ロボットが「痛み」を感じて自己修復する時代がもうすぐそこに…。シンガポールの大学が開発に成功
HARBOR BUSINESS Online / 2020年11月9日 8時32分

PHOTO via NTU
◆痛みを感じて自分で治すロボット
シンガポール・南洋理工大学(NTU)の研究チームが、痛みを感知し、損傷した際に自ら処置を可能とする人工知能(AI)およびロボット工学技術を開発することに成功したと報じられた。
NTUの研究チームは、開発した人工知能およびロボット技術は、人間の脳細胞のように多数の微細なセンサーノード(sensor nodes)で構成されていると説明する。併せて、ロボットの皮膚を通じてどのような力が加えられたか、細分化して認知することができるとする。これは、仮に衝撃が加えられた場合、他のロボットより5〜10倍も高速に状況を把握することができるというものだ。さらに同AIが搭載されたロボットは、伸縮性に優れたイオンゲル(iongel)などの素材を常に保有し、皮膚や機能に損傷が発生した場合、人から助けを得なくても自ら処置が可能であるとも説明されている。
◆決め手となった「ミニ・ブレイン」
NTUのArindam Basu教授は、海外メディアのインタビューに対し、過酷な環境で人間のように働くことができるロボット開発に多くの努力を注いできたと語っている。
AIチップ・ニューロモピック(Neuromorphic)の専門家であるBasu教授は、ロボットに搭載できる「ミニ・ブレイン」を開発するために、電子部品の数を削減し、必要な配線装置や回路も最小限に抑えたと説明している。
ロボットの皮膚感覚情報を伝達処理するためには、中央処理装置(CPU)から周辺部にいたる膨大な量の情報を処理する装置が要求される。多くの研究費用がかさみ、これまで開発が躊躇される要因としなってきた。そこでNTUの研究チームは新しいアプローチを試みた。情報処理装置を最小化し「ミニ・ブレイン」として役割を果たさせるというものだ。
◆強い衝撃を受けた時はロボット自ら対応可能!
研究チームは神経構造と類似したセンサと回路、テックタイル(tactile)装置を使用し、様々な種類の衝撃を細分化して認知できるよう努めた。強い衝撃が起こった際には、ロボットアームなどを使ってロボット自ら対応できるようにした。なかでも、自己処理・修復機能に特に関心を傾け、人の神経組織に似た侵害受容器(nociceptors)を実現するために新たに開発した「メモトランジスタ」(memtransistor)を採用したとしている。
強い衝撃で皮膚や内部機械装置が損傷した際、インテリジェント半導体であるメモトランジスタが状況判断し、状況に対処できるように指示を出す。その後、ロボットが保有されているイオンゲル素材などを活用して、破損した部位を治療できると説明されている。
これにより、フォールトトレラントシステムの適応性を拡大することができるという。フフォールトトレラントとは、システムの一部が故障しても、その部分を自分で矯正し正常な機能を維持する技術だ。
◆いずれは厳しい環境でも自分で治しながら作業できるように
論文執筆者であるとRohit Abraham John教授は、今後さらなる実験を通じて、ロボットが様々な種類の衝撃に対処できるようマニュアルを確保していくと発表した。教授は、自己回復機能に関連するノウハウが蓄積されれば、厳しい環境の中でもロボットが自ら損傷を治療しながら作業を継続することができる可能性が拓かれ、人間とのコラボレーションを拡大することができるとしている。
NTUの今回の研究結果は、既存のプログラム化されたロボットに、人間のような柔軟性を追加できる重要な技術として評価されている。
<文/ロボティア編集部>
【ロボティア編集部】
ロボティア●人工知能(AI)、ロボット、ドローン、IoT関連のニュースを配信する専門メディア。内外の最新技術動向やビジネス情報、ロボット時代のカルチャー・生活情報をわかりやすく伝える。編集長は『ドローンの衝撃』(扶桑社新書)の著者・河鐘基が務める。
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