同じデジタルの名を冠する大臣、平井卓也氏と台湾のオードリー・タン氏を比べてみた

HARBOR BUSINESS Online / 2020年9月24日 8時31分

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時事通信フォト

 9月16日、昭和時代の派閥政治を思わせるような代表選を経て菅総理大臣が誕生しました。その内閣人事で注目されたのが、新設されるデジタル庁の大臣に任命された平井卓也氏。デジタル大臣といえば、隣国台湾のオードリー・タン氏が「天才」と称され話題に。2人のこれまでの経歴をそれぞれ振り返ります。

◆上智大卒の平井氏、タン氏は中学中退という異例の経歴

 まずは日本のデジタル担当大臣の平井卓也氏。香川県生まれの平井氏は、元総理大臣の細川護煕氏や、元法務大臣の岩城光英氏を輩出した上智大学卒ですので、学歴としては申し分ないと言えるでしょう。

 一方、オードリー・タン氏は台北市で生まれ、最終学歴はなんと中学中退。中学校も出ていない人物が、大臣に登用されることは日本では到底考えられないことですが、タン氏は14歳で中学を中退したあと、起業し、アップルの顧問も務めるまさに「成り上がり」の政治家なのです。

◆現在に至るまでにどんなポストを経てきたのか

 次に2人がこれまでどういったポストについてきたのかを見てみましょう。平井氏は、電通に入社後、西日本放送の社長などを経て、2000年に衆議院議員に。そして、2007年に国土交通副大臣、2018年には情報通信技術政策担当を務めるなど、政治家として順風満帆と言える主要ポストを歴任し、今回のデジタル担当大臣に任命されました。また、2009年には自民党のIT戦略特命委員長を務めています。

 それに対しタン氏は、19歳のときにアメリカ・シリコンバレーでソフトウェア会社を起業。その後、アップル社の顧問も務め、33歳でビジネスの世界から退くと宣言しています。つまりタン氏は、IT分野において叩き上げで様々なキャリアを掴んできました。しかし、政治の世界においては35歳のときに蔡英文政権で入閣を果たしたところからキャリアをスタートさせています。

◆個性的な実績が対照的な両氏

 そうした職歴の中で平井氏は、IT戦略特命委員長時代に、サイバーセキュリティ基本法や官民データ活用推進基本法などの草案に関わるなど、早い時期からデジタル部門に踏み込める議員として重宝されていました。

 また2013年には、安倍前総理に似たキャラクターが空中に舞い上がるなどする、スマートフォン向けゲームアプリ「あべぴょん」や、党情報を発信するアプリ「自民党NEWS」を制作するなど、デジタルコンテンツに積極的に参加し、デジタル業界における発信で大きな役割を果たしています。

 時代は下り、2016年以降は蔡政権に入ったタン氏の活躍が目覚ましく、特に新型コロナ対策における手腕が世界的な注目を集めました。

 「根拠のない噂やデマがSNSなどを通じて広がった時は、ユーモアの力でデマを封じ込めるアイデアを実践している」(同氏)と語り、即席麺が買えなくなるというデマが流れた時は、数時間後に「台湾には十分な量のインスタント麺があります。でも、健康のために野菜も一緒に食べましょう」とコミカルなイラストを入れた投稿をSNSに流しました。

 その結果、タン氏の投稿が一気に拡散され、デマ投稿は数日で下火となっていったのです。その他、台湾で新型コロナウイルスが拡大しはじめた2月3日、政府がマスクを買い上げ、実名制で販売するシステムを構築。

 さらに、台湾全土6000カ所以上のマスク販売拠点の在庫状況が、3分ごとに更新され確認できるマスクマップを作成し、混乱を防ぐことに成功しています。これは、日本におけるマスクパニックを回顧するにつけ、その差が歴然と感じられるものです。

◆SNSの投稿も管理できない平井氏

 平井氏がデジタル担当大臣に任命されるニュースが出た際、SNS上で再燃したのが「ワニ動画」の一件でした。今年5月の検察庁法改正案をめぐる衆院内閣委員会で、同氏が自身のタブレット端末でワニの動画を鑑賞している姿が報道されたのです。本人は「偶然出た」と弁明していますが、仕事に対する姿勢に疑問符はつけられたままとなっています。

 さらに、社民党の福島瑞穂議員がインターネット中継で発言をしている際に、ネット上に「黙れ、ばばあ!」と書き込んだのがバレてしまった過去もあります。多くの報道では、匿名で書き込んだものがバレたような書き方になっています。

 確かに書き込み自体は匿名だったのですが、それが自身のTwitterアカウントに連携されていることに気がつかず、同じ内容が平井氏のアカウントからツイートされていたのが発覚のきっかけになったのです。

 国民の心配は「黙れ、ばばあ!」と書き込む感覚だけでなく、情報管理の最先端たるべきデジタル担当大臣が、この脇の甘さであるという部分にもあるのではないでしょうか。

◆「開かれた政府」をITで実現しようとするタン氏

 台湾に目を向けると、一見、国民との接点が希薄になりがちな閣僚という存在でありながら、タン氏が「開かれた政府」を実践しようする姿が見えてきます。氏は、毎週水曜日に台北市内の「社会創新実験センター」という場所にいることを広く公開しており、そこには誰でも会いに行くことができるのです。

 そればかりか、午前10時から午後2時までは予約なしで自由に会うことができるといいます。政治に関心の高い台湾の若者は、声を直接伝えられる閣僚に大きな期待を寄せています。

 また、タン氏は男性として生まれましたが、24歳の頃に自身がトランスジェンダーであることを公表しました。日本に目を戻すと、すでに何年も「女性の活躍できる社会」を標榜しながら菅政権の女性閣僚は、わずか2人で、割合にするとたったの8%。

 トランスジェンダーであるタン氏を登用した台湾政府が進んでいることは間違いありませんが、日本はその遥か後方で足踏みしているようです。

 こうして比較すると、タン氏に見劣りする部分が露わになる平井氏ですが、今は頑張っていただくしかない現状です。平井氏のブログではデジタル担当相の所信として「役所の縦割りを打破すること」を掲げています。

 コロナ対策でも役所の縦割りで、対応の遅れが数々見られました。次に来る危機のためにも、一刻も早いデジタル担当大臣の活躍が望まれます。

<文/Mr.tsubaking>

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