アフターコロナの不動産市況はどうなる? 今後の不動産投資を左右する、3つのキーワード

HARBOR BUSINESS Online / 2020年7月9日 15時31分

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昨年の台風による水害で大きな被害を受け、イメージダウンしてしまった武蔵小杉のマンション群。

 働き方から余暇の過ごし方までライフスタイルを一変させたコロナショック。投資環境にもさまざまな変化が起こりつつある。新型コロナウイルスの感染拡大により、市況が大きく変わるなか、我々はどう勝負していくべきか。

◆Afterコロナの不動産投資業界、打撃が大きいのは?

 各業界に深刻な経済的打撃を与えている新型コロナウイルス。果たして不動産市況はどうなるのか。「コロナによって不動産投資業界が受ける変化は、セクターによって異なります」と解説するのは、不動産コンサルタントの長嶋修氏。

「一番大きなダメージを受けたのがホテルや民泊などです。特にインバウンドの依存度が高かった物件は当面、復調は難しいはず。企業のオフィス需要については、『リモートワークが進展するとこれまでのように広いオフィスは不要では』との声もありますが、すぐに縮小はしないとみられています。もともとオンライン業務に移行しやすいIT企業などはそうですが、多くの企業では『三密』を避けるため、以前よりも隣の人との間にスペースが必要になる。そのため、面積の広いオフィスの需要は今後もある程度は続く可能性が高いはずです」

 そして、気になる住宅市場についてもまだ様子見状態が続いている。

「持ち家、賃貸ともに3月の売買数自体は半減しています。一部で投げ売りが起きているという話もありましたが、市場価格に影響を及ぼすほどのボリュームではありません」

◆今後、地方移転が一気に加速する可能性は低い

 では、現在のような有事の際は、どのような物件が狙い目となってくるのか。これに対し、不動産投資情報サイト「健美家」を運営する倉内敬一氏は、「まだ都心が強い」と続ける。

「一番投資家が多くて裾野が大きいのは、都心にある区分所有1000万円台ぐらいの中古物件です。また、富裕層や海外の不動産投資家が購入するのもいまだ東京都心が多い」長嶋氏も「今後も、都心が狙い目です」と読む。

「アフターコロナは多くの人が都心を離れ、郊外や地方への移住が進むという声も聞かれますが、私自身、それは限定的な現象だと見ています。現在、’90 年代バブル時と比較して、東京だけがダントツで不動産価格が上がっている状態です。札幌、大阪、名古屋、福岡などの都市圏は’90 年代のまだ6割止まり。今後、オフィスの地方移転のようなことがあれば、地方の物件価格が上がるための材料にはなると思いますが、その動きがすぐに始まる可能性は高くないと考えています」

 仮に今後、コロナの第2波、第3波があった場合、人口密度が高い大都市に住むことはリスクと見なされるかもしれないがそれもあくまで先の話。

「5月に発表された人材情報会社『学情』のリサーチ結果によれば、テレワークを体験した結果、20代の7割は『郊外移住』よりもプライベートの利便性を重視して、『通勤時間をもっと短くしたい』と回答する傾向があったそうです。若い世代もそう考える人が多数であれば、『都心、駅前、駅近』の物件の人気がこれからも続きそうです」

 また、地域以外にも長嶋氏がより重要視する傾向にあると指摘するのが「地盤の強さと水害リスク」。

「例えば、日本で一番地価が高いのは港区です。でも、ハザードマップを見ると、同じ港区内でも地盤や高低など、立地により災害リスクは全然違います。特に最近注目されるのが、水害の危険性。昨年の台風時に大変な目に遭った武蔵小杉も、十数棟あるタワマンの中で実際に浸水したのは2棟だけでした。そして、その2棟も実は昔、川が流れていた河道の上に建てられおり、水害リスクが想定される場所だったんです。同じ駅の周辺でも建物によりリスクが大きく違うので、今後は水害の有無や地盤の良しあしが担保評価を決める要素になる可能性も高いです。東京都も水害危険地域はとても広く、特に23区東部は深刻。江戸川区のハザードマップには『巨大台風や大雨による河川氾濫や高潮の発生で、排水が間に合わなくなると“区内のほとんどが水没”する』とされています。実際、楽天損保では水害の可能性が高い場所は保険料が割高になり、逆に水害の可能性が低いところは通常よりも保険料を割安にしています。おそらくこの動きにはほかの損保も追随するし、金融機関の融資にも関わっていくのではないでしょうか」

◆地方自治体の格差が不動産価格に大きく影響

 さらにもうひとつ、今後、注目すべきなのが自治体の経営力だ。

「最近、財政の非常事態宣言を出す自治体が増えています。数年すると財源が枯渇するような自治体は、選ぶべきじゃありません。逆に選ぶべきは、経営がうまくいっている自治体の物件です。例えば、千葉県流山市はここ10年で人口が増え、自治体の予算が350億円から550億円にアップ。税収が潤沢なら行政サービスが安定し、暮らしやすい土地になるので、空室リスクも下がります。こうした自治体の経営力も今後は不動産価格に反映されていくのではないでしょうか。不動産市況は需要と供給で成り立っているので、都心でも地方でも弱いところは弱くなり、強いところは強くなる。優勝劣敗が激しくなり、格差がますます広がると思います」(長嶋氏)

◆「バブル再来」を感じさせる予兆も!?

 さらに中長期的な市況についてはどうか。長嶋氏は「今後バブル再来の可能性もある」と指摘。

「これまでのデータを振り返ると、日経平均株価と都心中古マンション成約平米単価は連動してきたのですが、現在の日経平均株価はおおよそ2万1000~2万4000円くらいの高水準を維持している。これが2万4000円を超えていくと、’90 年代のバブル時と似た現象が起きるんです。あのときも日米欧で金融緩和を行い、実体経済はよくないにもかかわらず、不動産などの資産価値だけが上がり続け、結果的にバブルがどんどん膨れ上がっていった。現在の市況から考えれば、こうした資産バブルが3~5年以内にまた起こる可能性があります。バブルを見据えるなら、今こそ不動産は買い時だと考えることもできます」

 この有事の最中、バブル到来の兆しをどう読み説くか。まだ先行きが不透明な今のタイミングで打つ次の一手が、今後の不動産投資の明暗を大きく分ける可能性は高いようだ。

【倉内敬一氏】不動産投資情報サイト「健美家」

健美家株式会社代表取締役社長。リクルート住宅情報( 現SUUMO )事業において賃貸、流通及び分譲部門を担当。その後、健美家に入社。’12年より現職

【長嶋 修氏】不動産コンサルタント

株式会社さくら事務所代表取締役会長。国交省や経産省などの委員歴任。現在は業界や政策への提言なども行う。近著に『災害に強い住宅選び』がある

<取材・文/栗林 篤 藤村はるな>

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