に反しても、離婚判決を出してくれる。ところが、調停においては、調停委員会は事実認定を行わず、司法判断も示さない。協議、調停においては、モラ夫も同意しないと離婚は成立しない。

 では、離婚理由の提示を求められたら、何を示せばよいか。モラ夫がこの結婚を諦めて、離婚に応じたいと思うような書面を作成し、提出するのが良い。具体的に何を書くのか。重要なポイントは、3つある。

① 離婚の決意が固いこと。いつ頃から離婚を考え始め、いつ離婚を決意したのか。離婚の同意が得られなければ、裁判に進むこと。万一、裁判で認められなくても、何度でも、離婚裁判を申し立てることなど、決意の固さを表現する。

② 何が起きようが、どのような調停、裁判の結果になろうが、絶対に再同居しないこと、二度と相手方の妻にはならないこと等。

③ 価値観を共有しておらず、婚姻関係の継続は不可能であること等。特に、モラ夫が絶対に譲れない価値観を強く否定するのが効果的である。

 離婚実務の経験からは、払うべきものをしっかりと払わせた方が、モラ夫は痛みを学習し、後腐れの可能性が減る。したがって、経済的諸条件は、相場通りの適正な額を要求するのがよい(第40回参照)。モラ夫を怖がって請求を遠慮すると、足元を見られて、離婚後も付きまとわれる可能性が高まる。

 面会交流は難しい問題である。家裁は、面会原理主義なので、何が何でも面会を実行させようとする。まず、子が面会を嫌がっている場合、相応の理由があるはずなので、専門家に相談(できれば依頼)し、家裁と対決する必要がある。同居時に父と仲が良く、親子関係に問題がないと思えても別居し、「父からの安全」が確保されると、面会を嫌がり始めることは決して少なくない。

 モラ夫の母親に対する攻撃を少しでも食い止めるため、あるいは、自らに対するモラを避けるため、父親に迎合的になる子どももいる。子どもが盾になってくれることに甘えて、子を犠牲にするのは間違っている。子どもの真意や精神状態を見極めるため、別居直後からの面会交流は避けて、しばらく子どもの様子を見るほうが良い。

◆結局、結婚とは何だったのか

 以上、妻が決意すれば、モラ夫とはいずれ離婚できる。単に手続きと時間の問題である。どこまでの手続きが必要で、どの程度の時間がかかるのかは、どこまでモラ夫が抵抗するかにかかっている。

 そして離婚が成立すると、妻は日々苦しめられてきたモラから解放され、再び自由を得て、至福を味わう。離婚弁護士はその幸福な顔を見るたびに、その妻の、それまでの苦しみの深さを知ることになる。

 苦しめられ、その頸木から逃れるために、大きなエネルギーと勇気を必要とする。結局、結婚とは何なのだろうか。

<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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