田村智子議員「桜」質疑はどう組み立てられたか?ーーしんぶん赤旗日曜版・山本豊彦編集長との対談を振り返って(第1回)

HARBOR BUSINESS Online / 2020年1月17日 8時33分

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筆者と赤旗日曜版編集長の山本豊彦氏(国会PVより)

◆国会PVが赤旗日曜版編集長を直撃

 国会パブリックビューイングは1月6日に、「しんぶん赤旗」日曜版・山本豊彦編集長にお話を伺った。

●「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング

●文字起こし:「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング 2020年1月6日

「桜を見る会」をめぐる追及の発端となった日本共産党・田村智子議員の昨年11月8日の質疑は、昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープの情報をもとにしている。「桜を見る会」が後援会行事とセットで後援会関係者を幅広く招待していたことを報じたそのスクープは、どのように準備されたのか。それを伺うのが対談の目的だった。

 対談の様子は上記の映像と文字起こしで公開しているが、3回にわたり記事でその内容を紹介しつつ考察しておきたい。

 第1回の今回は、昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープ(下記)に言及する前提として、昨年11月8日の参議院予算委員会における田村智子議員の質疑の巧みな組み立てに注目する。

◆確かな証拠・証言で外堀を埋めていく質疑

 田村智子議員は、上記の昨年10月13日の日曜版スクープで取り上げられた情報をもとに、昨年11月8日の参議院予算委員会の30分の質疑を組み立てた。

 国会パブリックビューイングでは昨年12月24日にこの質疑を6つのパートに分けてスライドで説明を加えながら新宿西口地下の街頭上映で紹介し、上映後に田村議員本人をゲストに迎えてお話を伺った。

●字幕【田村智子議員ゲスト出演・緊急街頭上映】「#桜を見る会」ビフォー・アフター 国会パブリックビューイング 2019年12月24日(街頭上映用)

 実際の質疑は、国会会議録検索システムから確認することができる。筆者のnoteでも、ヤジを含めた文字起こしを公開している。

 以下、12月24日の街頭上映で切り分けた次の6つのパートの順に、質疑の組み立てを確認していきたい。

Part1:データから近年の「桜を見る会」の変質を指摘

Part2:国会議員のブログから後援会関係者の大量招待を指摘

Part3:安倍事務所が「桜を見る会」の参加者を募集

Part4:税金を使った公的行事

Part5:「安倍晋三後援会」主催による前夜祭とセット

Part6:開門前に後援会関係者が会場に

 いずれのパートも、確かな証拠・証言に基づいて質疑が組み立てられている点が特徴だ。また、その証拠・証言が、相手の出方を見ながら順次開示されていき、答弁を覆す反証を示すことを繰り返すものであったこと、そして、じわじわと外堀を埋めていき、安倍首相本人の問題へと迫っていくものだったことが注目される。

 またこの質疑はわかりやすく整理されており、見ているだけで問題のありかが理解できる優れたものだった。

 日本共産党はみずからのYouTubeチャンネルにおいて、同日のうちにこの田村智子議員の質疑を切り取って紹介している。1月14日現在、その視聴数は29万回を超えている。

●「桜を見る会」が首相後援会の恒例行事に

 質疑の翌日の11月9日には、立憲民主党の枝野幸男代表が「党派を超えて、数年に一度の素晴らしい質疑だったと思います」とツイートし、多くの方にご覧いただきたいと勧めていた。

◆Part1:データから近年の「桜を見る会」の変質を指摘

 

 では、具体的に順に質疑を見ていこう。パートPart1では田村議員は、政府が提供したデータをもとに質疑を行う。その前に

「安倍内閣のモラルハザードが問われていますが、私は総理自身の問題を質問いたします」

と、テーマが明確にされていることにも注目したい。

 田村議員はまず、「桜を見る会」の支出(予算および支出額)と参加者数の推移をパネルで示し、なぜこんなに参加者と支出額を増やしてきたのかと問うた。

 これに対し、大塚幸寛内閣府大臣官房長は、「テロ対策の強化」などと答弁。さらに招待客が増えている理由としては、「各界において功績・功労のあった方々」を「各省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待」しており、「そうした結果」として招待者・参加者が増えていると答弁。

 この答弁を受けると、田村議員は支出内訳のパネルを提示。飲食物提供に一番経費がかかっていることを指摘したうえで、一人ひとりの招待者に送る案内状の支出も2.5倍に増えていることに注目を促した。

 そのうえで、内閣官房内閣府が発出した開催要領をパネルで提示。皇族や各国大使、議会関係や地方議会関係、行政関係、この辺りは2000人くらいでほぼ固定的だという内閣府の説明を紹介し、増えたのは最後の「その他各界の代表者等」だろうとの見方を示したうえで、「その『等』を含めて、これはどういう方々で、一体どうやって招待する人を決めるんですか」と問うた。

 すると、大塚官房長は「何か特定の分野ですとかカテゴリーを想定しているものではございません」と答弁するに至った。

 こうやって「建前」を答弁させたあとで、「しんぶん赤旗」日曜版が集めた証拠・証言をもとにした質疑に踏み込んでいった。

◆Part2:国会議員のブログから後援会関係者の大量招待を指摘

 Part2でまず紹介されたのは、議員がブログなどネットで公開している内容だ。これは、「しんぶん赤旗」日曜版の昨年10月13日のスクープで取り上げられたものであり、日曜版の若手記者らがネット検索で集めたものだった。

 稲田朋美議員の「日々の活動報告」(2014年4月12日)には、「地元福井の後援会の皆様も多数お越しくださり、大変思い出深い会になりました」との記載。世耕弘成議員の後援会ニュース(2016年新年号)には、桜を見る会にて、地元女性支援グループの皆さんと、との写真。松本純衆院議員の「国会奮戦記」(2013年4月20日)には、「役職ごとに案内状が割り当てられます」「選挙のウグイス嬢の皆様を始め後援会の皆様と参加いたしました」との記載。萩生田光一文部科学大臣の「はぎうだ光一の永田町見聞録」(2014年4月18日:当時は自民党総裁特別補佐)には「今年は平素ご面倒をかけている常任幹事会の皆様をご夫婦でお招きしました」との記載。

 これらを紹介したうえで、田村議員は萩生田大臣に、「『常任幹事会の皆様』とはどういう方で、どの府省が推薦したのか」と問うた。

 萩生田大臣は「桜を見る会については、各界において功績・功労のある方々を各省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待しているものと承知しており」と、用意された答弁書を棒読み。田村議員が「いやいやいやいや…」とのけぞる様子を見せ、蓮舫議員ら野党の理事たちが委員長席に詰め寄って速記が止まったあとにも、

「自分の知り合いの方をのべつ幕なし呼べるという仕組みになっておりません」

と、さも知り合いを呼べる仕組みはないかのような答弁を続けた。しかし、「常任幹事」とはどういう方かという質疑だとの野党側からの指摘を受けて、

「常任幹事の中に(笑)、そういう各種団体の長の方がいらっしゃって、その方たちがお招きをされたと承知をしております。まあ私が主催者じゃないのに何かお招きしたというのはちょっと僣越な言い回しだなと思います」

と答弁。「常任幹事の中に」と語るところでは、「何を難癖をつけているんだ」と言わんばかりの笑いを交えた。

 このように、あえて馬鹿にするような笑いを答弁に交えることは、安倍首相にも大臣たちにも、しばしばみられる光景だ。そして、常任幹事だから呼ばれたのではなく、たまたま各種団体の長を兼ねていたから招待されたものであるかのような答弁を行った。

 実際にはその後、野党の追及を受けて11月20日に菅官房長官が首相枠や与党議員枠の存在を認めることとなる。したがって萩生田大臣についても常任幹事の方を実際に「お招き」したものだったことが明らかになるのだが、そのような招待を否定するような答弁をこの時点で引き出しておいたことには意味がある。「こんなふうに言い逃れをするのだな」ということが、見ている私たちにわかるからだ。

 田村議員は常任幹事とは後援会の常任幹事であることを萩生田大臣に認めさせたうえで、

「総理、つまり、自民党の閣僚や議員の皆さんは、後援会、支援者の招待枠、これ自民党の中で割り振っているということじゃないんですか。これ、総理でなきゃ答えられない。総理、お答えください。総理でなきゃ答えられない、総理でなきゃ答えられないですよ」

と、官僚に答弁させるのではなく、安倍首相自身の答弁を迫った。安倍首相は、

「桜を見る会については、各界において功績・功労のあった方々を各省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待をしております。招待者については、内閣官房及び内閣府において最終的に取りまとめをしているものと承知をしております。私は、主催者としての挨拶や招待者の接遇は行うのでありますが、招待者の取りまとめ等には関与していないわけであります」

と、あたかも自分は招待者の人選には関与していないかのように答弁した。

 これもやはり、このように言質を取っておいたことには意味がある。その後の野党の追及により、11月20日の参議院本会議では安倍首相は

「私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」

と、推薦プロセスへの関与を認めることになるからだ。

「招待者等の取りまとめ等」には関与していないと答弁しておきながら、「推薦者について意見を言うことあった」と後で説明を変える。そして、最初の説明も虚偽答弁ではないと言い張る。国会で政府側がいかに不誠実な答弁を繰り返しているかが、こうやってわかりやすく可視化されていったのが、「桜を見る会」問題の特徴だと言える。

◆Part3:安倍事務所が「桜を見る会」の参加者を募集

 上記に見たように、自分は招待者の人選には関与していないかのような安倍首相の答弁を得たうえで、Part3では田村議員はいよいよ、安倍首相本人の問題に切り込んでいく。安倍事務所が後援会関係者に対し、「桜を見る会」への参加を募っていたこと明らかにしていくのだ。

 まず紹介したのは下関市選出の友田有・山口県議会議員のブログ。「後援会女性部の7名の会員の方と同行」し、「早朝7時30分にホテルを出発し貸切りバスで新宿御苑に向かい、到着するとすぐに安倍首相夫妻との写真撮影会」があったとの内容を紹介し、安倍首相自身も後援会関係者を多数招待しているのではと問うが、安倍首相は萩生田大臣と同様に、

「例えば地元において自治会等々で、あるいはPTA等で役員をされている方々もおられるわけでございますから、当然そういう方々とこれは後援会に入っている方々がこれは重複することも当然あるわけでございまして、そういう中で招待されているものと承知をしております」

と答弁。このように「言い訳」をさせた上で、より核心に踏み込んでいった。

 なお、この時点で、大塚官房長からは推薦者・招待者に関し、「一連の書類につきましては、保存期間一年未満の文書として終了後遅滞なく廃棄する取扱いとしている」との答弁を得ている。

 この段階に至って初めて田村議員が紹介したのが、安倍首相の地元・下関市の後援会関係者の方に「しんぶん赤旗」日曜版が現地取材を行って得た証言だ。2019年の参加者の証言として、

「2月頃、下関市の安倍事務所から、桜を見る会に行きませんかと案内が来た、名前や住所などの必要事項を紙に書いて安倍事務所に送り返すと、内閣府から桜を見る会の招待状が届いた、安倍政権になってから毎年参加している、下関からは毎年数百人が上京する」

と紹介された。

 安倍事務所が参加者を募り、内閣府から招待状が届くのであれば、安倍事務所が招待のプロセスに関与したことは否定しようがない。それに対し安倍首相は

「これは、先ほど赤旗の取材に私の後援者が答えたということは、私も寡聞にして存じ上げないんですが。

 そこで、今、もう既に申し上げておりますように、個別の方については、招待されたかを含め個人に関する情報であるため回答を差し控えさせているというのが従来からの政府の立場でございます」

と答弁する。

「赤旗の取材に私の後援者が答えたということは、私も寡聞にして存じ上げないんですが」というのは、「そんなことするわけがないだろう」という印象を与えて、証言の信憑性を疑わせる作戦だったのかもしれない。しかし、実際に「しんぶん赤旗」日曜版は、現地取材で複数の方からそのような証言を得ていた。なぜそのような証言を得ることができたのかは、第2回の記事で紹介したい。

◆Part4:税金を使った公的行事

 Part4は、ここまでのまとめだ。Part3の最後で、上述の安倍首相の答弁に対し田村議員は、

「これね、開催要領の逸脱が疑われているんですよ。各界を代表する、功労・功績があった方を、府省がとりまとめて招待するんですよ。これ以外ないんですよ」

と指摘していた。開催要領に従えば功績・功労がある人が招待されるのが「桜を見る会」であるのに、証言によれば、安倍事務所が後援会関係者の参加を募っていたことのおかしさを指摘したのだ。その上でここで田村議員は次のように指摘した。

「これね、今、後ろ(野党議員)からもありました。税金を使った公的行事なんですよ。(「そうだ!」)

 誰でも参加できるわけじゃないんですよ。(「そうだ!」)

 だから、招待範囲も人数も、開催要領を閣議に配って、それで府省からの推薦で、功労・功績が 認められる方を招待するんですよ。

 そしたらね、当然、それぞれの方にどのような功労・功績があるのか、これ、説明できなきゃおかしいですよ。 (「そうだ!」)

 それが、桜を見る会なんじゃないんですか、総理。総理、お答えくださいよ。そういうものでしょ。」

 しかし、田村議員が安倍首相に答弁を求めているにもかかわらず、大塚房長が手を挙げた模様で、金子原二郎予算委員長は「大塚官房長」と指名する。それに対し、田村智子議員は、「あなた(大塚官房長)、もういい、もういい、もういい。手、あげないで」と強くそれを制し、安倍首相に答弁を求めた。

 安倍首相は答弁に立ったが、

「先ほど来、答弁をさせていただいておりますようにですね、桜を見る会については、 昭和27年以来、内閣総理大臣が、各界において功績・功労があった方々をお招きをし、日頃の労苦をですね、日頃の労苦を慰労するため、開催をしているものでございます。

 で、先ほど来、申し上げておりますようにですね、個々の方々につきましてはですね、個人情報であるため、回答を控えさせていただいているということでございます」

と、あらかじめ用意した答弁書に目を落として棒読みするのみで、まったく説明責任を果たそうとしなかった。

 そしてこれ以降、安倍首相も大塚官房長も、招待者については「個人に関する情報」や「セキュリティ」を理由として具体的な説明を拒否し、「功績・功労」というそれまでの説明の言葉は口にしなくなった。

◆Part5:「安倍晋三後援会」主催による前夜祭とセット

 Part5になると、田村議員はさらに踏み込み、「桜を見る会」の前日に毎年行われている「安倍晋三後援会」主催の前夜祭と税金を使った公的行事である「桜を見る会」が、後援会旅行の中で「セット」であったことを示していく。

 ここで再び用いられるのは、「しんぶん赤旗」日曜版の若手記者らがネットから集めた情報だ。

 藤井律子・山口県周南市長(当時は県議)の2018年5月4日のブログには、「今日は山口県からたくさんの人が来てくださっているわね、10メートル歩いたら山口県の人に出会うわよ」という片山さつき議員の語りが紹介されている。さらに前述の友田県議のブログには、前日の早朝に飛行機で上京し、夜には、ANAのインターコンチネンタルホテルの大広間において、下関市、長門市、そして山口県内外からの招待客約400人による安倍首相夫婦を囲んだ盛大なパーティーが行なわれ、翌朝7時30分にホテルを出発し貸切りバスで新宿御苑にと続いていたことが紹介される。吉田真次・下関市議会議員の2019年のブログにも同様の記載がある。

 これらを紹介したうえで、田村議員は安倍首相に、

「桜を見る会は、安倍晋三後援会、桜を見る会前夜祭とセットで、総理が後援会や支援者、山口県の関係者の御苦労を慰労し親睦を深める、そういう行事になっているんじゃないですか」

と問うた。

 しかし安倍首相は「個々の個人名等々については、お答えは差し控えさせていただきたい」と答えるのみ。

 そこで田村議員はさらに、大手メディアが把握して公表している「首相動静」を紹介する。この3年間は「桜を見る会」の前日には、ホテルニューオータニの宴会場で安倍晋三後援会、桜を見る会前夜祭に出席とあること、それ以前も、ホテルや名称は異なるものの、必ず前日夜は後援会の方々と懇親会、宴会に安倍首相は夫婦で出席していることを指摘する。

 そして、防府市ライオンズクラブの会報への寄稿から、2019年の前夜祭の参加者は約850人で、翌朝に貸切りバス17台で新宿御苑に移動していることが紹介され、前夜祭と「桜を見る会」がセットで安倍総理の後援会の一大行事になっていることを指摘した。

 これに対し安倍首相は、前夜の懇親会に出席していることは事実と認めつつ、上京の費用は各自が負担し、「ホテルとの関係においても、それはホテルに直接払込みをしている」と答弁している。これは前夜祭の費用の記載が後援会事務所の報告書にないという政治資金規正法にかかわる問題となっていくのだが、その点はここでは省略する。

◆Part6:開門前に後援会関係者が会場に

 Part6は最後のパートだ。前夜祭と「桜を見る会」が後援会関係者を招待するセットのプログラムであることを田村議員はさらに証拠をもとに指摘していく。ポイントは、開門前に後援会関係者が新宿御苑にバスで入り、安倍首相と写真撮影していたという事実だ。明らかな「特別扱い」と言える。

 大手メディアが公表している「首相動静」によれば、2019年は、午前7時48分に安倍首相は夫妻で新宿御苑に到着し、7時49分に昭恵夫人とともに地元の後援会関係者らと写真撮影していること、毎年、午前8時前に地元後援会関係者らと写真撮影されていることを指摘した上で、田村議員は、「桜を見る会」の開門及び受付時間は午前8時30分だと指摘し、「まさに後援会活動そのものじゃないですか」と指摘する。

 ここはぜひ映像をご確認いただきたいが(前述した2019年12月24日の国会パブリックビューイング緊急街頭上映の映像では42分18秒より)、安倍首相は大塚官房長のほうを4度にわたり指差しして、答弁させようとする。蓮舫議員ら野党の理事たちが「それはダメ」と委員長席に駆け寄るが、先に大塚官房長が答弁してから安倍首相が答弁すると押し切る。

 しかし大塚官房長の答弁は、桜を見る会の開園時間が午前8時半から午前10時30分の間の随時入園参観だというもの。全く答えになっていない。そのうえで安倍首相が答弁に立つが、

「招待者の、そのそれぞれの受付時間の対応に関するこの情報につきましては、これはセキュリティに関することであるため回答を差し控えさせていただきたい」

と、「セキュリティ」を理由に答弁を拒否する。なぜ安倍首相が後援会の関係者と一緒に写真を撮っているのかと問われても

「これについては、どういう形で私が動くかということにも関わってまいりますので、セキュリティに関わることでございますので回答を控えさせていただきたい」

と、またしても「セキュリティ」を理由に答弁を拒否した。

 そのあとが見ものだ。田村議員はその「セキュリティ」という言い訳を、こう覆す。

「しんぶん赤旗の取材で、下関市の後援会の男性、到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席を回って入場のための受付票を回収する、その秘書が受付を済ませ参加者用のリボンを配る、まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった。何がテロ対策を強めたですか」

「開門前に手荷物検査もしないで大量に入ったら、それこそセキュリティ上の問題じゃないですか」

 なかなか痛快な展開だ。

 質問時間の終わりが迫る中で、田村議員はこう質疑を締めくくっている。

「桜を見る会は参加費無料なんですよ。会場内でも無料で樽酒その他のアルコール、オードブルやお菓子、お土産を振る舞うんですよ。これを政治家が自分のお金でやったら明らかに公職選挙法違反。そういうことをあなたは公的行事で税金を利用して行っているんですよ。これだけの重大問題だと……まさにモラルハザードは安倍総理が起こしていると、このことを指摘して、質問を終わります」

◆答弁を見越して質疑を構成

 いかがだろうか。冒頭に示したように、立憲民主党の枝野幸男代表が「党派を超えて、数年に一度の素晴らしい質疑だったと思います」と評したことも、納得いただけるだろう。

 安倍首相らは「功績・功労」「名簿は廃棄」「個人に関する情報」「セキュリティ」等の説明によって田村議員の追及をかわそうという作戦だったのだろうが、田村議員は、証拠・証言をつきつけることによって、安倍首相らが言い逃れに終始していることを浮き彫りにさせた。

 この田村智子議員の質疑は昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープ記事の情報をもとにしたものだったが、そこで得られていたすべての情報を最初から提示して質疑を行ったわけではない。最初は萩生田大臣が後援会関係者を「お招き」していたことを問い、次に安倍首相に、自民党の中で招待者を割り振っていたのではないかと問い、「招待者の取りまとめ等には関与していない」という言質を得た上で、安倍事務所が参加者を募集していたという証言をつきつけていった。次第に外堀を埋めていく、組み立ての巧みな質疑だった。

 この質疑の組み立ては、「しんぶん赤旗」日曜版の山本豊彦編集長によれば、田村議員が秘書や事務所スタッフらとよく議論をして準備したものだそうだ。安倍首相が出席する参議院の予算委員会であり、NHKのテレビ中継も入っていた。

 山本編集長は、1月6日の筆者との対談でこう語っている。

「やっぱり国会質問っていうのは、国民の前で、特に今回なんかテレビの中継をやっていましたから、きちんと今の安倍政権の実態を示すっていう非常に重要な国会議員の場なんで、特に国会質問っていうのは非常に準備して」

 そして、その準備段階では、証拠・証言を集めるだけではなく、相手の出方を見通していかに質疑を組み立てるということも重要だった。山本編集長はこう語る。

「国会質問をする際に、よーく準備をするっていうことはどういうことかというと、相手が必ず、まあ、こう言ったらこう反論してくるっていうのが、やっぱりこう、きちんとレクとか聞いてるとわかるんですよね。

 だから、それを覆す材料を持って、質問する。よく、質問自身を準備しないと、いい材料があっても、なかなかうまくいかない、その辺が非常に大事なのかと」

 「レク」とは、事前に官僚に関連質問を行い、説明を求めることだ。国会答弁と同様に、官僚が率直に質問に答えるわけではないのだが、国会でもこう答えるだろう、ということが、そのレクによって予想できるようになる。それをもとに、質疑の組み立てを準備したということだ。

 それによってこの質疑を聞く私たちは、だんだん真相が明かされていく面白さを味わうことができ、また、「功績・功労」や「個人に関する情報」「セキュリティ」といった説明が、いかに空疎で不誠実な説明であるかを聞きながら理解することができたわけだ。

◆「しんぶん赤旗」日曜版は、どのように問いを立てたのか

 以上、まずは昨年11月30日の参議院予算委員会における田村智子議員の30分にわたる質疑そのものの内容と組み立てを確認した。次回は、ではこの質疑で紹介された参加者のブログなどのネット情報や現地の関係者の証言はいかにして得られたのかを見ていきたい。

 その際に重要なのは、後援会関係者が「桜を見る会」に大挙して参加していたということに、そもそもなぜ山本編集長が問題意識をもてたか、という点だ。

 実は、「桜を見る会」の支出額と参加者数が膨張していたことは、昨年4月16日の東京新聞「こちら特報部」が取り上げており、その記事をもとに日本共産党の宮本徹議員が昨年5月13日と5月21日に国会で質疑を行っている。昨年の名簿が廃棄されたのは、宮本議員が質疑に向けて資料要求を行った5月9日当日のことだった。

 しかし、この昨年4月と5月の段階では、「桜を見る会」への安倍首相の後援会関係者の大量招待という問題は、論点として浮かび上がってきていなかった。これは、山本編集長が、疑問をもち、取材をしていく中で、つかんでいった論点だった。そのことを次回は紹介していきたい。

 また、1月6日の対談時には私は気づいていなかったことだが、安倍首相らは昨年11月8日の田村議員の質疑に臨む際に、当然、昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版がスクープを打ったことは知っていたはずだ。質疑の場になって初めて、ネットの証拠や現地の証言が紹介されたわけではない。

 にもかかわらず、質疑の最初の方では、「各界において功績・功労のあった方々を各省庁からの意見等を踏まえて幅広く招待しております」などと、安倍首相も萩生田文部科学大臣も大塚官房長も繰り返していた。それはなぜか。

 山本編集長によれば、昨年10月13日に「しんぶん赤旗」日曜版がスクープを打ち、大手紙に「ぜひ、一緒にやろうよ」と呼びかけたにもかかわらず、なかなか大手紙は載ってこず、どこも取り上げなかったという。

「今回はね、私たちはそれなりにこう、苦労して、それなりに渾身のスクープとして出したんですけれど、全く相手にされず、非常にがっくりきましてですね。

 だから官邸なんかも、あんまり各紙もやんないからと、あんまり危機感がなかったんですよね」

と山本編集長は対談で語った。

 このように大手紙が後追いしなかったことから、官邸は緊張感をもっていなかったというのが山本編集長の見立てだ。

 つまりここには、なぜ大手紙は「しんぶん赤旗」日曜版のスクープを見ても問題意識を持てなかったのか、という問題が存在する。この点については、第3回の記事でとりあげたい。

<文・上西充子>

【上西充子】

Twitter ID:@mu0283

うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)は好評発売中。最新刊『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)は現在全国書店などにて予約受付中

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