疑惑直撃に取材者の個人情報を連呼した菅原一秀前経産相。”探偵”使用疑惑も

HARBOR BUSINESS Online / 2020年9月30日 15時32分

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疑惑を追及され取材者の個人情報を連呼する菅原前経産相、何がしたいのか(筆者撮影)

 公選法違反疑惑で大臣を辞任後、有権者への説明責任を果たさないまま選挙区内(東京都第9区・練馬区)で駅頭活動を再開している菅原一秀前経産相。前稿では、直撃に逆ギレした代議士が筆者の取材を「脅迫」「嫌がらせ」と非難していたことを報じた。前回の直当て取材の3日後、別の駅頭場所で追及を受けた前経産大臣は、筆者の居住地区などの個人情報を何度も執拗に連呼した上で脅迫とも取れる言葉を発するなど、およそ公人とは思えぬ反応を見せた。

 昨年、菅原議員への取材の過程では筆者の自宅周辺に探偵事務所の調査員と思しき不審者が出没。その後、探偵社と繋がりのあるメディアが筆者を非難し菅原議員を擁護する記事を掲載。そして経産相辞任後、”香典持参秘書”について「探偵みたいなのを雇って調べさせた」と菅原議員が吹聴していたことが判った。この奇妙な符号を検証する。

〈参照:HBOL|菅原一秀衆院議員、駅頭演説への直撃取材に、説明責任果たさず「脅迫」「嫌がらせ」と逆ギレ〉

◆取材者の住所などを連呼し「早くおうちに帰った方がいい」

 前回の直撃取材から3日後、練馬区光が丘で駅頭を行う菅原議員に改めて直当て取材を行った。

 駅頭終了間際に筆者の姿を認めた菅原議員はマイクを口元から外し「〇〇〇〇〇〇〇の〇〇〇〇〇〇〇さん」と、公開していない筆者の住所などの個人情報を口にした。

 駅頭を終え、路上に停めていた車に向かう代議士。疑惑追及の質問をスルーし、筆者の居住地名を執拗に連呼、具体的な区域まで告げてくる。

「〇〇〇〇〇〇〇、〇丁目の」

 前回と同様に「完全に政治活動の邪魔」「取材の名の下の脅迫、嫌がらせ」「嫌がらせはやめてください」などと、被害じみた口ぶりは相変わらずだったが、この日は“反撃”を思い付いたようだ。

 声をかけてきた支援者へ向けた満面の笑顔を不敵な笑みに替え、含みを持たせた口調で筆者に向き直り「早くおうちに帰った方がいい」と脅迫めいた“アドバイス”を返してきたのだ。

◆個人情報入手の手段とその使用に問題は?

 なぜ菅原議員が筆者の住所を知っているのか。まず思い当たるのは、昨年6月の虚偽110番通報事件だ。その舞台となった菅原議員の練馬事務所での経緯を振り返ると、取材申し入れのためにジャーナリストの藤倉善郎氏とともに事務所を訪れた際、記入を促された来所者カードに住所や連絡先を書き入れていた。

〈参照:HBOL|公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か〉

 だとすると、このような流用は認容されるものではない。現に菅原議員のオフィシャルサイトには『個人情報保護方針』として「個人情報のご提供をお願いする際は、その目的・利用内容を明示いたします」「個人情報を収集した際には、プライバシーを尊重し、個人情報を保護するために厳重に管理いたします」と記載されている。疑惑を追及する取材者への脅迫や虚偽告訴のために利用するとは”明示”されておらず、個人情報を連呼しておきながら「プライバシーの尊重」を謳うとは呆れるばかりだ。

〈参照:すがわら一秀Official Site|プライバシーポリシー〉

 もう一つ想起したのは“探偵事務所”との関連だ。この数年、筆者は菅原議員について統一教会(家庭連合)との関係を端緒に、カレンダー配布・有権者買収といった公選法違反、虚偽通報・虚偽刑事告訴など様々な疑惑を追及、報道してきた。

 昨年4月に行われた練馬区議会議員選挙の際も、自民党区議候補者を取り仕切り応援に入る菅原議員への直当て取材を行うべく区内を回っていた。

〈参照:HBOL|統一教会イベントで2世信者を激励した議員に「信者運動員使用」疑惑浮上。本人を直撃〉

〈参照:HBOL|菅官房長官登壇の選挙演説会で会場を仕切る菅原一秀衆議院議員がジャーナリストを不当排除〉

〈参照:HBOL|統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、「菅政権」への布石〉

〈参照:HBOL|2年前に菅原一秀前経産相も出席?統一教会と政治家の極秘会合、直撃取材に対し教団関係者から脅迫も〉

〈参照:HBOL|公選法違反常態化の菅原一秀を東京地検が不起訴処分、起訴猶予は妥当ではない〉

◆菅原議員による“仄めかし”ツイート

 この区議選中、筆者の取材との関連は不明だが、菅原議員は以下の文面をツイートしている。

「去年の暮れに私のツイッターに書き込みした左派の人が逮捕されました。SNS時代、勘違いすると選挙中に合法と思って取材したつもりが完全に駅前の防犯カメラに収められ、撮られた動画で決定的な証拠となり、その家族までもたいへんなことになることを二度経験してます。腹を固めました」

「自民党の区議候補が、完全な選挙妨害を受けております」

「公職選挙法225条『選挙の自由妨害罪』で四年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金。

候補者に対し、暴力や威力(無理な取材等を含む)を加えたり、演説の妨げをする等、選挙の自由を妨害した場合に適用。明らかに今回はこれに当たります。すでに態勢に入りました。動画にも収まっております」

〈参照:ツイッター|菅原一秀(衆議院議員/すがわらいっしゅう・自民党東京9区)〉

◆隠し撮りを行う不審者が出没

 この時期、筆者の周辺では奇妙な出来事が続いた。

 まず、筆者の自宅周辺を探る不審者が出没。モッズコートに隠したビデオカメラで家屋や家人を撮影する男の他、ハンドバッグに忍ばせたカメラで隠し撮りを行う女を家人や筆者が目撃している。このモッズコート男の姿を偶然、ドライブレコーダーが捉えていた。

 この男を追跡すると不自然なルートで逃走しており、明らかに筆者の自宅を狙っていたと判る。また、この男が使用したと思われる車には調査会社のものらしき痕跡があった。

 この時期、他に取材対象としていた事案はなく、諸団体との間にトラブルもなかった。思い当たるのは菅原議員周辺への取材だけだった。

同区議選においては菅原議員の秘書も取材中の筆者を隠し撮りしていた。

 その後、5月から6月にかけて、練馬の二大祭りの一つである『てる姫祭り』での運動員によるカレンダー配布を契機としたTwitter社への虚偽通報から練馬事務所事件が起こる。

〈参照:やや日刊カルト新聞|菅原一秀衆議院議員を名乗る若者が練馬の大規模祭りに大挙出現=菅原議員(本物)は本紙の「菅政権なら閣僚に抜擢?」に「ないない」と否定も不敵な笑み〉

〈参照:HBOL|公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か〉

〈参照:HBOL|「建造物侵入罪」濫用で狭められる報道の自由〉

◆「菅原議員擁護」「鈴木エイト非難」記事を掲載した地元誌

 奇妙な連鎖は続く。『THE NEWS/ザ・ニュース』なる”マスコミ向け情報誌”が8月5日発行の第146号で、筆者の報道姿勢を非難し菅原議員を擁護する記事を掲載した。

 表紙に「本号のスクープ」として『宗教団体と自民党議の関係攻撃するジャーナリストの〝怪〟』、記事の見出しに『統一教会・国際勝共連合と安倍政権及び自民党議員との関係を「歪」と執拗に攻撃するジャーナリスト』と銘打った当該記事は「事務所側はこの突然の押しかけに困惑して警察に通報したわけです」と6月19日の練馬事務所での騒動に言及。他にも「これまでも菅原氏を中傷するかのように統一協会との関係を何度も報じていたという」「風評に敏感な政治家にしてみれば看過できない問題で、内心穏やかでないのは容易に想像できる」「UNITEの会合に出席したという菅原氏は格好の〝標的〟となるわけだ」などと、全面的に菅原議員を擁護する記述が目立つ構成となっている。

〈参照:THE NEWS|記事〉

 この“スクープ”自体は思い込みと不正確な情報で書かれた飛ばし記事レベルの代物であり、取るに足らないものだが、なぜこのタイミングでこのような記事が出たのか。実は、似たような事例がある。

 昨年12月に当メディアで報じた『国会欠席で雲隠れの「カニメロン」菅原一秀前経産相、被害者ヅラで弁明の日々か』の中で取り上げた月刊誌『ベルダ』を巡る案件だ。菅原議員は秘書や元秘書に責任を押し付ける自身の主張に沿った記事『経産相辞任の陰に小池都知事 内部告発者の元秘書は都民ファースト陣営』が掲載された『ベルダ11月号』のコピーを持って支援者宅を回り弁明していたことが確認されている。

 この『ベルダ』の記事については菅原議員が知り合いの記者に書かせたのではないかとの疑惑が出ていたが、秘書によると菅原議員の事務所内でも代議士が書かせたと認識されていたという。

〈参照:HBOL|国会欠席で雲隠れの「カニメロン」菅原一秀前経産相、被害者ヅラで弁明の日々か〉

◆「探偵みたいなのを雇って調べさせた」発言

 そして週刊文春がスクープし経産相辞任の引き金となった公設第一秘書による香典持参写真について、菅原議員は当時「僕は探偵みたいなのを雇ってるんだ、雇って調べさせたんだけど、○○(公設第一秘書)はどうも文春からカネをもらってあれをヤラセで撮ったらしい。そういう情報が入ってきたんだよ。だいぶカネもらったみたいだよ」と事務所内で話していたという。

 前述のTHE NEWSの所在地は練馬区内にあり、発行人には日本総合探偵事務所顧問との肩書きもある。ここにも“探偵”が出てくる。なんとも奇妙な符号ではないか。

〈参照:THE NEWS|HP〉

〈参照:日本総合探偵事務所|会社概要〉

 もし仮に、筆者の自宅周辺に出没した探偵事務所の調査員と思しき不審者や『THE NEWS』等の当該記事掲載に菅原議員が関与していたとすると、公人としての倫理性が問われる事態だ。

◆カルト団体と同様の策動と攻撃性か

 筆者は長年に渡りカルトと指摘される諸団体への取材を行ってきた。その過程では、当該団体の関係者から尾行され自宅や家族関係などの個人情報を探られたり、拉致予告を受けるなど脅迫されたことも多々ある。直接、暴力を奮われたことも一度ではない。筆者個人はそれなりの覚悟を持って取材・言論活動を行っているが、同居する家族を護るために個人情報は極力公表していない。

そんな中で、取材者の住所地を執拗に告げるなど脅迫めいた言葉を発したのが、これらの「カルト」団体関係者ではなく国会議員であったことに驚きを禁じ得ない。

菅原議員の元秘書はこう証言する。

「正当なことを言ってきているメディアの取材からはいつも逃げ回っていたけど、ただ攻撃はしないというだけの話」

後ろ盾のないフリーの記者には攻撃を仕掛けてくるということなのか。

◆菅首相は見放していない

師事する菅義偉官房長官が総理総裁の座に上り詰めたことに便乗し、その関係性を殊更にアピールしている菅原議員。駅頭再開は次期衆院選での再選を目論んでのことではないかと選挙区内では指摘する声も挙がっている。

菅原議員は昨年9月、菅氏の推薦で約70人と言われる閣僚待機組の中から経産相に抜擢されたものの、翌月には公選法違反疑惑で辞任、顔に泥を塗る形となった菅氏との関係は一旦切れたと見る向きもあった。

しかし、菅氏は菅原議員を完全に見放したわけではなかった。大臣辞任翌月の昨年11月、菅官房長官は永田町の隠れ家的なレストランに梶山弘志新経産相と菅原前経産相を呼び出し、3人で会食を行っている。

国会議員の座にしがみつく菅原議員にとって、菅首相との関係が命綱だ。

◆3度目の駅頭直当て取材は無視、警察を呼んだ代議士

 25日、探偵使用疑惑を含め、THE NEWS及びベルダの当該記事への関与、統一教会との関係が菅首相からの手配だったのかなど、石神井公園駅前で駅頭を終えた菅原議員に改めて直当て取材を行った。

何も答えようとしない代議士、数多の疑惑について否定も肯定もしなかった。質問を無視する菅原議員は取材妨害を行う秘書の一人を交番に走らせ、警察官を呼びにいかせた。

 この日、激励の言葉をかけグータッチを交わす有権者もいたが、菅原議員の姿を見て険しい表情でスマートフォンを向け撮影する人の姿も確認できた。菅原議員が説明責任を果たさないまま、国会議員の座に留まっていることを快く思わない有権者は多い。

◆反省なき代議士への直撃取材映像を公開

今年6月15日、菅原議員は東京地検の起訴猶予処分を受け「心から反省している」などと自民党本部の記者クラブに宛ててコメントを出していたが、今回の一連の直当て取材における言動からは反省の姿勢など微塵も感じられない。

疑惑を追及され取材者の個人情報を連呼するという醜態を見せた菅原一秀前経産相。国会議員としての資質に改めて疑問符が付く。

大泉学園駅と光が丘での菅原議員への直撃取材の報道映像は下記で公開している。

〈参照:YouTube/ eito suzuki|菅原一秀前経済産業大臣、直撃取材に説明責任果たさず「脅迫」「嫌がらせ」と逆ギレ、疑惑を追及する取材者の個人情報を連呼〉

<取材・文・撮影/鈴木エイト(ジャーナリスト)>

【鈴木エイト】

すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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