毅然とBLM支持を示した大坂なおみ選手への日本特有の批判。大坂世代の若者はどう見たか?

HARBOR BUSINESS Online / 2020年9月21日 15時32分

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Naomi Osaka (Photo by Al Bello/Getty Images)

 12日、全米オープンで2年ぶり2度目の優勝を果たした大坂なおみ選手。今大会、1回戦から決勝まで黒人犠牲者の名前が記された7枚のマスクを着けて登場したことが話題となった。こうした人種差別への抗議をいわば「テニスの試合中」というスポーツの場で行ったことについて、SNSをはじめとしたインターネットでは賛否の声が巻き起こった。

◆スポンサーやSNSからは批判の声も

 彼女のこうした一連の行動を「素晴らしい」「刺激を受けた」と賞賛する声がある一方で、否定的な意見も目立った。「スポーツ選手が政治的な立場を取るべきではない」というものだ。

 彼女は8月27日に準決勝を棄権するという旨をTwitterで表明したが(後に方針を変え実際には棄権せず)、そのツイートには「暴徒擁護」や「意味不明」といった日本語のリプライがつき、15日にWWD JAPANが「【ニュース】大坂なおみ選手と「アディアム」とのコラボコレクションが発売」というツイートをすると、「テニスに政治を絡めてくるなんて不愉快」「不買運動」「日本人をやめてください」などのリプライがついた。こちらのリプライ欄は差別的なコメントが非常に多く、そもそもまっとうな批判にすらなっていないと筆者は思う。

 また、毎日新聞の11日の記事「大坂なおみの人種差別抗議に国内外で温度差 スポンサーの微妙な事情」によれば、スポンサーからも「人種差別の問題と本業のテニスを一緒にするのは違うのでは」との声が上がっているという。

◆同世代の目に大坂なおみ選手の姿はどう映っているのか

 筆者は大坂なおみ選手と同じ1997年生まれである。筆者個人としては、同世代として世界に絶大な影響力を持ち、批判を恐れずに考えを発信できる彼女のことを尊敬しているため、今回彼女の行動について日本で浮上した批判に関しては疑問に思う点が多い。

 というのは、今回彼女に向けられた批判は概ね「スポーツ選手は黙ってスポーツだけやってろ」「日本人なのに人種差別反対運動?なんで?」というニュアンスに聞こえてしまうためだ。筆者が思うに、今回の彼女の行動に「落胆した」と批判を浴びせている人々は、これまで「大坂なおみ」そのものではなく、日本の一部のスポンサーやメディアによって作り上げられた「すごい日本人選手」としての「大坂なおみ」を応援していたのではないかと思う。日本人記者が「今何を食べたいですか?」と毎回毎回くだらない質問をするのに対して、少しぎこちない日本語で「カツ丼」と答える、そんな「大坂なおみ」像に親しみを抱く……というか、勝手に自身のイケてない現実から目をそらすために「すごい日本人」というファンタジーを投影させていただけなのではないだろうか。

 筆者に言わせれば、「人のことをバカにするのもいい加減にしろ」というところだ。彼女が人種差別の問題について考えを表明するのは今に始まったことではない。今回メディアでありのままの彼女の姿が大きく取り上げられたことによって、これまで彼女に抱いてきたイメージとのギャップに勝手に落胆しているだけではないのか。

 では、大坂なおみ選手と同世代の人々は彼女のことをどう見ているのだろうか? 昨今は「若年層の右傾化」などとも言われているが、ネットで見られたような「勝手に作られたすごい日本人像」というイメージに拘泥されて批判するような声は彼女と同年代でも見られるのだろうか?

 そう思って、筆者の友人十数名にインタビューを行ったみた。

◆同世代からは肯定的な声

 大坂なおみ選手と同世代の人々は、政治的発言も堂々と主張し、BLM支持を毅然と表明する彼女のことをどう見ているのだろうか? 筆者の友人十数名にインタビューを行ってみると、そこから浮かび上がってきたのは、彼女のことを「誇らしく思う」という肯定的な結果だった。

 筆者が友人たちに「『スポーツ選手が政治的な意見を言うな』という声についてどう思うか」という質問をしたところ、「どんな職業にせよ、何らかの声を上げることを妨げる行為には反対。政治を一部の職業の人のみのものとすることとイコールであり、民主主義に反し自らの首を絞めている行為」「一人の人間が政治的な意見を表明するのに、肩書きは関係ない」「スポーツ選手はスポーツに集中すべきであって、政治に口を出すべきではないというのは多様性を認めないということ。大坂なおみ選手に対してもそのように言論を規制するのはおかしい」という声が上がった。

 また、「今回の全米オープンで大坂なおみ選手が7試合マスクを着用したことについてどう思うか」という質問をしたところ、「大坂なおみ選手が『スポーツ選手』であるから、スポーツをしている時が最も政治的に訴える機会にもなるのだろう。大坂なおみ選手は、スポーツを通してスポーツ以外のことも訴えたいと思っているように思う。それは スポーツの比較的にみて新しい姿であり、とても良いと思う」「試合は開催元や観客のものでもあるけど、第一に選手のものであると思うので、自己責任で社会問題を持ち込む行動に周りはとやかく言えないと思う。選手も命がけで大会に向けて練習してきて、結果を残す為に必死な世界大会でその行動は並大抵の思いではできないと思う。スポーツ選手の自己表現の場が大会で、表現方法がマスクを着けるってことだっただけだと思う」「事件が起きたときにもそれについては言及していたし、自身の注目度を良い意味で使って世界へ意思を発信していることはとても良いことだと思う。正直そういうのってどの方面からなに言われるかなんてまったくわからないしめちゃくちゃ勇気の要ることだと思うけど、そういうのをこなせる勇気が凄い」という意見が集まった。ここには載せていないが、他の友人からも肯定的な意見が寄せられた。

◆「今何を食べたいか」という質問は「くだらない」

 また、先ほど申し上げた「日本のスポンサーやメディアによって作り上げられた大坂なおみ」についても気になったため、「日本のメディアが大坂なおみを過剰に『ステレオタイプの日本人』として扱いたがったり、記者が度々『今何を食べたいか』という質問をすることについてどう思うか」という質問をしてみた。すると、「都合の良いときだけ国民意識を求めるのは気持ち悪い。大坂さんであれ誰であれ、女性アスリートへのそういった質問は、馬鹿な女の子扱いしているように見えるのでやめたほうが良い」「メディアの質が低いなと思う。彼女のパーソナリティを引き出すにしても、他の質問があるのではないか」「くだらないなと思う。彼女の部分的な側面を切り取って、キャラクター化しようとする意図を感じる」という意見が集まった。

 今回は筆者の周りの20代十数名にしかインタビューをしていないため、これが同世代の総意だという気はさらさらない。しかしながら少なくとも筆者の周りでは彼女が社会問題に対するメッセージを発信することには肯定的であるし、日本の一部のスポンサーやメディアが彼女を型に嵌めるような質問をすることに対しては否定的であった。大坂なおみ選手自身は批判の声すらも「刺激になった」とツイートし、その強さには驚かされるばかりであるが、「あなたを支持する同世代はたくさんいる」ということもどうか伝わってほしい、と思う。

<取材・文/火野雪穂>

【火野雪穂】

97年生まれのフリーライター。学生時代から学生向けメディアの記事作成などを行う。今春大学を卒業したばかりだが、いきなりのコロナ禍で当惑。

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