安倍昭恵氏も関与していたオカルト神社の例祭に参列してみた。関連イベント役員には石破茂氏の名も

HARBOR BUSINESS Online / 2020年9月10日 8時33分

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昭恵氏の左に立つ白髪の男性は、教祖(大宮司)の渡邉政男氏

◆安倍昭恵氏が名誉顧問と報じられたことがある宗教団体

 3年前、安倍晋三首相の妻・昭恵氏がある宗教団体の関連イベントの名誉顧問を務めていることを日刊ゲンダイが報じた。その宗教団体とは、200~300万年前に天皇を頂点とする「富士王朝」(古代富士王朝)があったと主張し、当時の天皇家縁の神社再建を謳う新興宗教団体「不二阿祖山太神宮」。昭恵氏が名誉顧問を務めていたのは、毎年開催される同団体の関連イベント「FUJISAN地球フェスタWA」だ。

 日刊ゲンダイがこの事実を報じた直後に、同イベントのウェブサイトにあった役員名簿から昭恵氏の名は削除され、翌年以降も掲載されなくなった。今年は新型コロナウイルスの影響でイベントは延期となったが、母体である不二阿祖山太神宮が9月6日に開催した「例祭」に足を運んでみると、そこには教祖と並んで写る昭恵氏の写真が張り出されていた。

◆神社なのにムー大陸?電磁波実験?

 山梨県富士吉田市。杓子山の麓に不二阿祖山太神宮はある。自動車で駐車場に入っていくと、すでに信者のものと思しき車でごった返していた。山の斜面に建造された石垣を登るとすぐに境内が見えてきた。一見するとごく普通の「新しい神社」だ。階段の両サイドに「不二阿祖山太神宮祭禮」と書かれた幟がはためいている。

 受付で「コロナ対策のため」として名前と住所を書かされる。会員(信者)でないことを告げると、神社の案内や境内の地図が入ったチラシを持ってきてくれた。優しい。

 「パワースポット! 両縁結びの太神宮 不二阿祖山太神宮」と書かれたチラシには、「地神様」「蓬莱山島石組み」「三柱鳥居」など境内の各スポットが写真入で説明されている。この神社の鳥居は柱が3本あり、真下から見上げると三角形に見える。あまり見ない形だ。そしてチラシには何やら気になる言葉が。

〈スワスチカ ムー大陸の絵文字の1つ 神の四大源力を表します。ここでは、神の回転のエネルギーの違いを体験していただけます。

〈体験者の声〉辛かった肩こりが軽くなりました!〉

〈三柱鳥居 御柱鳥居では携帯を使った電磁波実験等を体験していただけます。〈体験者の声〉骨折によるクビや背筋の神経痛がす~っと痛みがなくなった!〉

 信者ではない私ですら、ただならぬパワーを感じずにはおれない文章だ。同行した某イラストレーター氏は、神社のパワーにあてられたのか「ムー大陸……」とつぶやいたまま絶句していた。

◆ホピ族の儀式?

 受付のテントを過ぎ、本殿につながる坂道を歩いていると、木で組まれたボードにイベントの様子や参拝者の姿を移した写真が大量に貼られていた。その中に、あの人がいた。

 昭恵氏の左に立つ白髪の男性は、教祖(大宮司)の渡邉政男氏だ。

 本殿前では、すでに例祭の儀式が始まっていた。参列者の席の一番後ろに案内された。参列者は60~70人くらいだろうか。椅子が品切れになってしまったらしく、私たち後ろの方の席の人には椅子の代わりに丸太があてがわれた。砂の上に立てた丸太は安定が悪いし、尻も痛い。神社のパワーで何とかしてくれないかと念じたが無駄だった。

 儀式は神道風だった。神主の格好をした人々が小高い本殿の前で何かしているが、ここからは全く見えない。「かしこみ、かしこみ」などと祝詞(のりと)のような声が聞こえるだけだ。これが1時間近く続いた。

 儀式が終わると渡邉氏が挨拶に立った。なんでも、この地は稲作発祥の地で、ここから東アジアやメソポタミアにまで稲作が広まっていったのだという。神様は田んぼに降りてくるので、稲作に取り組んで信仰を広めていきましょうといったような内容だった。特に煽るような調子ではなく、ごく普通の優しい口調。むしろ聞き取りにくいくらいだった。

 最後に、ネイティブアメリカンであるホピ族の儀式をするとのことで、羽飾りがついた帽子にジーパン姿の男性がテーブルに置いたミステリーエッグ(タマゴのような形をした石)を前に何やらしていた。これもここからは全く見えない。

 全ての儀式が終わると、境内を自由に歩き回れるようになった。ホピ族の儀式をしていた男性に話を聞いた。

「私の祖母がアパッチ族で、私はクオーターです。私自身は日本生まれの日本育ちで、今も日本に住んでますよ」

 それはちょっとホピ感が足りないんじゃないかなあ……。

 ミステリーエッグが置かれた台には、他にもアクセサリーや石などがいくつも並べられていた。信者が誰に話しかけるでもなくポツリとつぶやいた。

「この石はムー大陸で、こっちのはアトランティスですね」

──えっ!? ムーやアトランティスの石なんですか!

「あ、いえ、大宮司様がそういうイメージで並べられたもので」

 無駄に驚かさないでください。

◆Oリングテストで電磁波実験!

 境内をうろついていると、信者が親切にいろいろガイドをしてくれた。

「この神社は大昔からあったのが、なくなってしまったので、今この場所で再建しようとしているんです」

 冒頭で触れたように不二阿祖山太神宮は、かつてこの地に天皇を頂点とする「富士王朝」があったと主張している。そこにあった由緒正しい神社が不二阿祖山太神宮だ。根拠とされているのは『宮下文書』と呼ばれる古文書で、偽史研究家の原田実氏はこれを「偽書」と評している。ちなみに富士王朝があったとされる200~300万年前は、アウストラロピテクス(猿人)がうろついていた時代だ。

 不二阿祖山太神宮は2009年に宗教法人として認証された。当時は「天住の会(あすみのかい)」との名称で、所在地は山梨県都留市。「不二阿祖山太神宮」と改め、現在の場所に移転してきたのは2012年だ。教祖の渡邉氏は、かつて存在した(と主張する)富士王朝時代の不二阿祖山太神宮の後継者一族でも伝統的な神道の神職でもない。

「世界の宗教はここから始まっているんです。キリストもここを訪れて修行したんですよ」

──えっ! キリストが!?

「そうです」

──……。

 言い切るだけで、特に根拠の説明や詳しい話はなかった。

 次は三柱鳥居の下で電磁波実験だ。

「携帯電話を持って、反対の手の指で輪を作って人に引っ張ってもらいます」

 ある程度引っ張ると、指で作った輪が外れる。

「次に、鳥居の下に携帯電話を10秒くらい置きます。その後で、また携帯電話を持って、指で作った輪を引っ張ってもらいます」

 これは「O(オー)リングテスト」と呼ばれる、スピリチュアルやニセ科学の界隈では昔から有名な方法だ。条件を変えてこれをやり、指の輪が外れにくければ体のエネルギーが好ましい状態にあることを示すという。いかにも科学的根拠がなさそうな実験だ。

 信者の説明に従って鳥居の下で実際にOリングテストをしてみたが、特に変化は感じられなかった。

──いやあ、全然違いがわからなかったです。鳥居のパワーで携帯の電波が通じなくなるとか、そういうことじゃないんですね。

「そういうことじゃないです」

 それでは、とばかりに信者が別のスポットに連れて行ってくれた。チラシに「ムー大陸の絵文字の1つ」と書かれていた、石で作られた文様の前だ。

「神様の回転は左回りなので、左回りに腕を回してみてください」

 言われた通り腕を回してみた。

「今度は、逆方向に腕を回してみてください。こっちの方が重たく感じるでしょ?」

──ホントだ! 逆回転の時の方が腕が重い!

 腕を回す方向を変えれば感覚が違うのは当たり前だが。

 社務所でペットボトル入りの「神水」を購入(お布施500円ごとに1本もらえる)した際、「熊本地震で起きた奇跡!」と題するチラシが目に止まった。

〈震度7にもかかわらず落ちなかった御神札や花瓶…〉

 という文章とともに、御神体護符を収めた神棚や花瓶の写真が掲載されている。確かに落ちていないが、神棚に載っているお札立ては倒れていた。

〈本震の時にできた隙間が地震の度に修復された!〉

 いや、でも修繕はした方が……

 御神体護符の値段はチラシのどこにも載っていなかった。

◆教団関連イベント名誉顧問には石破茂氏の名も

 昭恵氏が名誉顧問を務めていたのは、この不二阿祖山太神宮の関連イベントである「FUJISAN 地球フェスタ WA」の実行委員会。宗教法人不二阿祖山太神宮とは形式上別団体だが、過去には「FUJISAN 地球フェスタ WA」の一環として、不二阿祖山太神宮の教義である「富士王朝」などに関連する講演会なども開催してきた。

 そして、このイベントには昭恵氏だけではなく、自民党を中心とする多数の国会議員も顧問等の肩書で名を連ね、さらには中央官庁、地方自治体、教育委員会など多数の行政機関はおろか複数のメディアまで後援についている。〈参考:やや日刊カルト新聞 安倍昭恵夫人が名誉顧問のイベント、代表者は新興宗教の教祖様=衆院選候補者も多数が役員に〉

「FUJISAN 地球フェスタ WA」は今年も8月にメインイベントが予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期(事実上の中止)に。ウェブサイトの後援団体一覧など肝心な情報は「制作中」となっており掲載されていない。

 しかし役員一覧は掲載されている。2020年は、名誉顧問、特別顧問、名誉会長、顧問などの肩書で、国会議員、地方議員が前職・元職も含めて計80人。武田良太・防災担当大臣、竹本直一・IT・科学技術担当大臣、田中和徳・復興大臣のほか、副大臣や政務官など安倍内閣の面々も並ぶ。公明党議員もいる。昭恵氏の名は表向き消えたものの、相変わらずの政権与党まみれのイベントだ。

 そして、いま自民党総裁選で「売出し中」の石破茂・衆議院議員の名もある。名誉顧問で、しかも代表発起人。石破氏は2015年から現在まで毎年、「FUJISAN 地球フェスタ WA」の名誉顧問を務め続けている「皆勤賞」。昭恵氏以上に露骨な関わりだ。

 「与党内野党」などと言ったところで、石破氏もまた自民党の偽史・オカルト応援団の一員ということなのだろうか。

<取材・文・撮影/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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