コロナ禍の「新しい生活様式」。マスク熱中症にも要注意! 連日猛暑で早くも危機

HARBOR BUSINESS Online / 2020年6月27日 8時31分

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写真/時事通信社

 6月8日、福岡県久留米市で今年初の猛暑日(35.3℃)を計測。気象庁によると今年の夏は、気温が全国的に平年並みか高いと予想されている。猛暑襲来を前に、忍び寄る「マスク熱中症」に立ち向かう心得を探った。

◆「新しい生活様式」の必需品。マスク熱中症にも要注意

 緊急事態宣言の解除から早くも1か月がたとうとしているが、都内の新規感染者の数は一日に40人を超えることもあり、しばらくはマスクを手放せそうにない。新しい生活様式で本格的な夏を迎えるにあたって、今、懸念されているのが「マスク熱中症」の問題だ。熱中症に詳しい帝京大学医学部教授の三宅康史氏は、「マスクを着けていることで熱中症のリスクが高まるというデータはありません」と前置きしつつも、「逆にマスクを着けていて、(熱中症については)安心だというデータもない。マスクの着用は、熱中症のリスクを高める可能性が十分に考えられるので、今夏は例年以上に注意すべきです」と警鐘を鳴らす。

「人間の体は、温かい空気を吐いて冷たい空気を吸うことで、熱交換を行って体温を調節しています。ところが、体温や気温で温かくなったマスクを着けていると冷たい空気が吸えなくなり、体が十分に冷やされなくなります」

 マスク装着時に感じる息苦しさも、気づかないうちに熱中症のリスクを高めている可能性がある。

「呼吸は肋間筋と横隔膜の筋肉運動によって行われますが、息苦しさを感じると、人間の体はふだんよりもがんばって呼吸しようとします。筋肉運動は熱が発生するので、がんばった分だけ体に余計な熱がつくられてしまう。マスクを着けていると顔の表面からの放熱が阻害されて、体温が上昇することも考えられます」(三宅氏)

 ご存じの通り、熱中症は体温が上がると起こりやすくなる。マスクをつけていることで体内に熱がこもりやすくなる分、リスクが高まっても不思議ではない。マスク姿で自転車通勤をしている加藤雄介さん(仮名・30代)は、実際に身の危険を感じたという。

「普段はなんてことのない上り坂で体が急に重くなり、頭痛がひどくなりました。ファミレスで1時間ほど休んだら症状は治まりましたが、この体験以来、運転中に息苦しさを感じたときは、マスクをずらすようにしています」

◆医療機関への負担増にもなる、熱中症患者の増加

 熱中症で救急搬送された人の数は、’18年に急増して9万5000人を突破。’19年は減ったものの、それでも7万人を超えている。専門家の三宅氏も「今年は予測ができない」と言う緊迫した状況の中で、国も対策に乗り出した。6月16日、環境省と気象庁は熱中症のリスクが極めて高いときに、熱中症警戒アラートを出す新たな取り組みを発表。関東甲信の1都8県で7月1日から10月28日まで試行され、前日の午後5時と当日の午前5時にアラートを出し、テレビや自治体の防災行政無線、メールなどで住民に伝えるという。

 熱中症警戒アラートを見逃さないようにするなど、熱中症に対する我々の意識を変えることが急務だが、三宅氏は「熱中症にかかる人を減らすことで、医療機関への過重な負担やストレスを減らすことにつながる」とも。

「熱中症がやっかいなのは、患者さんが高体温で救急搬送されてくることです。医療機関としては、新型コロナの感染も疑わなければいけなくなるので、100%感染していないと証明できるまでは、熱中症の方にも防護服を着用して治療にあたることになります」

 だが、注意していても、熱中症にかかることはある。’19年9月に熱中症で倒れた井上幸隆さん(仮名・30代)もその一人だ。

「インドア派なこともあり、外出するときは日陰を歩いたり、こまめに水を飲んだりしていました。ただ、当日は残暑の厳しいなか久しぶりに外出をしたせいなのか、急に体調が悪化して……。激しい頭痛で意識が朦朧とする中で、自力で歩けなくなりました」

 幸いにも、友人の適切な処置のおかげで井上さんは重症化せずに済んだが、自粛生活やテレワークが長引く中で、誰もが熱中症になるリスクが高まっているという。

◆医師が教える熱中症予防策とは?

「例年ですと徐々に蒸し暑くなっていく中で、体を動かして夏向きの体になる準備ができますが、今年は準備が十分にできていない人が多い。いきなり日差しのきつい屋外で活動するのは熱中症のリスクが高いので、少しずつ体を慣らしてください。あとは、人のいないところではマスクを外したり、熱中症の予防や対策をまとめた“FIRE”を心がけたりするといいですよ」(三宅氏)

<熱中症の応急処置“FIRE”>

▼Fluid(適切な水分補給)

 水分補給はこまめに行うのが大事。冷たい飲み物には体の熱を下げる効果もあるので、水筒に入れて持ち歩くといい。熱中症の疑いがあるときは、塩分を定量含んだ経口補水液を摂るといいが、自力で摂れないなら周囲の人や救急搬送を頼ること

▼Icing(体を冷やす)

 外出するときは、定期的に体を冷やすことで熱中症を予防できる。日差しが強い日や、気温が高い日は、無理をせずにコンビニやホテルのロビーなどに一時的に避難するのも手。熱中症の疑いがある場合は、衣服を緩めて首筋や脇の下を冷やそう

▼Rest(安静にする)

 熱中症の疑いがあるときは、とにかく安静にする必要がある。たとえ症状が回復してきても、すぐに動くのは避けたほうがいい。しばらく安静にした後、明らかに回復してから行動するように。症状が出る前に、適度な休憩を取り入れるのが効果的だ

▼Emergency(救急搬送)

 熱中症の疑いがある人の意識がないときは非常に危険な状態。救急車を呼び、患者を涼しい場所に避難させた後、服をゆるめて体を冷やそう。氷嚢を使えるのが理想だが、用意するのが難しいときは、よく冷えた水のペットボトルでも代用できる

◆肌のトラブルを防ぐためにこの夏、意識の改革を!

 また、熱中症以外にも、暑い日にマスクを着用して過ごすことで、さまざまな肌トラブルに悩まされる可能性もある。

「今年の夏は男性も肌のケアをしたほうがいいでしょう」と語るのは、皮膚科医の赤須玲子氏。女性専門のクリニックの院長を務める赤須氏だが、友人の医師からは男性の相談も増えていると聞いてるそうだ。

「いちばん気をつけたほうがいいのは日焼けですね。マスクを着けていると日焼けはしないと勘違いされている方がいますが、そんなことはありません。仕事などで外出しなければいけないときは、日焼け止めを塗るようにしてください。いろいろ種類はありますが、SPF(紫外線をカットする力)数値が30前後の男性向けのものがオススメ。ふだんから持ち歩いておけば、汗などで日焼け止めが落ちたときも安心です」

 また、紫外線散乱剤がコーティングされている、UVカットマスクで日焼け対策をしている方は、意外な落とし穴にご用心を。

「UVカットマスクには洗えるものもありますが、洗うたびにUVカットの効果が弱くなります。10回ほど洗ったマスクは、効果がないと思ったほうがいい」(赤須氏)

 さらに長時間マスクを使うと、乾燥して肌荒れなどトラブルも起こる。

「日焼けの原因である紫外線には、皮膚の水分を乾燥させる働きもあります。もともと肌が乾燥しやすいうえに、マスクがこすれたときに肌の角質が取れて乾燥が進んでしまいます。ふだん使っているマスクの種類もチェックしてください。不織布マスクは水分を吸収しやすいので、ほかのマスクよりもケアが必要です」(同)

 肌の乾燥を防ぐには、男性も化粧水を使うのがオススメとのこと。日焼け止めと同じく持ち歩いて使うのが理想だが、帰宅時に洗顔して化粧水を塗るだけでも肌の乾燥を防ぐ効果が期待できるそうだ。

「男性用の化粧水もいろいろありますが、水に近いサラサラとしたものを選ぶといいでしょう。ドラッグストアでも購入できますよ」

 マスクがこすれることによって、口や顎の周囲に大人のニキビができる可能性も高い。

「大人のニキビは、大きめのマスクを選んでこすれるのを軽減したり、布やコットンなど通気性の高いマスクで蒸れるのを防いだりすると、予防しやすいですよ」(同)

 この夏をマスクと乗り切るためには、熱中症や肌トラブルの対策を正しく実践することが重要だ。

【帝京大学医学部教授・三宅康史氏】

帝京大学附属病院の高度救命救急センター長を務める。熱中症に詳しく、『医者が教える熱中症対策』など、多数の著書を執筆している

【赤須医院院長・赤須玲子氏】

’98年、六本木に美容皮膚医院を開設。長年にわたって、さまざまな女性の肌の悩みを解決してきた。テレビや雑誌などでも活躍

<取材・文/黒田知道 写真/朝日新聞社 時事通信社>

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