予算10億円の日本学術会議は行革対象、1兆円の辺野古基地建設はスルー。異論排除、独裁的体質の菅政権

HARBOR BUSINESS Online / 2020年10月13日 8時31分

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河野太郎行革担当大臣

◆10億円の日本学術会議は「行革対象」で、1兆円の辺野古埋め立ては聖域扱い

 日本学術会議問題で「異論排除で国策ゴリ押し」の姿勢が露わになった菅義偉首相が、新内閣で “行政改革の斬り込み隊長役”として抜擢したのが河野太郎行革担当大臣(沖縄・北方領土担当も兼務)だ。9月16日の政権発足直後に菅首相は「河野には、俺がやりたいことをやってもらおうと思う」「俺はつくる。ぶち壊すのは河野にやってもらう」と強調した。

 すると、懐刀として期待された河野大臣はすぐに動き出した。10月9日の会見で、学者6名の任命が拒否された日本学術会議を行革対象にすることを表明。「どれくらいサポートする事務局の人員が必要なのか見ていく」などと述べて、予算や人員の妥当性を検証する考えを明らかにした。

 しかし、河野大臣は年間予算が約10億円の日本学術会議を「聖域なく見ていく」と強調する一方で、1兆円の浪費リスクのある「辺野古新基地移設(埋め立て)事業」を聖域扱いにしている。

 河野大臣は9月19日の沖縄訪問で玉城デニー知事から「辺野古新基地埋立(移設)の断念」を含む要望書を受け取ったというのに、面談でも会見でもそのことには一言も触れなかったのだ。

◆河野大臣は「権力迎合型の非合理主義者」

 会見終了直後に「大臣、辺野古の見直しについて一言。『地震で壊れる欠陥基地』と言われていますが、行革の対象外なのか。国策はそのまま進めるのか」と聞いても、無言のままエレベーターに乗り込んだのだ(10月8日の筆者記事「菅首相・河野大臣を直撃。『異論を排して国策を強行する』姿があらわに」参照)。

 総事業費が約1兆円(沖縄県の試算では2兆5500億円)の辺野古埋め立て計画は、軟弱地盤が見つかって「地震で護岸が壊れるリスクがある」と専門家が警告。欠陥基地建設のために税金をドブに捨てることになる恐れがあるのだ。

 国策に異論を唱える日本学術会議にはメスを入れるが、菅首相がゴリ押しする国策の無駄遣いには目をつぶる河野大臣は「権力迎合型の非合理主義者」と呼ぶのがぴったりなのではないか。

◆任命拒否された学者の一人・岡田正則教授は、辺野古埋め立てに異論を唱えていた

 税金投入額が辺野古埋め立てよりも桁違いに少ない日本学術会議を行革対象にしたのはなぜか。9月17日付『毎日新聞』は、イージス・アショア配備中止を主導した河野大臣を「『無駄撲滅』に心血を注ぐ合理主義者」と称賛したが、二度目の行革担当大臣になった途端に「異論排除で国策ゴリ押し」という菅首相の“下僕的懐刀”に変節したのではないか。

 今回任命を拒否された6名の学者は、安倍政権が進めてきた安保法制・共謀罪・特定秘密保護法の重要法案や、辺野古埋め立てなどに異論を唱えた人ばかりだ。

 行政法が専門の岡田正則・早稲田大学教授は、辺野古埋め立てのために安倍政権が行政不服審査法(制度)を利用したことに対して「立法者意思を踏みにじる使い方」「法令に適合しない工事を止めさせることは、(沖縄)県の責任として当然に行うべき事柄である」と国を批判する一方、基地建設見直しを求める沖縄県にエールを送っていたのだ。

 この頃、玉城知事も安倍政権の対応を批判。2018年10月には、この問題を担当する謝花喜一郎・沖縄県副知事が野党合同ヒアリングに招かれ、「地方自治の破壊」と訴えてもいた(2018年11月6日の筆者記事「辺野古基地建設強行は『地方自治の破壊』。謝花喜一郎・沖縄県副知事、怒りの訴え」参照)。

◆「犬猿の仲」の菅首相も小池都知事も、独裁的姿勢では似たもの同士

 官房長官時代から菅首相は、岡田教授をはじめ国策推進の妨げになる学者を“ブラックリスト”に記載、今回の任命拒否につながったのだと思われる。2017年秋の総選挙で「希望の党」を設立、安保法制と憲法改正を踏み絵に“リベラル派排除(公認拒否)”をした小池百合子・東京都知事と、国策に異論を唱えた学者6名の任命拒否をした菅首相が瓜二つに見えてくる。

 公認権をふりかざした独裁的党首の小池知事には「女ヒトラー」「緑のたぬき」という異名がついたが、「異論排除で国策ゴリ押し」の姿勢が露わになった総理大臣には「和製ヒトラー」「秋田のたぬき」と呼ぶのがぴったりだ。「犬猿の仲」とされる二人だが、独裁的姿勢と変身術が得意な点では似た者同士といえる(『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』参照)。

◆政府に都合のよい意見だけを聞くのは、将来の世代に対する冒涜

 10月2日の野党ヒアリング後の囲み取材で、任命拒否に関する筆者の質問に対して岡田教授はこう答えた。

「人事を通じてイエスマンで行政を固めようと。行政の外側(日本学術会議)もそういうようにしようということかも知れませんが、それは将来の日本のとって非常にマイナスだと思うのです。いろいろな考え方でいろいろな提言をする機会を潰して、今の政府に都合がいいことしか耳に入らないようにするのは、将来の世代に対するたいへんな冒涜だと思います。

 (菅首相に一言との問いに対して)やはり日本の学術のためには、日本学術会議をきっちりと支えて、そしていろいろな意見を聞いていただきたい」

 任命問題が発覚して、すぐに野党は合同ヒアリングを発足させた。10月2日・6日・9日と頻繁に開いて菅政権を徹底的に追及する構えだ。日本学術会議の任命問題をめぐる与野党の攻防は、10月26日の臨時国会召集前から激しさを増している。今後の動向が注目される。

<文・写真/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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