九州豪雨で死者60人超、136万人に避難指示。「50年に一度」レベルはもはや珍しくない!

HARBOR BUSINESS Online / 2020年7月17日 8時33分

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7月4日の昼頃、球磨川の氾濫により冠水してしまった熊本県人吉市街地の惨状。今年も水害は繰り返されるのだろうか 写真/朝日フォトアーカイブ

 ここ数年、毎年のように甚大な被害をもたらしている自然災害。コロナ禍で避難リスクも高まる中、特に被害が集中する夏を迎える。果たして、自然の驚異の前に注意すべき点はあるのか。

◆50年に一度レベル以上の災害が今夏も日本全土に

「今まで大丈夫だったというのが通用しないことを肝に銘じてほしい」

 地域防災を専門とする山梨大学大学院准教授の秦康範氏がこう話すように、球磨川や川辺川が氾濫し50人以上の死者を出した熊本県を始め、全国11県に大きな爪痕を残している「令和2年7月豪雨災害」は、改めて我々に自然災害の脅威を見せつけた。この原稿を書いている7月10日時点でも予断を許さない状況が続いているが、ここ数年間、「何十年に一度」レベルの災害が夏のシーズンを狙い撃ちするかのように集中的に起きている。

「’13年から運用の始まった『大雨特別警報』は50年に一度あるかないかというレベルを超える大雨が長時間続くようなときに出るもので、本来ならば滅多にないものなんですよ。運用から7年の間に4回出ているのが福岡と長崎。3回が佐賀と沖縄。2回が計6府県。1回が計22都県と北海道の計3地方(7月10日現在)。つまり、ここ数年は明らかに雨の降り方が変わってきているのです」(秦氏)

 今回の豪雨災害においても複数回の大雨特別警報が出されており、もはや特別なアラートとは言い難い状況となっている。

◆防災のためには「危険地帯に住む人を減らすしかない」

 そもそも都道府県が管理している河川のダムや堤防は50年に一度レベルの大雨が来ても大丈夫な造りにしているのだが、そのレベルを毎年、毎夏、超えてくるのだから、大災害が繰り返されるのは当然だ。

「WMO(世界気象機関)は今年の夏も北半球では記録的な暑さが予想されると言っていますから、猛暑になるでしょう。海水面の温度が上がれば湿った空気が立ちのぼり、台風や線状降水帯の発生を促します。昨年、千葉を襲った台風15号レベルのものが今までほとんど上陸したことのない東北や北海道を直撃することも考えられるのです。今まで大丈夫だったからという常識は通用しない」(同)

 では、今まで災害の少なかった地域のダムや堤防をより強固なものにしなくてはならないのかというと、それには膨大な時間と莫大なお金が必要となる。ならば人を動かすしか手立てはないという。

「人口増加による居住地区拡大により、国や都道府県が指定した河川の洪水による浸水想定区域に住む人と世帯は毎年増加しています。これを減らすしかない」(同)

 今後も毎年、毎夏、来るであろう集中豪雨被害を減らすには危険なエリアを避ける居住誘導と土地利用制限を早急に進めるべきだ。

◆今年は首都直下地震のリスクがある

 一方、豪雨災害とは別に気になるのが地震の兆候だ。4月から5月にかけて東北沖や関東などでは最大震度4の地震が多発。6月25日には千葉県東方沖を震源とする最大震度5弱の地震が、7月9日には茨城県で震度4の地震が起きているからだ。『日本の地下で何が起きているのか』(岩波書店)の著者である京都大学教授の鎌田浩毅氏が話す。

「東日本大震災が不安定な地盤を造ったことで日本列島にストレスがかかり、30年くらいは地震が起きやすくなっています。浅間山が噴火しそうだというのも同じ理由です。111個ある日本の活火山のうち、20個が不安定になっていて、いつ噴火してもおかしくありません。富士山もそのひとつです」

 そこで気になるのは今後30年以内に70~80%の確率で起きるという南海トラフ巨大地震のXデー。

「太平洋プレートの沈み込みがもたらす東日本大震災と同様の地震は1000年に1回の周期で起きています。一方、フィリピン海プレートの沈み込みがもたらす南海トラフ巨大地震は100年に1回の周期。次は2035年の前後5年以内に起こると予測されます」(鎌田氏)

◆過去の地震からすると備えたほうがいい!?

 地震は「この夏に起きる」という予知はできないが年単位レベルでの予測は可能だという。

「西暦869年に貞観(じょうがん)地震という東日本大震災とよく似た地震があり、9年後には関東南部直下型地震が発生。さらに9年後には仁和地震と呼ばれる南海トラフ巨大地震が起きています。今に当てはめると’11年の9年後の今年’20年に関東南部、すなわち首都直下型地震が起きて、さらに9年後の’29年に南海トラフ巨大地震が起きるということです。もちろん起きないことを願いますが、もしもに備えて準備しているのとしていないのでは被害の程度が大きく変わります。だから予測するのです」(同)

 新型コロナの感染リスクが高まる避難所では三密を避けた上に熱中症対策も取らなければならないという状況だが、災害によっては何が何でも避難する必要はないという。

「豪雨の中、無理して避難所へ向かって亡くなった方もいます。自宅に災害の危険がなければ動かないほうが安全ですし、親戚や知人宅に行ったほうが安心安全な場合もあるでしょう。そういう分散避難が必要です」(秦氏)

 コロナ禍で三密を避けるとなると避難所はすぐにパンクしてしまう。今夏、もし災害が起きた場合は分散避難を心がけよう。

◆過去10年間日本の夏に起きた主な自然災害

2011年9月 台風12号

西日本各地に大雨を降らせた台風12号。特に紀伊半島の奈良県南部や和歌山県での被害が大きく「紀伊半島豪雨」と呼ばれる

2013年8月 猛暑

8月上旬から中旬にかけて全国的に猛暑となり、高知県四万十市江川崎で当時の国内観測史上最高気温41.0℃を観測した

2013年10月 台風26号

関東地方に接近した台風26号の影響で伊豆大島で記録的な大雨が降り、土石流による甚大な被害が発生。「伊豆大島土砂災害」

2014年8月 豪雨による広島市の土砂災害

8月20日の豪雨により、広島市北部の安佐北区や安佐南区で大規模な土砂災害が発生。「8・20土砂災害」とも呼ばれている

2014年9月 御嶽山噴火

9月27日の昼頃、長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山が突然噴火して多くの登山客が巻き込まれた。死者行方不明者計63人

2016年8月 台風7号、11号、9号、10号および前線による大雨・暴風

8月16日から31日に発生した台風や停滞した前線が大雨を降らせて住宅浸水や農作物へ甚大な被害をもたらした。死者25人

2017年7月 7月九州北部豪雨

7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心とする九州北部を襲った集中豪雨。台風3号および活発な梅雨前線によるもの

2017年7月 西日本豪雨

7月上旬に台風7号と梅雨前線の影響により西日本を襲った集中豪雨。広島県、岡山県、愛媛県などに甚大な被害をもたらした

2018年8月 猛暑

6月末から猛暑日が続き、7月23日に日本歴代最高気温となる41.1℃を熊谷市で記録。8月は全国各地で40℃超えが見られた

2019年8月 九州北部豪雨

長崎県から佐賀県、福岡県にかけての広い範囲で線状降水帯が発生して8月28日を中心に観測史上最悪を更新。激甚災害に指定

2019年9月 台風15号

9月9日、観測史上最強クラスの勢力で関東地方に上陸した台風15号は千葉県を中心に甚大な被害をもたらした。激甚災害指定

2019年10月 令和元年東日本台風

10月12日に日本に上陸した台風19号は関東や甲信、東北地方などに甚大な被害をもたらした。武蔵小杉のタワマンも冠水被害

【山梨大学大学院総合研究部 准教授・秦 康範氏】

東京大学大学院工学系研究科修了。工学博士。地域防災や災害情報を専門とする防災研究者。’17年内閣府防災功労者防災担当大臣表影受賞

【京都大学教授・鎌田浩毅氏】

東京大学理学部地学科卒業。通産省(現経産省)を経て’97年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。火山や地震が専門の“地球科学の伝道師”

<取材・文/上野充昭 写真/朝日フォトアーカイブ 鎌田浩毅氏提供 出典/内閣府ホームページ>

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