神奈川県警の「犯罪防止キャンペーン」協力のオープンハウス、特殊詐欺容疑で社員2人が逮捕されていた

HARBOR BUSINESS Online / 2021年1月5日 8時32分

写真

オープンハウス本社ビルが入居する高層ビル(東京都千代田区)

◆公表されなかった逮捕された2人がオープンハウスの社員だったこと

 不動産大手オープンハウスの現職営業社員2人(現在はすでに免職)が、特殊詐欺をはたらいたとして詐欺・窃盗の罪で起訴され、現在東京地裁で公判中だ。同社は2019年から2020年にかけて神奈川県警との協力による「振り込め詐欺防止キャンペーン」を実施。こともあろうに、被害防止を呼びかけた大企業の従業員が、犯行に加担した容疑で逮捕されるという前代未聞の事態になっている。

※特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させる犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺盗(窃盗)を含む。)のことです。(警視庁ウェブサイトによる説明)

 社員逮捕が発覚したのは2020年6月15日、連続振り込め詐欺事件の容疑で男性3人を逮捕したと警視庁捜査本部が発表したとのニュースだった。発表によれば逮捕者は3人。松本和義、小山龍耶、北野映喜の3氏。

 この中の北野氏がオープンハウス上大岡営業センター所属の営業マンだ。千葉県内の高齢者にウソの電話をかけて銀行の通帳やカードをだまし取り、それを使って金を盗んだ詐欺と窃盗の容疑がかけられている。

 これに続いて、7月30日には4人目の容疑者として林健二氏が逮捕される。彼もまたオープンハウスの現職社員だった。保土ケ谷営業センタ-に所属していた。千葉県内の別の高齢者を狙い、通帳・キャッシュカードをだまし取る手口で現金を盗んだ詐欺・窃盗の容疑である。

 北野、林両氏がオープンハウス社員であることは、いっさい公表されていない。警察は2人の職業を「会社員」と発表し、新聞やテレビも「会社員」とだけ伝えた。だが、2人と面識のある顧客の目はごまかせなかった。

 オープンハウスは営業社員の顔写真や経歴、自己紹介文をホームページで公開していて、北野氏が逮捕されたときはまだ彼の顔がホームページに載ったままだった。林氏の紹介ページは逮捕時には削除ずみだったが、逮捕・連行される様子がテレビ報道された。それを見た顧客は「まちがいない。北野氏も林氏もオープンハウスの社員だ」と断言した。

◆関連する5件の事件のうち、少なくとも3件に関与

 逮捕された4人は、その後詐欺および窃盗罪で起訴され、2020年10月から東京地裁で公判が始まっている。追起訴が繰り返されており、事件の全容はまだわからない。現段階までに起訴された内容によれば、関連する事件は5件。4人の被告人は全面的に起訴事実を認めている。5件の事件のうちオープンハウスの2人の関与がはっきりしているのは以下の3件だ。

①被害者A江さん(82歳、千葉県酒々市)/被害額87万6000円、通帳、キャッシュカード

②被害者B子さん(78歳、千葉県鴨川市)/被害額9万1000円、通帳、キャッシュカード

③被害者C実さん(84歳、茨城県取手市)/被害額97万円、通帳、キャッシュカード

 また4件目の事件として、千葉県香取市の80歳の高齢者から通帳とキャッシュカードを詐取し、金の引き出しには失敗した犯行。5件目の事件として、千葉市の80歳の女性から260万円をだまし取った犯行がある。これらは松本・小山氏のみが起訴されており、オープンハウスの2人の関与があったかどうかは現段階ではわからない。

 小山氏の自宅などから押収されたパソコンから被害者とみられる名簿が見つかっており、今後、被害の状況はさらに拡大すると思われる。

◆役場職員や銀行員になりすまして通帳・カードをだまし取る

 犯行は、被害者に電話をかけてだましたり、仲間に指示を出したりする「指示役兼かけ子」と、通帳などをじっさいに奪って現金を引き出す「出し子」に分かれて行われた。指示役とかけ子は主に松本・小山両氏が担い、出し子役をオープンハウスの北野・林両氏がやった。

 公判で判明したところでは、手口はおよそ次のとおりである。

 足立区内のホームセンター駐車場に停めた黒色プリウス車内やその周辺で、指示役の松本・小山氏は、長時間にわたって標的の高齢者に電話をかける。役場職員や銀行職員になりすまし、「保険金(または年金)の還付を受けるために通帳を新しくする必要があります。銀行員が通帳とカードを受け取りに伺います」などといったウソの話をしてだました。キャッシュカードの暗証番号も聞き出した。

 うまくだますことができると、「出し子」の北野・林氏らに携帯電話で指示を出す。指示を受けた北野氏らはそれぞれ単独で被害者宅を訪ね、銀行員らを装って通帳・カードをだまし取った。そして、それらを使って被害者宅付近の千葉銀行や千葉興業銀行、ゆうちょ銀行のATMから金を引き出して盗んだ。

 検察官冒頭陳述によれば、オープンハウス社員2人のうち、先に犯行をはじめたのは林氏だった。北野氏は林氏の勧誘で2020年3月中旬ごろに加わった。

 林氏の指南で「シグナル」という携帯電話のアプリケーション(履歴が自動的に消去されるチャット機能)をインストールしたり、駅のコインロッカーで犯行用の青色携帯電話を受け取るなどして準備を整え、偽名の指示役グループの指示に従ったという。北野氏に指示を出した指示役はいくつか代わっているとのことで、松本・小山氏のほかにもいた可能性がある。

 大企業の正社員として安定した収入を得ていたはずなのに、なぜ人生を棒に振るような犯罪に手を染めたのか。不可解というほかない。動機については、北野氏はガールズバー通いで浪費して金がほしかったという話も出ているが、詳しくはまだ不明だ。今後の公判で明らかにされるのを待つしかない。

◆無言を貫くオープンハウス、犯罪防止キャンペーンに協力していたのに……

 さて、北野・林両名の雇用主であるオープンハウスについてみると、無責任というほかない態度をとっている。東証一部上場企業としての社会的な立場を考えれば、社会に向けて説明する責任があるはずだ。だが、筆者の取材に対して徹底して「沈黙」を貫いている。社員2人が逮捕されたという最低限の事実についてすら何も答えない。

 さらにあきれたことには、オープンハウスは神奈川県警と協力して「特殊詐欺防止キャンペーン」をやっていたのだ。

 県警に対する情報公開請求で得た資料によれば、2019年12月に神奈川県鶴見区の住宅建築現場で、「電話で『キャッシュカード』と言われたら、もれなく詐欺です」と大書きした黄色のステッカーの貼付式を行っている。貼付式には県警から田上数仁・犯罪防止対策室長、オープンハウスからは中野宏一郎・鶴見営業センター長が出席したと記録されている。

 警察といっしょに特殊詐欺防止を呼びかけた当の会社の社員が特殊詐欺の加害者だったというのは、前代未聞の珍事だろう。オープンハウスだけでなく、神奈川県警にとっても失態にちがいない。ところが、神奈川県警もまた知らんぷりを決め込んでいる。同県警とオープンハウスのサイトには「特殊詐欺撲滅キャンペーン」の記事が掲載されたままだ。

■株式会社オープンハウス

 令和元年12月、株式会社オープンハウスは、「特殊詐欺被害防止ステッカー」を作製し、県内の新築現場等に貼付する活動を行うこととなりました。

 ステッカーには、県警が進めている「電話でキャッシュカードと言われたらサギ!!」のキャッチコピーを入れており、現場近くの通行人等への注意喚起を実施しています。

(神奈川県警察のウェブサイト「防犯CSR活動のご紹介」より)

■神奈川県警との取組み

 当社グループでは、分譲する住宅の周辺環境がより住みやすくなるように神奈川県警察本部と地域の犯罪抑止活動に取り組んでおります。

2019年12月16日には、オープンハウス鶴見センター センター長が、神奈川県警察本部犯罪抑止対策室長、神奈川県警絆大使「振り込まセンジャー」と共に、当社施工現場への犯罪抑止第一号ステッカーの掲出を行いました。〉

(オープンハウスのウェブサイト「オープンハウスグループの社会貢献活動」より)

「振り込まセンジャー」は、タレント・小島みゆ氏の協力を得て制作した防犯マンガのキャラクターだが、とことん馬鹿にされたものだ。なお、神奈川県警に電話で取材すると「記者クラブ以外には回答しない」(広報県民課)という「回答」が返ってきた。

◆オープンハウスに天下り? 神奈川県警は情報公開請求に回答せず

 それにしても、警察はどうして「特殊詐欺容疑者」を社員から出したオープンハウスに甘い態度しか取れないのか。あるいは……と思い、情報公開請求や有価証券報告書を通じて天下り状況を調べてみた。

 案の定、元近畿警察局長・櫻井勝氏が社外取締役に、栄元照志・元日野署長と氏名不詳の元警視庁職員がそれぞれ常勤顧問になっていた。神奈川県警は、再就職状況に関する情報公開請求に対して「存否を含めて回答できない」との回答だったので実情はわからない。

 ただ該当文書がなければ「不存在」と回答すればよいだけだ。わざわざ存否を拒否するというのは、同県警からも天下りがいるからではないかと筆者は推測している。この情報公開“非開示”処分については現在、異議申し立てを行っているところだ。

 大企業の不始末を、天下り利権にあやかる警察がかばう。公判を通じて浮き彫りになっているのは、そんな腐敗した風景だ。

<文・写真/三宅勝久>

みやけかつひさ●ジャーナリスト。ブログ「スギナミジャーナル」主宰。著書に『大東建託の内幕』『「大東建託」商法の研究』(ともに同時代社)など

【三宅勝久】

みやけかつひさ● ジャーナリスト、ブログ「スギナミジャーナル」主宰。1965年岡山県生まれ。フリーカメラマンとして中南米、アフリカの紛争地を取材。『山陽新聞』記者を経て現在フリージャーナリスト。著書に『「大東建託」商法の研究』(同時代社)など

×

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング