すでに始まったコロナ失業! 今後、リストラ、採用取り消し、派遣切り増加に注意。政府は対策を

HARBOR BUSINESS Online / 2020年4月3日 8時33分

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写真/時事通信社

 新型コロナウイルス危機で、世の中は自粛ムード。サービス業を中心に企業の業績が悪化し、リストラや内定取り消しなどの相談も数多く寄せられている。日本はいつ、この泥沼から抜け出せるのだろうか!?

◆コロナショックが直撃。非正規労働者に被害が集中

 猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で高まったのは、自粛ムードだけではない。明日の暮らしをも脅かす“コロナ失業”の波がジワジワと押し寄せてきているのだ。

「コロナウイルスのおかげでワタクシ無職になりました」

「俺みたいなヤツめっちゃ増えるぞ。日本大丈夫か?」

 出社と同時に正社員として勤めていたレコード店から解雇を通達されたティーイコールツーさん(32歳)は、やるせない思いをラップに乗せてYouTubeで配信した。

「ウチの店は、レコード市での売り上げが収益の大きな割合を占めていました。それがコロナの影響でほとんど開催できなくなり、経営困難に。2月ごろから嫌な予感はしていましたが、まさか自分がこんな状況になるとは……」

 通告を受けたときはかなりショックを受けたというティーイコールツーさんだが「落ち込んでばかりもいられない」と、解雇記念として曲を作ったという。

「解雇されたのを良い機会と捉えて、これからは音楽に没頭しようと思います」

 また、転職活動の場においても、中途採用の選考を中止せざるを得ない企業が増加しているという。2月初旬から転職活動をしていたという大倉正人さん(仮名・26歳)は、友人の紹介でエントリーした大手外資系SNSサービス企業に2度の選考取り消しを受けた。

「書類提出後に企業からの連絡が途絶えたため、人事に何度もかけ合いました。しかし、3週間後に不採用の通知。友人に別の部署を紹介してもらって後日再エントリーしたのですが、こちらも連絡がスローダウンし、結局採用取り消しになりました」

 大倉さんは現在、採用活動の復活を願いながら、別の企業へのエントリーを準備中だという。

◆派遣社員の全員が事前通告なく突然クビに

 そして、最も事態の深刻さが表れているのが、パート・アルバイト・派遣・契約社員といった非正規労働者の解雇だ。

 大手レジャー施設で3月末までの契約で働いていた派遣社員の堺和子さん(仮名・20代)は、コロナの影響で休園中も週5日のシフトで就業していたが、営業再開当日に突然解雇を宣告された。

「2月29日から3月15日までの休園中は、施設の清掃や園の草むしりをしていました。3月16日に営業再開が決まってシフトも組まれていたのに、16日付で解雇を言い渡されました。私だけではなく、派遣は事前通告なく全員クビです」

 しかもその事実を、施設の社員や部署リーダーは知らなかった。

「休業補償が出るのかさえもあいまいで、寮も3月中には出ていけと。こんな不安な時期に突然放り出すこの施設の対応には、腹立たしい気持ちでいっぱいです」

 同施設に派遣社員一斉解雇の実情を聞くと、「閉鎖空間での感染拡大を防ぐため、屋内施設の派遣スタッフを解雇した」という。

 しかし、堺さんとともに同施設から解雇された派遣社員の町田悠さん(仮名・20代)は、この主張に対し、驚きの声を漏した。

「屋内・屋外に関係なく、50人ほどいた派遣は、全員解雇されたんです。解雇は派遣会社を通じて伝えられ、施設側からはまったく説明がありませんでした」

 4月下旬までの契約だった町田さんに対しても、金銭的補償については通達がない状態だという。

「施設が一時休園したのも、政府の自粛要請によるもの。政府には失業対策をきちんとやってほしい」

 このような非正規労働者の解雇について、全労連の非正規センター事務局長・仲野智氏はこう語る。

「もともと3月は、派遣切りや雇い止めの相談が増える時期なのですが、現在寄せられている相談のほとんどは非正規労働者からのコロナによる解雇・金銭補償問題。このまま事態が終息しなければ、リーマンショック時のタイムラグから考えても、非正規労働者の解雇はますます深刻化し、GWあたりにピークを迎えるでしょう。5~6月の株主総会に備えてリストラを断行する企業も出てきますし、正規労働者も安泰とは言えなくなるでしょう」

 国は、労働者の休業補償として一日8330円を補助するという。しかし、その条件として企業側は労働者の日給を全額支給しなくてはならず、差額は企業の持ち出しとなる。このためきちんと申請しない企業も多く、制度を知らない労働者は泣き寝入りするしかない。また、いったん失われた雇用がコロナ終息後に回復するのかどうかについては「現状では見通しがつかない」(仲野氏)という。

「バブル崩壊後やリーマンショック後も雇用は回復せず、雇用環境改悪の動きが強まりました。コロナの流行が一段落してもすぐには解決せず、コロナを口実とした雇用条件の改悪が進む恐れもあります」

◆コロナ不況下で積極的に雇用する企業も

 一方、「コロナショックは“サービス業ショック”」との見解を示すのは、千葉商科大学専任講師の常見陽平氏。

「平成の30年間で、日本はサービス業の国になりました。GDPも就業者数も、その約7割がサービス業で占められています。特に宿泊業・飲食サービス業では7割強がアルバイト・パートなどの非正規労働者。まさに、コロナショックで大きな打撃を受けている業界です。日本のサービス業は非正規労働者に過度に依存しており、いま被害を受けているのは非正規労働者ということになります。コロナショックが終息の気配を見せないままであれば、特にこの業界で働く非正規労働者を中心にダメージを受けることでしょう」

 しかしながら常見氏は「明るい兆しも見えてきている」と述べた。

「これを採用のチャンスと捉える企業もあります。コロナによる失業者・内定取り消し者を積極的に採用する企業も出てきています。今後産業構造の転換があり、サービス業に代わる分野が伸びる可能性もあります」

 今こそ企業は、戦略や業務方針を見直すべきではないだろうか。

◆コロナ騒動の混乱は、大学生の就活戦線にも飛び火

 ’21年度の就活戦線は、「就活ルールの変更」や「東京五輪」により、そもそもの混乱が予想されていた。「売り手市場」であるはずの就活生の戸惑いに、さらに拍車をかけるコロナ騒動。いったいどんな影響を及ぼしているのか。

「2月末ごろに書類審査合格の通知が来たのですが、企業自体が3月13日までリモート業務となり、会社見学の詳細はそれ以降に決定するという話でした」

 大学の紹介枠でIT企業一本に絞って就活を続けてきていた寺中詩織さん(大学3年生)は、内定が「保留」扱いとなった。

「事態の収束がつかないため、リモート業務も延長に。『経済の先行きも見えず、4月からの雇用は約束できない』と告げられました」

 ショックを受けた寺中さんだったが、事情が事情だけに声高に不満をぶつけることもできなかった。

「4月ごろから就活を再開する予定ですが、事態が落ち着くまでは応募を控えます」

 また就活生たちは、コロナ騒動に伴うWeb面接や企業説明会などの企業側の取り組みに対して少なからず混乱しているようだ。

「実際に企業を訪れないと社風がわからない」「就活の実感が湧かない」といった声が多く上がる一方、「Webだとカンペが置ける」「交通費がかからない」「エントリーシートに時間がかけられる」と、リモート活動ならではのメリットを実感する声も散見された。

 いまだに終息の気配を見せないコロナショック。ふたたび「就職氷河期」が訪れないことを祈るばかりだ。

【全労連・非正規センター事務局長 仲野 智氏】

3月中に数回電話相談を行ったところ、ほとんどがコロナに関する相談だったという。「日に日に相談内容が深刻になっている」と語る

【働き方評論家 常見陽平氏】

千葉商科大学専任講師。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中

<取材・文・撮影/櫻井 れき 志葉 玲 筒井 あやこ>

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