「桜を見る会」の実態を知らなかったからこそ立ち上がった問題意識ーーしんぶん赤旗日曜版・山本豊彦編集長との対談を振り返って(第2回)

HARBOR BUSINESS Online / 2020年1月18日 8時31分

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2019年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版

◆「知っていた」のに問題意識を持てなかった大手メディア

 国会パブリックビューイングは1月6日に、「しんぶん赤旗」日曜版・山本豊彦編集長にお話を伺った。田村智子議員の「桜」質疑を振り返った連載第1回を踏まえて、第2回の今回は、なぜ山本編集長が「桜を見る会」について本格的に調べてみようと思ったのか、その動機と問題意識を、お話から振り返る。

 興味深いのは、安倍首相が後援会関係者を大量に招待し記念撮影を行っていた実態を山本編集長は知らず、だからこそそれを知って驚いたこと、そして、これを安倍政権の本質のひとつである「私物化」の問題としてとらえたという点だ。

 ここには、実態を知っていた大手メディアが問題意識を持てなかったのに対し、実態を知らなかったからこそ山本編集長が問題意識を持ち、取材して世に問うべき問題があると考えた、というメディアの現状をめぐる論点も潜んでいる。

 既存の大手メディアをめぐる問題は次回の第3回に取り上げることとして、ここでは、山本編集長が昨年10月13日のスクープに向けて、どのような問題意識を持ち、どのように証拠・証言をそろえていったのか、対談で伺ったお話を紹介していきたい。

●「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング

●文字起こし:「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング 2020年1月6日

◆追及の発端は、2019年4月の東京新聞と5月の宮本徹議員質疑

 田村智子議員が昨年11月8日に「桜を見る会」についての30分の質疑を行った背景には、大きく見て次のような経緯がある。

◆「桜を見る会」追及の経緯(2019年)

・4月16日:東京新聞「こちら特報部」が経費と参加者の増加を報じる

・5月9日:宮本徹議員が内閣府に資料要求

         → 直後に内閣府は招待者名簿をシュレッダーで廃棄

・5月13日および21日:宮本徹議員が国会で質疑

・9月末:「桜を見る会」の概算要求が従来の3倍超に

・10月13日:しんぶん赤旗日曜版1面が安倍首相の後援会関係者の招待を報じる

・11月8日:田村智子議員が参議院予算委員会で安倍首相に質疑

※その後、11月11日に、野党合同の「桜を見る会」追及チーム発足。11月25日に「追及本部」に格上げ。

 昨年5月の宮本徹議員(日本共産党)の質疑は、同年4月16日の東京新聞「こちら特報部」の記事を見て問題意識を持ち、行われたものだった。その質疑に向けて内閣府に名簿の資料要求を行ったところ、その直後に名簿が廃棄され、これが今に至る名簿問題につながることとなる。

 宮本議員は昨年5月21日の衆議院財務金融委員会の質疑で、支出額と招待者数がどんどん増えており、「虎ノ門ニュース」の出演者全員が招待されるなど、極めて不透明な基準で招待者が決められていることを問題とした。

 それに対し、井野靖久内閣府大臣官房長は、今年の資料も既に廃棄していると答弁。各省庁への推薦者数の割り振りについても、具体的な説明を拒んでいた。

 この質疑から昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープ、そして昨年11月8日の参議院予算委員会における田村智子議員の質疑まで、どのような経緯があったのだろうか。

 当初、筆者は5月以降、「しんぶん赤旗」と日本共産党が、綿密に連絡を取り合いながら調査・取材を進めてきたのだろうかと思っていたのだが、昨年12月24日に新宿西口地下広場で行った国会パブリックビューイングの街頭上映に田村議員をゲストとして迎えお話を伺ったところ、

「赤旗が取材を長く、春ぐらいに問題になりましたから、それ以降赤旗は、いろんな形での取材を、ずっと調査をやっていまして、それが10月13日の(「しんぶん赤旗」日曜版の)新聞報道になって、私は実はそれを見てからこの実態がわかったものですから、質問をやるにあたっては、記者さんに私の(事務所の)部屋にも来てもらって、いろんな情報を教えてもらって、この質疑に挑みました」

という発言があった(下記の動画の49分21秒より)。

●字幕【田村智子議員ゲスト出演・緊急街頭上映】「#桜を見る会」ビフォー・アフター 国会パブリックビューイング 2019年12月24日(街頭上映用)

 そこで、「しんぶん赤旗」日曜版の山本豊彦編集長に取材経緯を伺おうと思って1月6日の対談企画を立てたのだが、山本編集長も実は5月の宮本議員の質疑ののちにただちに本格的な取材を開始したわけではなかったようだ。本格的に取材をしなければ、と思ったのは、9月末に概算要求が行なわれ、その内容を知って「おかしい」と思ったことがきっかけだったという。

 しかし、その「おかしい」は、5月の宮本議員の質疑を見ていて「おかしい」と思った問題意識を引き継いだものであった。詳しく見ていきたい。

◆5月の質疑で麻生大臣は問題視せず

 昨年5月21日の衆議院財務金融委員会の宮本徹議員の質疑では、麻生太郎財務大臣が答弁に立つ場面がある。1月6日の山本編集長との対談では、その質疑の内容を映像で確認した。下記の動画の16分30秒からを是非、ご覧いただきたい。

●「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング

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●井野靖久内閣府大臣官房長:各省庁からの(招待者の)数というものは、資料が残ってございません。

●宮本徹議員:各省庁からの資料は残っていない、それはあえて破棄をしたということなんでしょうかね。

 一体全体、予算計上額とも違うお金をどんどんどんどんふやし続けているわけですよ。開催要項では1万人と。だけれども、招待状はどんどんふえていて、その資料も残っていない。こんな説明、国民に対して通るはずがないと思いますよ。

 大臣、ちょっと、こんな説明はとても納得できないと思いますが、麻生大臣、いかがですか、予算の執行のあり方として。

●麻生太郎財務大臣:これは、財務省の話というより、執行されている役所はどこですか。内閣府ですか。(宮本議員が「内閣府です」と答える)では、内閣府に聞かれた方がいいんじゃないですか。

●宮本議員:いや、予算をつけているのは。財務省がつけた予算以上のものを内閣府が出しているわけですよ。財務省の査定がなめられているという話じゃないですか。財務省が認めた予算と全然違う使われ方をしている。これは内閣府に聞いてくれという話じゃないと私は思いますよ。  

 大臣もそこはアンタッチャブルにしなきゃいけないのかな、そういう話なのかというふうに私も思ってしまいますけれども、私、今年のリストは少なくともあるはずだと思いますよ。どの省庁から推薦が何人あったのかというのは残っているはずだと思いますよ。それも、もう破棄しちゃったんですか。

●井野大臣官房長:「桜を見る会」に関しますこうした資料につきましては、1年未満の文書というふうに整理させていただいておりまして、今年の資料につきましても、もう既に開催が終わりましたので破棄させていただいております。

●宮本議員:とんでもない話ですよ。これはちょっと、私、きょうは会計検査院を呼んでいないですけれども、会計検査院にもお願いしなきゃいけないような話じゃないですか。予算と全く違う支出を行って、その書類は、メディアに取り上げられたからかどうか知らないですけれども、恐らく、過去にさかのぼって全部破棄したことにしよう、そういうふうにしているとしか私はとても思えないですよ。

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 振り返ってみれば、ここで宮本徹議員は、今日に至る問題を指摘している。ただし、追及する宮本議員の側に、名簿は廃棄したとする政府側の答弁に対抗するだけの有力な証拠や証言がなかった。ここが、昨年11月8日の田村議員の質疑と異なる点だ。

 それはともかくとして、山本編集長はこの質疑を当時、見ていたという。そして、こんな疑問を持ったという。

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●山本:この質疑をわたしも見てて、やっぱり非常におかしいなと思っていて、財務省っていうのは予算は非常に厳しいんですよね。でそれが、この間、予算の3番の支出をして、それを宮本議員に指摘されて、本来ならば財務省がそれはおかしいって言うべきなのを、「いや、それは内閣府に聞いてくれ」と。で、「アンタッチャブルなんですか」っていう。で、そこで何も言わないと。で、やっぱりそこは、アンタッチャブルだったんですよね。

 だから、やっぱりそういうのを見て、「何かこれはあるな」と言って、まあ取材を始めようかなという気になったんですね。

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 この宮本議員と麻生大臣のやりとりの際、映像で確認すると、麻生大臣のとなりに座っている上野賢一郎財務副大臣(自民党)が、麻生大臣が答弁を終えて席に戻るときに、宮本議員の質疑に対してあざ笑うような笑い方をしているのが確認できる。麻生大臣が「内閣府に聞かれた方がいいんじゃないですか」と答えたのと呼応して、「まったく、お門違いな質問をする人ですねえ」という感じの笑い方だ。

 この連載の第1回の記事でも、萩生田文部科学大臣が田村智子議員から、常任幹事会の方を「お招き」していた件について問われたときに、

「常任幹事の中に(笑)、そういう各種団体の長の方がいらっしゃって、その方たちがお招きをされたと承知をしております。まあ私が主催者じゃないのに何かお招きしたというのはちょっと僣越な言い回しだなと思います」

と、「何を難癖をつけているんだ」と言わんばかりの笑いを交えたことを紹介したが、それと同種の笑い方だ。

 そういう笑い方をして野党議員の追及を全く見当違いな追及であるかのように見せる、そして、麻生大臣が財務大臣であるにもかかわらず、予算の3倍の支出を問われてもまともに答弁しない、そういった様子をみていて、山本編集長は「非常におかしいな」「何かこれはあるな」と思ったのだろう。

 実際の国会質疑のやり取りを見ているからこそ、感じられた違和感。それを大事にしたことが、このコメントからうかがわれる。

◆概算要求で「桜」予算が従来の3倍超に

 とはいえ、本格的な取材・調査に山本編集長らが乗り出したのは、昨年9月末以降のようだ。もう一つ、「おかしいな」と感じる出来事があったからだ。それは、「桜を見る会」の支出実態に合わせた2020年度の概算要求だ。

 昨年11月8日の参議院予算委員会で田村智子議員が質疑のパネルで示したように、「桜を見る会」は、予算が毎年一定であるにもかかわらず、それを大幅に超えた支出額があり、それが年々増え続け、2019年には予算の3倍を超えていた。その支出額の増加を先に見たように5月21日の宮本徹議員は指摘したのだが、その指摘に対して開き直るかのように、概算要求では、2019年の支出額を上回り、従来の予算額の3倍を超える5728万8000円が要求されたのだ。

 この概算要求の額を見て、山本編集長はさらに「ますます、これはおかしい」と思ったという。山本編集長の語りはこうだ。

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●上西:この5月の段階で、虎ノ門ニュースの方々とかっていうので、選考基準が不明だというところから、(今度は)後援会に注目をしたっていうのは、すごくいい着眼点だったと思うんですけれども、なぜ国会議員が招いているとか、後援会関係者の方のブログに注目されたんですか。

●山本:宮本議員の質問の時に、要するに参加者だとか予算の3倍に経費が増えてという問題が出たんですけどその答えが「結果的に増えた」というだけで、中身がわかんないんですよね。

●上西:「お答えを差し控える」と。

●山本:それで、財務大臣もそれについて苦笑いするんだけで何も言わないと。で、「これおかしいぞ」と思ってたら、9月末に、今年ですよね、2020年度の概算要求が出たんですけど、それが、(2019年は)予算の3倍使ったって言われたんで、概算要求で予算を3倍にあげたんですよね。

●上西:実態に合わせた。

●山本:実態に合わせた。で、「ますますこれはおかしいな」ということで、この問題をちょっと本格的に調べようと。

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◆自民党議員の語りに驚く

 本格的に調べようと思ったときに、山本編集長は、自民党の関係者に取材を行った。そこで聞いた話に、山本編集長は驚く。

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●山本:それ(取材)はだいたい、10月のこれ(10月13日のスクープ)が、だいたい(概算要求のあった)9月末の(頃から)、2週間ぐらいやってきたんですけれど。

 実は、ある自民党の議員のところに取材に行きましたら、「たしかに自分とこもね、行ってるよ」と。ただ、「自分のところなんか、まあ何人かだ」と。「安倍さんなんかは、前夜祭までやってんだよ。知ってんだろ?」って言われて、こっちは全然知らないわけですよ。

「えっ、そんなことやってんですか」と。「いやいや、すごいよ」と。「何百人って呼んでやってんだよ」と言うんで、「えっ、そうなんですか」っていうんで、「あ、そうか」と。「安倍さんは、そんなに呼んでるのか」っていうのに気づいて。

 それで、「いや、そんなことは誰でも知ってるよ」って言うんです。確かに……。

●上西:大手紙の記者なんかはね、当然、知っているわけですよね。

●山本:そうです。知ってるし、なんでかっていうと、「首相動静」っていうのがあるじゃないですか。毎日、安倍首相がどうしましたかと。そうすると今年についても、安倍晋三後援会主催の「桜を見る会」前夜祭がありましたよ、と。で、首相が出ましたよ、とか、あるいは「桜を見る会」の当日に首相が行って……。

●上西:後援会の方々とね。

●山本:ええ。写真を撮って。そういうのは、きちんと載ってるわけですよ。

 で、私たちは残念ながら招待されてないんで、知らなかったんですが、「あ、こんなこと、やってんだ」と。で、過去のものを見たら、全部、載ってるんですよ。

 それで、「あ、どうも、自民党枠もあるんだけど、安倍首相がそもそもなんだ、と。自分が私物化してんじゃないか」ということで、安倍首相の私物化として、これは取材をやろうというふうに決めて、取材をやり始めたんですね。

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 この山本編集長の語りが非常に興味深い。山本編集長は、「桜を見る会」に安倍首相の後援会関係者が多数参加しているということを知らなかった。前夜祭がセットで行われているということも知らなかった。だからこそ、「えっ、そんなことやってんですか」という驚きがあった。それに対し、取材を受けた自民党議員は、「そんなことは誰でも知ってるよ」と答えていた。

 確かにそうなのだ。「桜を見る会」の様子はテレビでも新聞でも、映像や写真つきで紹介されてきたし、首相官邸ホームページでも安倍首相の挨拶の場面も含めて映像が公開されている。大手メディアが把握して公表している「首相動静」にも、前夜祭への参加のことも、「桜を見る会」で安倍首相夫妻が後援会関係者と写真撮影していることも載っている。

 大手メディアは実態を知っていた。しかし、問題視せずに来た。

 山本編集長は違った。知らなかったがゆえに、驚きをもって受け止めた。そして、これは安倍政権による「私物化」の問題だととらえ、報じるべき問題だととらえた。

 そこから、「しんぶん赤旗」日曜版の若手記者も含めた取材・調査チームが立ち上がっていった。

◆若手記者がネットで証言の掘り起こし

 山本編集長の語りを引き続き紹介しよう。

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●山本:なんで結果としてこんなに(支出額と招待者が)増えたのかって言って、いろいろ自民党の関係者とかに聞いたら、どうも自民党議員の枠があるというのがわかってきまして、それでその中で、「あ、本当に枠があるのか」と。まぁ、何人か取材したら、どうも枠があると。

 それで、私なんかは古典的な記者なんで、自民党関係者に聞いてるんですけれど、チームも結構、若い記者で、インターネットなんかに強い記者がいて、「どうも自民党、枠があるようだよ」と言ったら、ただちにブログとかフェイスブックとかを調べはじめるんです。

 そうすると、皆さんが、「行ったよ」とか、萩生田さんみたいに「僭越ながら」と言いながら「お招きした」とか。

 要するにみんな、どうもこれは、悪いことじゃないと思っているのか、結構、正直に書いているんです。それが、若い記者なんかが調べたので、どんどん集まってきて、「あ、これはどうも自民党が、組織的に枠を作ってやってるんだ」ということがわかったんですよね。

 だから、そこから見えてきたのは、どうも自民党が、税金でやっている公的行事のはずの「桜を見る会」を、どうも後援会員を行かせるという、私物化をしているという実態が見えてきました。

 で、こういう私物化ってのは、森友とか加計と同じような構図なんですけど、違うのは、要するに森友とか加計っていうのはやっぱり、秘密を知ってる人っていうのはごく少数なんですよ。でも「桜を見る会」は、結構みんな行ってるから、それでみんな、ブログとかに書いている。だから、関係者が多数いるっていうのが、圧倒的に森友・加計と違う点なのかなというふうに思ってます。

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 自民党の議員が後援会関係者を招待することを、議員も後援会関係者も悪いことと思っていないため、ネットの情報は掘り起こすとたくさん集まった。「私物化」というキーワードで取材を進める方針を決めた山本編集長と、ネットの検索に長けた若手記者が、うまくチームワークで取材を進めていった様子がうかがえる。

 山本編集長も、ネット検索という手法の必要性をこう語っている。

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●上西:ネットをちゃんと発掘できる若い人たちがいたっていうのも強みですよね。

●山本:そうですね。そこはもう、ちょっと私なんか、なかなか難しいんですけど、やっぱりそういう、なんていうのかな、ある意味じゃ、いろんなこういう取材の手法っていうのを、今はやっぱり、使わなくちゃいけないなぁと思って。

 そういうブログだとかフェイスブックで、そういうのを発見して、しかも、また後で出てくるかもしれないですけど、安倍昭恵さんの枠みたいなのもあったんです。これなんかも、フェイスブックをたどってやるとか、本当にそれはもう、ちょっと私は、なかなか説明はできないんですけど、そういう手法で積み重ねをやっていってますね。

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◆現地で後援会関係者に取材

 ネット情報を集めたうえで、山本編集長らのチームは、安倍首相の地元の山口県に現地調査に出向くことにした。

 のちに山本編集長らは、安倍事務所による「『桜を見る会』のご案内」という文書を入手することになるのだが、昨年10月13日の日曜版スクープの段階、そして昨年11月8日の田村議員の質疑の段階では、この文書は入手できておらず、集めた証言をもとに記事を書き、質疑に臨んだという。

 昨年11月8日の田村智子議員の質疑において、「安倍事務所に申し込んだら内閣府から招待状が来たという証言を、複数の方から得ている」との指摘に対し、安倍首相は、「赤旗の取材に、私の後援者が答えたということは、私も寡聞にして存じ上げないのですが」と笑いながら答弁していた。

 では、後援会の方々の証言を「しんぶん赤旗」の記者が得ることに、困難はなかったのだろうか。その点を尋ねたのが以下だ。

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●上西:実際、聞いて取材したわけですよね。

●山本:そうですね。

●上西:それは、向こうは、警戒心を持ったりとかしないんでしょうか。

●山本:まあ、安倍後援会の方も自民党のほかの先生と同じように、ブログなんか行ったっていうことを書いていて、まあ基本的には「ああ、なるほど」という確証ができたんですけど、やっぱり同時に、まあ、一国の総理を、疑惑を追及するには、証言も取らないとダメなんで、だいたい複数、延べ4、5人の記者で2週間くらい、地元に入りまして、なかなか、総理の地元なんで、赤旗の記者が行って、すぐに「そうですよ」というふうに答えるわけでもなく、なかなか最初は大変でした。

 ただ、地元山口にも共産党の市議さんだとか県議さんとかいう方もおられまして、やっぱりそういう方っていうのは、安倍さんの後援会なんかにも、いろんな繋がりなんかもあったんですよね。

●上西:地域のなかでの、ね。

●山本:そうですね。そういう方の力もありまして、重い口がなかなかいままで、我々だけじゃ難しかったのが、しゃべる方も出てくるようになって、同時に、記事にも書いたんですけど、皆さん、後援会行事だって思っている人も、いっぱいいたんです。

●上西:お金も払っているしね。旅行代金を払っているので。

●山本:でまあ、最初の関門がちょっと取れると、「いやいや、行ったわよ」「毎年、私、行ってるわよ」「ちゃんとお金も払ってるし、後援会の行事で楽しいわよ」というふうに、結構、話してくれるような方も出てきまして。

 そういう意味でいうと、前も言いましたけれど、関係者が圧倒的に、安倍さんとこで言うと、800人近くが、毎年行っているわけだから、行ったことある人は、山ほどいるんですね。

 あとやっぱり、それぞれが、悪いと思ってないんで、結構、しゃべってくれるという中で、いろんな証言が取れて、それが田村さんの質疑に結び付いた。

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 ここも興味深い。やはり、総理の地元の後援会関係者が、赤旗の取材にすんなり答えてくれるわけではなかったようだ。しかし、山口県の日本共産党の市議や県議に、安倍首相の後援会の方とのつながりがあり、それらの方の力があって証言が取れたという。

◆国会議員の質疑を支える人たち

 日本共産党は、国会議員の数はさほど多くないが、各地に地方議員がおり、彼らを支える党員がいる。そういう地方議員の厚みが、「しんぶん赤旗」の取材時に活かされたということだろう。また、購読料で支えられている機関紙「しんぶん赤旗」だからこそ、時間をかけて一つの問題を集中的に調査・取材することができ、地方議員の協力も得られた、とも見ることができる。

 1月6日の山本編集長との対談の中では、国会議員の質疑はその議員本人の準備の力だけによるものではなく、様々な人の力によって支えられていることを、次のような一覧表を作って示してみた。

◆<国会議員の質疑を支える情報収集>

(1)議員による官僚への資料請求やレク(説明)要求

(2)野党合同ヒアリング

(3)国会図書館調査員

(4)委員会調査室調査員

(5)議員による現地調査などの独自調査

(6)秘書

(7)地方議員

(8)関係者、労働団体、専門家

(9)しんぶん赤旗

(10)その他

 このうち、(7)の地方議員が、今回の証言を集めるにあたって、「しんぶん赤旗」の記者と安倍首相の後援会関係者をつなぐ重要な役割を果たしたと言える。

 また、(9)にあげた「しんぶん赤旗」のように、党として独自の報道機関を持ち、調査や取材ができる記者を多数抱えていることは、日本共産党の議員の活動を大きく支えていると言えるだろう。

 なお、(10)のその他としては、内部告発も結構ある、とのことだった。

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●山本:後は、内部告発なんかも、共産党の議員には寄せられるケースも結構ありまして、これまでもいろんな防衛省がらみのことなんかも、結構やってますね。

 やっぱり、一つはまあ、そういうことを委ねて安心……。

●上西:自分の身を守りつつ……。

●山本:そうですね。守りつつ、きちんとやってくれると。で、しかも、きちんとそれを握りつぶさないと。しかもちゃんと角度がわかって、鋭くやってくれるという、多分、信頼だと思うんですけど、やっぱりそれは、赤旗なんかも、内部告発っていうのは寄せられます。

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 内部告発者を守る、情報を握りつぶさない、その情報の重要度がわかったうえで、鋭く切り込んでくれる、そういう信頼があってこそ、内部告発が寄せられるということだろう。

◆証言を積み重ねる

 話を戻そう。山本編集長らが現地で証言を集めていくと、前夜祭や東京観光と「桜を見る会」が一体となって参加募集されており、貸し切りバスを連ねてホテルから会場の新宿御苑へと出向いていたこと、後援会旅行の目玉が「桜を見る会」であったことが見えてきた。

 それは山本編集長にとって、「すごいことになってきたぞ」という、その後の展開を予感させるようなものであったようだ。

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●山本:証言の中で、安倍事務所から参加の問い合わせがあって、それで、安倍事務所に申し込むことによって、後から内閣が送られてくるというのを、最初、聞いた時はですね、「えっ、そんなことがあるのか」と。

 一応、内閣府主催の行事じゃないですか。その参加申し込みの窓口が安倍事務所になっているっていうのは、にわかにちょっと信じられなくて、「いやいや、もうちょとそれは、取材して、一人だけじゃダメだ」と言って、何人も取材をしていって、それが、異口同音に皆さん、そう言うんですね。で、それは絶対にペーパーが残っているはずだからと、それも探したんですけれど、残念ながら、皆さん、ファックスとかで事務所に送るんですよね。だから「自分の手元にはない」というふうに言われていて、それで、ペーパーまでは手に入らなかったんだけれど、どうも間違いなく窓口は安倍事務所になっている。

 ということで、「あ、これはちょっと、すごいことになってきたぞ」ということがわかってきて。

 しかもそれが、後援会旅行っていうことで、例えば、行くのは宇部の空港から、飛行機でみんなで行って、降りると貸し切りバスで、それで都内のいろんなツアーをやって、で、その 夜は前夜祭と。次の日は、ホテル前からバスで10何台で行く、という全体の構造がわかってきたんで、「なんだ」と、これは。後援会旅行の目玉が、「桜を見る会」だという。

●上西:そうですね。田村議員も言ってましたね。

●山本:そのへんがわかってきました。まあ、非常に驚きましたよね、実際は。

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◆「私物化」という本質を見抜く

 さきに、「安倍首相の私物化」として、「桜を見る会」の取材をやろうと決めた、という山本編集長の語りを紹介した。「桜を見る会」の支出と参加者の膨張を「私物化」という観点でとらえたこと、そしてそれが、森友・加計問題とも共通する安倍政権の本質であると見極めたこと、そこに山本編集長の着眼点の確かさがある。

 それは、漫然と「桜を見る会」を取材しているだけでは、見えてこないことだ。また、大手紙の政治部の記者らにとっては、それは驚きをもって受け止めることができず、自明視されていることであったかもしれない。山本編集長は語る。

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●上西:大手メディアはなんで、「桜を見る会」を取材をしていたのに、こう本質的な問いを立てられなかったのかと。「こんなことやってていいんですか」っていう問いは立ってなかったんでしょうか。

●山本:前、田中角栄元首相の金脈問題が出たときに、この問題も結構、私たちの先輩の赤旗記者とか、あと週刊誌なんかが発掘して問題になったんですけど、その時に、特に政治部の記者なんですけど、大手紙の、「まあ、こんなことはもう知ってるよ」と。「角栄さんが、カネに汚いことは」って言ったんですけど、やっぱりそういう感覚っていうのは、まだ残ってるのかなと。

 たぶん、安倍さんなんかについても、「安倍さんがそれって私物化しているのはまぁ知っているよ」と、まあそりゃ、皆さん前夜祭だとか、あるいは「桜を見る会」自身も行っているので、ただやっぱりそこで、その私物化っていうのが、安倍政権の手法のひとつの本質、森友・加計、これだけじゃなくて、例えば憲法なんかを見ても、歴代自民党政権でさえ集団的自衛権は行使できないと言っていたのを、閣議決定だけで、それができるようにすると。

 まぁ、これはある意味で言うと、憲法の私物化ですから、やっぱり私物化っていうのが、安倍政権のひとつの本質だっていうのところを、きちんと見抜くかどうかってのは、非常に大きいんじゃないかというふうに思います。

●上西:そう。だから、政治部の記者は「もう、そんなの知ってるよ」かもしれないけれども、国民は知ってて納得して支持しているわけではないんですよね。安倍政権を、ね。

 だから、そこを改めて掘り起こしてみて、「それでも支持するのか」っていうふうになると、そこは変わってくると思うんですよね。

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◆大手メディアは何をしていたか

 ここでぜひ、大手紙の政治部の記者たちに問いたい。あなたたちには、このような「桜を見る会」の実態は「もう、知ってるよ」という話であったのか。そしてそれは、国民に改めて知らせる必要がない実態だと思っていたのか。だとしたら、それはなぜか。

昨年10月13日に「しんぶん赤旗」日曜版がスクープを打ったあとで、山本編集長は大手紙に「ぜひ、一緒にやろうよ」と呼びかけたが、反応は鈍かったという。

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●山本:実はそれはですね、ウチの新聞が出てすぐは、あんまり官邸だとかいうのは、危機感を持ってなかったんですね。

●上西:10月13日の段階では。

●山本:そうです。なんでかってというと、そのあと、いろんな人に、「ぜひ一緒にやろうよ」って私も言ったんですけれど、なかなか大手紙も乗ってこなくて、どこも取り上げない。

●上西:ほかの新聞が。だから、そのへんが不思議というか、ある社が取り上げたものを、他の社が後追いをするのってなんか、やっちゃいけないっていうか。やるもんじゃないっていうような雰囲気がありますよね。

●山本:まあでも、そんなこともなくて、今は結構、非常に大事な問題だったら、私たちもやるし、他の新聞もやるんですけれども、今回はね、私たちはそれなりにこう、苦労して、それなりに渾身のスクープとして出したんですけれど、全く相手にされず、非常にがっくりきましてですね。

 だから官邸なんかも、あんまり各紙もやんないからと、あんまり危機感がなかったんですよね。

**********

 なぜ大手紙は後追いしなかったのか。それは、なぜ大手紙は毎年の「桜を見る会」を取材していながら、その実態を山本編集長のように驚きをもって受け止めることができなかったか、ということと通底する問題だろう。

 山本編集長によれば、昨年10月13日の「しんぶん赤旗日曜版」のスクープだけでなく、昨年11月8日の田村智子議員の国会質疑に対しても、大手紙の反応は当初、鈍かったという。

 次回の第3回では、その大手紙の反応に注目していきたい。また大手紙が反応していく上では、実はツイッター上での市民の反応が重要であったという点にも、触れていきたい。

<文/上西充子>

【上西充子】

Twitter ID:@mu0283

うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)は好評発売中。最新刊『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)は現在全国書店などにて予約受付中

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