10万台が爆売れした電気自動車の実力とは? 中国産・45万円の「宏光ミニEV」に乗ってきた!

HARBOR BUSINESS Online / 2020年12月27日 15時31分

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宏光ミニEV

 中国の激安EVが現地で爆売れし、日本でも話題になっている。中国製は「安かろう悪かろう」が常だが、乗り心地はどうなのか。中国在住のライターが試乗してみた!

◆爆売れ中の「宏光ミニEV」

 東京都は先頃、’30年までにガソリン車の新車販売を禁止する方針を明らかにした。経産省の「’30年代半ばまで」から一歩踏み込んだ形で世間を揺るがせた。こうした流れのなか、普及が期待されるのは電気自動車(EV)だ。だが、国内のEV価格は高止まりのままで、課題は多い。

 一方、“世界一のEV市場”である中国では今、激安の小型EVが爆売れしている。米ゼネラル・モーターズ(GM)の中国合弁メーカー・上汽通用五菱汽車が7月末に発売した「宏光ミニEV」だ。エアコンなしで航続距離120㎞の最安モデルがなんと2万8800元(約45万円)と驚きの価格で、日本でもSNSで大きな話題になっている。

 宏光ミニEVは’20年11月の販売台数で米テスラを抜いて1位に(新エネルギー車カテゴリー)。’20年の総販売台数は10万台を超えることが確実視されているのだ。世界中から注目を集めているこの車だが、果たしてその実力はどうなのか。中国在住のライターが試乗を体験した!

◆車体や装備は安っぽいが居住性は悪くない

 夜9時すぎ、メーカーのHPから試乗予約をする。すると、5分後にディーラーの営業担当から電話が。日本ではありえないクイックレスポンスだ。当初、テキトーな対応ぶりだったが、記者が日本人であることを告げると、「ジャパニ~ズ、お話しできて光栄です!」と態度が一変したのだった。

 予約日に広州市内のディーラーを訪れ、実物と対面。2人乗りかと思うほどのコンパクトさだ。全幅は1.4mで日本の軽自動車と変わらないが、全長は2.9mと軽自動車より50㎝ほど短い。ホントに4人も乗れるのかといぶかったが、後部座席使用時はトランクがつぶれる仕様になっている。

 中に入ってみる。居住性は想像していたよりも悪くない。硬めのシートは新幹線のシートのような座り心地で、近距離の運転には問題ない。運転席には十分なスペースがあり、さほど窮屈さは感じなかった。

 後部座席はさすがに狭く、飛行機のエコノミー席のようだが、むしろ後部座席にこれほどのスペースを確保できたことに驚く。2ドアで、後部座席には前部座席を前に倒して乗り込む。内装はプラスチックで統一されており、どこを触ってもカチカチ。ドアの取っ手やサイドブレーキもプラスチックで、安っぽさは隠せない。

◆走行は予想外の快適さ

 ひと通り見終わったところで、いよいよ運転へ。価格からまったく期待をしていなかったが、大きく裏切られるほど乗り心地は快適だった。サスペンションは硬めだが、車体が800㎏程度と軽いため、ブレーキ時の揺り戻しは大きくない。中国では当たり前のデコボコ道を走っても、振動は小型車と変わらないレベルだ。

 時速60㎞での走行。ガソリン車より加速が鈍いものの、ストレスを感じるほどでもない。停車も想像以上に滑らかでスムーズだ。モーターからは「ウー」という低い音が聞こえるだけで、普通のEVと音は変わらない。ただボディの材質や密閉性を落としているようで、走行音や外の騒音は比較的大きく聞こえてきた。

 モデルはエアコンなしの45万円の車種に加え、エアコン付きと、航続距離が約40㎞長いモデルの3種類がある。フルスペックの最上位モデルでも約60万円なので、EVの中では破格といえる。

 気になる充電環境だが、急速充電には対応しておらず、下位車種で6時間半、上位車種は9時間かかる。家庭用電源からも充電可能で、充電設備はメーカーが無償提供してくれるという。ただし充電設備は駐車場に設置しなければならず、集合住宅が中心の都市部ではハードルが高そうだ。

 メーカーは宏光ミニEVを「代歩車(足代わりの車)」と位置づけており、長距離移動を想定していない。日常の買い物や子どもの送迎などの足代わりとして、郊外や地方都市に住む若者や高齢者を中心に売れているという。顧客のニーズと各社のラインナップの空白をうまく突き、価格を低くしたことがヒットの最大要因だろう。

◆格安小型EVは日本でも普及するか

 日本でも小型車へのニーズは根強いがEVとなると高額だ。宏光ミニEVならその課題を解決してくれそうだが、日本上陸の可能性はあるだろうか。自動車評論家の小沢コージ氏は否定的だ。

「日本はプライドがあるので輸入を許可しないでしょうし、仮に入ってきたとしても、ユーザーは心情的に受け入れないのでは。世界的メーカーである韓国ヒュンダイも、乗用車部門は日本から一度撤退していますからね」

 ただし、安価なEVが入ってくる可能性がないわけではない。

「日産やホンダは、中国専用ブランドのEVを合弁相手と現地で生産しています。日本メーカーであればユーザーも受け入れやすいので、ある程度安いEVが中国から入ってくる可能性はあります」

 そうなれば競争が生まれ、国産EVも価格が下がるかもしれない。小型EVは欧州など世界中のメーカーが開発中で大きな潮流となりつつある。小型EVの普及には「政府による補助金の額がカギになる」と小沢氏は指摘する。

 政府の環境対策への本気度が試されそうだが、手厚い補助金さえあれば、日本でも50万円を切るEVが登場するかもしれない!?

◆小型EVは今後、トレンドになる

 小型EVの開発が世界的に活発になっている。グループPSA(プジョー・シトロエン)やFCA(フィアット・クライスラー)などの欧州メーカーほか、韓国の起亜自動車、そして我が国ではトヨタ自動車なども販売を予定している。

▼トヨタ(名称未定)

’19年の東京モーターショーで公開された2人乗りEVで、’21年の発売を予定している。全幅1.2m・全長2.4m。充電時間は5時間で、航続距離は100㎞。価格は未定。

▼シトロエン「AMI」

’20年に発売された2人乗りEV。充電時間はわずか2時間で、航続距離は100㎞。最高時速は45㎞。価格は約76万円とお手頃でフランスでの販売は好調。日本での発売は未定。

▼KIA(名称未定)

早くから小型EVを開発してきた韓国・起亜自動車(KIA)は、シトロエンAMIに対抗する街乗りEVを開発すると発表。レンタルやサブスクモデルの導入も検討しているという。

<取材・文・撮影/太田基寛 大橋史彦>

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