壊れ切ったアメリカの民主主義は彼らが激変させる!? 元ホームレスやパレスチナ移民もいる、AOCが「家族」と呼ぶ議員たち
HARBOR BUSINESS Online / 2021年1月12日 15時31分

BLM運動の活動家でもあり、元ホームレスで看護師のシングルマザーという経歴のコリ・ブッシュ議員(Photo by Michael B. Thomas/Getty Images)
トラブル続きの大統領選が終わったかと思いきや、トランプ・サポーターの暴挙で再び混乱に陥ったアメリカ。民主主義再生への道は前途多難だが、前回に引き続き、そんなアメリカの未来を担うプログレッシブ(進歩的)な議員たちをご紹介しよう。
◆AOCが家族と呼ぶプログレ議員たち
バーニー・サンダース議員、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)議員に続いて、変革への道を進むプログレッシブ議員たち。
前回はジャマール・ボウマン議員、イルハン・オマル議員を紹介したが、今回もAOCが「家族」と評する、期待の議員たちを解説していきたい。
◆売春合法化を推進
●アヤンナ・プレスリー
前回紹介したイルハン・オマル議員と同じく、「(アメリカが)嫌なら出て行けばいい」とトランプ前大統領から批判を浴びたのはアヤンナ・プレスリー議員だ。
マサチューセッツ州初のアフリカ系アメリカ女性の下院議員に選出されるなど、その存在自体がプログレッシブ・進歩的である彼女。その政策も、これまで触れられなかった分野に積極的に焦点を当てている。(参照:BOSTON GLOBE、FORBES)
たとえば、「性産業か性的虐待か? 下院議員プレスリーが、売春合法化の議論を積極化」と報じたのは、プレスリー議員の地元メディアである『ボストン・グローブ』だ。
同記事によれば、売春の合法化については、人身売買などを防ぐことができる、ほかの職種と同じように公的保護を受けられるようになる、路上で生活するLGBTQの人々の収入源を守ることができる、といったメリットがあるいっぽう、かえってそれらの問題が深刻化することも懸念されているという。
プレスリー議員の目的は、合法化することによって服役する人の数を減らし、経済的な格差に起因する差別を減らすことだが、この活動には賛否両論の声があがっている。
また、『フォーブス』は、多発している警官による暴行や殺害に対して、プレスリー議員が公務員の恩赦を禁止する運動を支援していることを紹介している。
売春も警察官による銃撃も、性や人種、経済格差や司法制度など、さまざまな問題が絡み合っているため、単純な解決策があるわけではない。しかし、そういった複雑な問題に対して、正義と平等を求めて立ち向かっていくことが、進歩するうえでは必要なのだとプレスリー議員は示している。
◆パレスチナ系初の女性議員も
●ラシダ・タリーブ
これまで紹介したプログレッシブ議員たちと同じくアメリカ民主社会主義者(DSA )に所属しており、パレスチナ系初の女性議員になったのは、ラシダ・タリーブ議員だ。(参照:POLITICO MAGAZINE、DETROIT FREE PRESS)
例に漏れず、トランプ前大統領から非難を受けた点も共通しているが、注目したいのはその行動力だ。
『ポリティコ・マガジン』の報道によれば、ヒスパニック系が多く暮らす地域では移民捜査局による違法な捜査が横行しており、こうした問題が話題となる前からタリーブ議員は反対運動を起こしていたという。
また、地元デトロイトで石油コークスの不法投棄が問題になった際は、自ら現場に出向き、ジップロックに証拠を集めて歩いたというから、文字通り「地に足のついた」議員だ。『デトロイト・フリー・プレス』で、タリーブ議員は彼女の政治姿勢について次のように話している。
「対立的であろうがなかろうが、私の公役へのアプローチは、家族のために戦うというものでした。私が対立的でなかったら、つまり敷地に不法侵入してサンプルを集め、自ら検査をしなかったら、河川から石油コークスを除去することもできなかったでしょう。州の指示に逆らって発見された『有毒ではない』ものを公表することが対立的であるなら、それをやるまでです」
まさに「忖度なし」のタリーブ議員。当選した際には、出身地であるパレスチナでも祝福されたというが、中東にルーツを持つことから、今後は世界情勢についても進歩的な変化をもたらしていきそうだ。
◆元ホームレスのシングルマザー
●コリ・ブッシュ
昨年、ミズーリ州で黒人女性では初となる連邦議員に選ばれたコリ・ブッシュ議員。「ブラック・ライヴズ・マター」(BLM)の活動家としても知られる彼女は、ホームレス経験のある看護師でシングルマザーという、まさに叩き上げの存在だ。
警察組織の刷新、皆保険、妊娠中絶の権利などは、ほかの進歩的議員たちにも共通する政策だが、特に注目されたのは軍事予算に関する提言だ。
「追加で軍事予算にまわされるすべてのお金は、公共サービスから奪われたお金です」
防衛費を削減し、公共サービスを充実させるべきだというのは、ブッシュ議員がかねてから主張していることだが、こうした「過激」な発言に対しては、トランプ前大統領の長男などから反対の声が噴出した。
地元ミズーリ州で新たな歴史を刻んだように、国政でも多くの既得権益や社会構造を変えられるか、ブッシュ議員からは今後も目が離せないだろう。
前後編にわたって紹介してきたプログレッシブ議員たちだが、多様なバックグラウンドを持ち、ゼロからキャリアをスタートさせ、30〜40代で国政にまで進出し、「アンタッチャブル」であった既得権益や社会構造にメスを入れる姿は、日本人の我々にも刺激になるはずだ。
ここ日本でも、そうした進歩的な政治家が誕生することを期待しながら、彼らの活躍を見守っていきたい。
<取材・文・訳/林 泰人>
【林泰人】
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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