ヒップホップは反逆のカルチャー。手をあげ、拍手をするのはNG?<ダメリーマン成り上がり道 #32>

HARBOR BUSINESS Online / 2020年6月13日 15時32分

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RAWAXXX(左)とMC正社員(右)<撮影/荒熊流星>

 前回、業界の怖い人々について語りながらも、人を信用することの大切さを語ってくれたラッパー・RAWAXXX。そんな彼だが、現在のヒップホップシーンには、一言物申したいようで……。熱のこもるRAWAXXXにブレーキをかけるのは、当連載でおなじみのMC正社員だ。

◆手をあげたり拍手をしないでほしい

——ヒップホップでは「自分を伝える」というのが重要な要素ですが、日常から自分を伝えるときに意識されていることはありますか?

RAW:「こういう対談とか取材は別ですけど、初対面の人の前ではあまり喋らないです。こいつ何でも喋るなって思われたくないというか。『こいつ、よう喋るな』っていう嫌な人いるじゃないですか? あまり喋らないっていうか、場に合わせて空気になって、フライングしないようにしてるっす」

——尖っているイメージとはだいぶかけ離れていますね。

RAW:「ただ、ラップはステージでの見せ方だと思うんで。『俺はこういうラップをするよ』っていうのは、どこでも言いますよ。(機械的に手を動かしながら)ライブ中に手をあげたりするお客さんとかいるじゃないですか。ヒップホップのゲームってそういうのじゃないところが大きい。例えば拍手はないし、かわりに声があって指笛があって……そういう文化なので。日本人のラッパーのやり方っていうのはコンサートとかと一緒で、それは“カルチャー”じゃない」

正社員:「難しいな」

RAW:「カルチャーじゃないことをやりたいなら、違うジャンルを作らないと。そのカルチャーに違うものを混ぜていったら、それはもうカルチャーじゃないんで。それはロックとかでもそうだし、レゲエとかでもそう。だから、コンサートのノリで手をあげたときには、『手下げろ』とか、『声出すな』とかいちいち言わないといけない。そういうところはハッキリ言うし、ステージの上では尖りまくってるすね」

◆ヒップホップは反逆のカルチャー

——“尖っている”裏には、そういう理由があったんですね。

RAW:「バトルの現場ってそういうもんだと思うんで。ヘラヘラしてるときは勝つ気がないときすね(笑)。ラップしてて面白くなっちゃうときはあるすけど、それはそういう現場なんで。尖ってるときは尖ってることを言うし、柔らかいときは柔らかいことを言うし、ちゃんと使いわけようとしてるっす」

——ラップ以外で、影響を受けている音楽はありますか?

RAW:「ハウスとかテクノの速い系すかね。ドラムンベースとか、ダブステップとか。10代の頃は、よくああいう音楽のスゲえ客がいないパーティに行ってたっすね。そこで4つ打ちでも、トランスとかユーロでも……BPM180とか200近くでも、フリースタイルさせられてたっす。そういう遊びだったっすね」

——他のジャンルとも接したうえで、ヒップホップに対しての熱い想いがあるんですね。話を戻すと、「コンサートはこうやって楽しむもの」という“振りつけ”が嫌だし、それはRAWAXXXさんの思うヒップホップとは違うと。

RAW:「嫌っす。ヒップホップは嫌悪感を抱く人のほうが多いんですよ。反逆のカルチャー、レベルミュージックなんで。反逆心がない人たちが聴いても、自分のなかで本当にムカついていることや劣等感があって、その代弁してほしいことと音楽がバッチリ合ったときに成り立つんですよ。このシーンは、R-指定とか文科系のコたちが言ってきたことで、バーンと成り立ってきたんで」

◆「文科系の劣等感」は「本物」か

——身近なテーマのほうが、一般のリスナーは入りやすいのかもしれないですけどね。

RAW:「ただ、それは俺らが思ってる劣等感じゃないんですよね。学歴もねえし、カネもねえ、と。でも、『本当にカネがねえって、どういうことかわかるかお前ら?』っていう。それがみんな本当にわかってないんで、そういうヒップホップに喰らってるんすよ。『本物に喰らわないなら、カネを落とすな』っていうのが、俺の持論です」

正社員:「怖すぎる(笑)。俺の仕事、何もできねえじゃん!」

RAW:「(笑)。本当に『ヒップホップ』っていうのはそういうもんなんですよ。ただ、『ラップミュージック』っていうのはまた違う。吉田くん(MC正社員)の例で言うと、ラップに対しては戦極みたいなイベントをやって還元して、ヒップホップに対してはその人選で還元してる。だから、ヒップホップにはあまり還元してないんだけど」

正社員:「どんどん俺の仕事をしにくくするんじゃないよ(笑)」

RAW:「まあ、日本語ラップ、ジャパニーズのなかに、最初バンッとフリースタイルの文化を打ち出したのは違う人たちだけど、それを継続して定着させたのは、吉田くんなんじゃないですか」

◆日米で異なるヒップホップ文化

——文化やジャンルを表す言葉の意味を定義するのは難しいですよね。

RAW :「USの現行のヒップホップと日本のヒップホップはまったく違うんで。『ゲトー』っていう意味も、『ギャング』っていう意味も違うし。こないだも、とあるラッパーに『お前が吸わしてくれたネタマジでクソだった』みたいなこと言ってる奴がいたんですよ。向こう(アメリカ)だったら数日後にその仲間が襲いに来たりするじゃないですか」

——たしかにシャレじゃ済まないでしょうね。

RAW:「日本は文化的にも政治的にも、そこまで怒りがデカいことってなかったですからね。だから、平和ボケしてて、暴力的なことも起こらなかった。ただ、今はどんどん文化も変わって、外国からも人が来てる。100年後ぐらいには国がスゴい変わるって言われていますよね」

 はたして、ヒップホップシーン、そして日本の未来はどうなるのか。MC正社員とRAWAXXXの対談、次回はお茶の間を巻き込んだフリースタイルブームについて語ってもらう。

<取材・文/HBO編集部>

【MC正社員】

戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く

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