人為的に進む温暖化。止めるカギは、土壌と樹木を大切にすることにあった

HARBOR BUSINESS Online / 2020年10月8日 15時31分

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◆人為的に進めてしまっている地球温暖化

 地球が温暖化していることは事実だろう。海水の温度が高温化して、台風が強烈なものに発達しやすくなった。今回の台風10号は「かつてないほどの」という形容詞が多用され、今年の夏は真夏日ばかりだった。

 それよりもっと心配なことがある。永久凍土のシベリアの氷はとんどん溶けて、その下に眠っているメタンガス(メタンハイドレート)が噴出しつつあるということだ。

 シベリアとメタンハイドレート溶融、そして温暖化と揃えば、2億5000年前に起こった地球上の生物の95%が絶滅したと言われる「大量絶滅期」を思い起こさせる。そのきっかけは、大地のマントル対流の地上への吹き出しだった。その熱の一部が地中に溜まっていたメタンハイドレートを燃やし、さらにその温度上昇がメタンハイドレートを噴出させたと言われている。

 これによって大気中の酸素濃度は30%から10%にまで一気に減少した。そのため、低酸素の状況でも生きられるように呼吸の仕組みを進化させた生物だけが生き延びた。

*このことはNHK番組「地球大進化」が詳しく取り上げている。

 地球の温度変化の要因は、外的な要因として惑星の衝突、宇宙空間からの放射線や宇宙線の到来、地球内部からの要因としてマントルの「スーパーブルーム」熱の噴出がある。

 地球の温度に影響が大きいのは、地球に届く太陽からの熱の変化と反射率(アルベドという)と、地球から宇宙に放出される赤外線熱を妨げる二酸化炭素やメタンなどの温室効果によるもの。気体がまさにビニールハウスのように、放出を妨げるためだ。

 私たちは今、この歴史的事実に新たに一つの事実を加えようとしている。大気中の温室効果ガスを人為的に進めてしまっているのだ。二酸化炭素による地球温暖化は確かに起こる。二酸化炭素のような気体が原因で地球温暖化が起こるのは間違いない。

◆排出の最大の原因は、既得権益に守られた企業

 それを日本で見てみると、巨大企業による超大口の二酸化炭素排出が全体の半分を占めていて、私たち一般家庭の排出など多くはない。だから家庭からの温室効果ガス排出抑制に大した期待はできないのだが、「二酸化炭素の排出だけが原因」とはしたくない。そう言った途端、解決策がなくなってしまうからだ。この排出だけにとらわれると、解決を遠ざけてしまうように思うのだ。

 しかし二酸化炭素以外の温室効果ガスの割合はそれほど大きくない。二酸化炭素が温室効果の75%を占めているからだ。実に4分の3が二酸化炭素によるものだ。だから地球温暖化と二酸化炭素の排出との間には、間違いない因果関係がある。

 しかもその排出の原因を突き詰めると、その排出源は既得権益に守られ、政治的にも大きな力を持つ大企業たちばかり。端的に言えば、「鉄鋼・セメント・電力」だ。それらは自らの利益を最大化させることを目的にした「企業」であり、彼らに改心してもらうよう頼むしかなくなってしまう。こうなると、利益獲得に狂信的な人々に改心させるような努力が必要になってしまう。

 これでは被害を受ける人々が、加害者に「お願いをする」しかなくなってしまう。これではやる気は起こらない。頭を下げるべきなのは被害者ではないはずだ。

◆家庭の部分だけなら、CO2削減も難しくはない

 二酸化炭素のことだけを考えていくと、こんな帰結になってしまう。もちろんその努力も必要だし、無駄なことではないかもしれない。しかし動く気がしなくなるのも事実だ。そこで、なるべく早い時点でも解決に向けて必要なことをしたいと思うのだ。

 第一には、私たちが二酸化炭素排出に関わってしまっていることからの離脱だ。生活の中で電気を膨大に消費していないか、車を通じてガソリンを消費しすぎていないかと点検してみる。地球の中で、森林や大地、海洋の生物たちが二酸化炭素を吸い取ってくれている。

 その吸収量を考えれば、私たち一般家庭が地球温暖化を起こさないレベルにするためには平均消費量の45%を減らせばいい。具体的には標準的な消費から、家電製品を省エネなものに変え、燃費の良いクルマに乗り換えることで達成できる。こうしたように、家庭の部分だけなら個人が解決するのは困難ではないだろう。

 さらに、都会では公共交通機関が発達しているから、それをなるべく用いるようにすればいい。さらに住居にも家具にもなるべく木材製品を用いて、長く使うならさらに減らせる。しかしそれは排出を減らす努力であって、二酸化炭素の吸収に直接関わることではない。

◆海の中よりも森林のほうが、効率的に炭素を蓄積できる

 なんとか二酸化炭素の吸収に直接関わることはできないだろうか。そこで再び歴史を遡って、何が二酸化炭素の吸収に大きな役割を果たしたのかを調べてみた。

 海洋中のサンゴ礁のようなストロマトライトが、シアノバクテリアとともに大気中の二酸化炭素を減らして酸素を増加させた。しかし圧倒的に大気中の酸素を増やしたのは森林だった。海中の炭素を減らしても、それが海中で滅びるときに炭素を使ってしまう。

 ところが陸上では滅びて炭素を蓄積しても、土中に蓄積されてすぐには分解されない。その結果、森林の土壌には森林本体の5倍の炭素が蓄積されるようになった。海の中より陸上の森林の方が多くの炭素を効率的に蓄積できるのだ。

 そこでお勧めしたいのが、森林の手入れだ。樹木は言うまでもなく二酸化炭素を吸収して育っていく。それを健全に育てていけば、土壌は樹木の5倍も二酸化炭素を貯蔵してくれる。それらの土壌や樹木に吸収してもらうことは、大気中の二酸化炭素をそれだけ減らすことになる。

◆野菜を育てることで、大気中の二酸化炭素を減らせる

 それから、野菜を育てるのはどうだろう。野菜もまた、大気中の二酸化炭素を減らし、土壌中の微生物を通じて炭素を土に蓄積させていく。さらには土に「炭」を通じて直接含ませてみてはどうだろう。「バイオチャー(※)の作り方」などで、その作り方はたくさんYouTubeなどに上がっている。

(※)農業廃棄物、木材廃棄物、森林廃棄物、動物の糞尿などの廃棄物の、制御された加熱によって得られる木炭。土壌改良などに使用される。

 私たち人間自体が微生物から進化してきたように、そこには無理のないつながりがある。農薬を使えば微生物も殺してしまう。化学肥料を使えば植物と微生物のつながりを妨げる。

 人体もそうだ。生物の定理の一つに、「個体発生は系統発生を繰り返す」とする説がある。私たちが生まれてくるまでに、母体の中で魚のようになったりネズミのようであったりするのは、私たちヒトの「進化の歴史」を繰り返しているからだ。その中の一時期の生物に農薬が害を及ぼすなら、母体の中のその時点の生物にも影響を及ぼすのだ。

 そう考えると、私たちのしていることは意外と罪深い。毎日食べているものの中に「系統発生する生物」に害になるものはないのか。薬品は、飲み物は? 添加物や着色料、芳香剤や洗剤にも害があるのではないか。

 中でも「人間に対しては毒性が少ない」と訴えて、1990年頃から使われ始めたネオニコチノイド農薬の被害は深刻だ。世界中でミツバチを殺して受粉できなくさせたことが有名だが、人間に対しても多くの被害を与え、宍道湖のウナギを絶滅近くまで減らしてしまった。

 しかもこの農薬は水溶性だから、最終的には必ず水に流れ出る。海に流れ出たネオニコチノイドが、エビやカキにも影響していることまで明らかになっている。こうして生き物の生命を奪うことは簡単だが、それが何に役立っているのかはほとんど何も知らない。

◆「全海洋蒸発」「全地球凍結」という、地球の大胆な変動があった!?

 ちょっと地球レベルでの歴史を遡ってみよう。地球はほぼ46億年前に誕生した。そこに生命たる微生物が誕生したのはそれから6億年も後、38億年前のことだった。それまで6億年も生命は存在しなかったのだから、よほど奇跡的なことが起きたに違いない。

 その後、地球には「全地球凍結」というすべて凍りつく事態があったり、海洋がすべて干上がったりしたこともあった。この「全海洋蒸発」は巨大隕石が衝突した際に薄皮である地球の地殻がめくれ上がり、その下の高熱のマントルによって「地殻津波」が起こって、それが海洋の水分をすべて蒸発させたらしい。

 およそ40億年前の生命誕生以前の原始地球に起きたと考えられている。生物が生まれたのはその後だ。その後も巨大ではない隕石の衝突は起きている。たとえば恐竜を絶滅させたのは隕石の衝突による寒冷化と言われるが、生命すべてが滅んだわけではない。

 そして「全地球凍結」が、約24億5000万年前から約22億年前の氷河時代の最終期と、原生代末期の2つの氷河時代(約7億3000万年前~約6億3500万年前)に起きたとの説がある。地球表面全体が凍結するほどの激しい氷河時代が存在したと考えられている。

 これは「スノーボールアース」と呼ばれている。その説が出てくるまでは、そんなことは一度もなかったものと考えられていた。灼熱の海洋蒸発状態から徐々に冷えて、温暖な気候の時期と、寒冷な気候の時期、いわゆる氷河時代を経ながら現在に至っていて、この間に地球全体が赤道に至るまで完全に凍結したことは、一度もなかったと考えられてきた。

 ところが地球にはもっと大胆な変動が起きていたようなのだ。もし「地球全体が凍結」したならば、地表はすべて白い氷雪で覆われてしまい、太陽光エネルギーの大半を宇宙空間へ反射してしまって、再び暖かくなることはないと考えられてきた。すると今の私たちなど存在できないものと考えられてきたのだ。

 地表温度は、太陽光線が当たって温められる一方で、宇宙空間へ熱エネルギーを放射して冷えるという「受け取るエネルギーと宇宙空間へ放散されてゆくエネルギー」のバランスで決まる。放散される熱エネルギーが温室効果ガスに邪魔されたり、邪魔するものが少なくなりすぎたりすれば、地球自体の地表温度が変わるのだ。

「全球凍結」の状態は、海が凍りついて二酸化炭素をほとんど吸収できず、火山から放出された二酸化炭素が大気中に蓄積した。このため、二酸化炭素の濃度は約2000年間かけて最終的に現在の400倍程度に達したと考えられ、それによって凍結状態を脱したと考えられている。

◆海洋はすでに限界だが、陸地はまだまだ二酸化炭素を吸収できる

 現在の地球温暖化自体を信じたがらない人には、「温暖化も寒冷化もそれほどではなかった」と思いたがる人たちが多いように感じる。地球は、実際はもっとダイナミックに変動してきたのだ。

 例えば地球は、他の太陽系の惑星と際立って違っている。海洋があり、緑があり、酸素が豊富に存在する大気で、二酸化炭素量が極めて少ない。この大気の組成自体のおかげで、生物が生み出された。

 大気中の二酸化炭素は植物に吸われ、光合成によって生まれた高濃度の酸素で大気は満たされた。酸素がふんだんに生まれたことから、太陽の紫外線と反応してオゾンとなった。オゾン自体は生命にとっては有害だが、高層大気に広がっていって有害な紫外線から生命体を保護した。

 この連なりの中に私たちの生命はある。そこでもう一度、現在の地球温暖化の問題を振り返ってみよう。今の地球上で起きている異常気象の問題は、化石燃料の使いすぎによる二酸化炭素放出量の増加で説明がつく。

 二酸化炭素の大気中の滞留が問題なのだから、それを吸収してもらうのは海洋と陸地しかない。しかし海洋はすでに、場所によっては二酸化炭素の吸収過剰によって海水が酸化している。酸化した海水が貝など甲殻類の殻を溶かし始めてしまっているのだ。これ以上、二酸化炭素を吸収することはできない。そこで残るのは陸地だけなのだ。

 陸地の微生物は、炭素をまだまだ吸収できる。陸上の樹木と共生しながら土壌をつくれるのだ。それが大気中に増やしすぎた二酸化炭素にとって安住の地なら、その妨げになることだけはやめよう。森林を利益のために燃やしたり、農業生産のために土壌微生物を殺したり、痛めつけたりするのはやめよう。

◆土壌と樹木の共生関係を学べば、もっと早く解決策が見つかる

 そもそも「土壌」という言葉自体に、生物と植物が共生しているという意味が込められている。他の惑星のように生命のいないところは「土」しかなく、豊かな「土壌」は生めないのだ。

 地球はヒトという単一の種のせいで、育ってきた大気も土も壊されようとしている。その解決策は「土壌と樹木」にしかないのだから、もっと気をつけて扱わなければならない。大切なのは土壌を作り上げた樹木と微生物との共生関係だ。

 それを壊すような開発も農法もやめよう。共生関係を学べば、もっと簡単に解決策は見つかるはずだ。二酸化炭素を排出することで金儲けをしている人たちは、確かに最低だ。利益に目がくらんでいる人たちをまともに覚醒させようと努力するよりも、もっとできることはたくさんある。

「土地と樹木と微生物のために」汗を流すほうが有益だとは思わないか。少なくともそれらのために努力することのほうが、ずっと気持ちよく働けるではないか。

【「第三の道」はあるか 第5回】

<文/田中優>

【田中優】

1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。 著書(共著含む)に『放射能下の日本で暮らすには? 食の安全対策から、がれき処理問題まで』(筑摩書房)『地宝論 地球を救う地域の知恵』(子どもの未来社)など多数

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