実は日本でもっとも需要があった「北朝鮮美女カレンダー」、コロナ禍で異常事態に

HARBOR BUSINESS Online / 2021年1月15日 18時31分

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高麗航空カレンダー2020の表紙

◆北朝鮮外貨獲得手段の一つ、「カレンダー」にまつわる異常事態

 研究者や一部のマニアの間で冬の風物詩となっている北朝鮮カレンダー。その中でも北朝鮮美女が毎月を彩る「高麗航空」のカレンダーが人気ナンバー1だ。

 ところが、その人気カレンダーが2021年を迎えた現時点でもまったく入ってきていない。それどころが表紙デザインの写真すら確認されていない状況になっている。

 その理由は、新型コロナウイルス対策で中朝国境の封鎖が強化された影響で経由地である中国に1部も輸出されていないためだ。

 

 近年、北朝鮮カレンダーは年末になると日本でもメディアでも取り上げられて、“美女カレンダーで外貨稼ぎ”など刺激的な見出しで話題になっている。北朝鮮カレンダーは、掛け軸ような長方形のいわゆる壁掛けタイプのカレンダーが主体となる。

 2020年も過ぎ去ったので、購入者の楽しみを奪わないために記事等では公開しなかった昨年分の美女カレンダーも紹介していきたい。

◆北朝鮮カレンダーの需要があるのは日本!?

 中国北京の北朝鮮出先機関の関係者の話からすると、北朝鮮カレンダーの需要がもっともあるのは日本で、北朝鮮から海外向けに輸出される全北朝鮮カレンダーの半分以上の最終目的地は日本になっているようだ。

 日本は北朝鮮マニアが多いことに加えカレンダーを使う習慣があるので実用品と考えるからだろう。知る限りでは、中国には壁掛けカレンダーを使用する習慣は現在ない。中国最大のECサイト「淘宝網」で検索してもカレンダーは非常に少ない。需要がないということだ。

 そのため、中国では北朝鮮カレンダーは実用品よりも絵画のような鑑賞目的に位置づけで売られている。一方、日本では、以前ほど壁掛けカレンダーを使用する人は減っているものの、実用と観賞用を兼ねたような認識で購入ハードルが低いのだろう。

 

 ここ数年、高麗航空カレンダーを購入しているという三重県の男性は、「このチープさが一番の魅力だったのですが、今年は飾れなくて残念」と話す。

 確かにチープだが、これでも輸出向けは国内版と比べ上質な紙や吊り具が使われている。それでも実際の距離以上に長い旅を経て日本へ届くのでくたびれ感は否めない。

◆中朝国境閉鎖の煽りをうけて貿易量も激減

 昨年2月上旬に中朝国境は封鎖されて中朝貿易が大きく減っていると報じられている。

 北朝鮮からの『労働新聞』や『画報朝鮮』など定期刊行物を取り扱う北京の出先機関によると、4月までは数回、北朝鮮から輸出され丹東に入っていた。しかし、4月以降は8月までの5か月間で1回のみしか輸出できず多くの貨物が北朝鮮側の新義州税関に山積みになっているとのことだった。

 9月末に中朝国境封鎖がさらに厳しくなりまったく輸出できなくなり、11月上旬には各取引先へ年内の入荷、各国への発送はできない旨の通知を出している。

 それでもカレンダーは、通常の定期刊行物とは別ルートで輸出されるらしく、数は減るが中国へ入ってくる見通しだったようだ。

 しかし、彼らが指す別ルートが空路なのか船便なのか、密輸なのか不明だが、そのカレンダーも11月末に年内出荷できないとの通知が出された。現時点でも連絡はなく、いつ美女カレンダーが入ってくるのか分からない。

◆中朝貿易の現状

 「世界保健機関(WHO)」は、いまだに北朝鮮の新型コロナウイルス感染者は0人と発表している。陸の国で感染者ゼロは北朝鮮とトルクメニスタンの世界2か国しかない(あくまでその国の報告ベースでの発表のため不思議ではない)。

 かたや輸出先である中国も新型コロナ感染抑制に成功したと表面的には振る舞っている。にもかかわらず、国境封鎖は秋以降、強化する一方となっている。

 中朝どちらが主導して防疫を強化しているのだろうか? 日本の識者は中国側が北朝鮮人によるハッカー犯罪に激怒し強化したとの見解を示していたり、丹東の貿易関係に取材すると北朝鮮側が国境警備を増員し過去最大級に強化し、新義州の密貿易関係者を一斉に処刑したなんて話も漏れ聞こえてきて恐ろしいなどの話があるなど、中朝どちらが国境封鎖を厳しくしているのか分からない。もしかすると、双方合意の元で周辺国を欺くために猿芝居を演じているのではと勘ぐりたくもなる。

 丹東の貿易商によると、北朝鮮側へ最小限の人員での貨物輸送を提案したが、一緒に人間が入国することに難色を示し貨物だけを送るように求めてきて交渉は決裂したという。

 現在、北朝鮮が輸入するときには、人民元先払いが原則となっているため中国側としては貨物だけ送ると代金を取り損なうリスクがあるので断ったのだろう。

 

◆研究者も注目する北朝鮮カレンダー

 北朝鮮カレンダーは日本の研究者も注目している。北朝鮮にとってカレンダーは単なる外貨稼ぎではなく体制宣伝も目的としているからだ。

 新しい記念日や祝日、どの月にどのような最高指導者の言葉が載せられているのか、紙など素材の変化などからも北朝鮮の現状を知ることができると「宮塚コリア研究所」の宮塚利雄代表は語る。

 「北朝鮮は昨年6月、韓国向けのビラとして1200万枚ものビラを刷ったと言い張ってましたが、そこで上質な紙を使い果たしたのかもしれません」(宮塚コリア研究所・宮塚代表)

 実際に作成したビラを韓国へ散布したという報道は確認されていない。紙不足に加え、コロナ禍で輸出が難しいことは秋頃から分かっていたので、21年の海外向けカレンダーは最初から作っていない可能性もあると宮塚代表は推察している。

 北朝鮮研究者が注目していた1月8日の金正恩氏の生誕日は、今年も平日扱いで特にイベントは行われていないようだ。その代わり、1月5日から行われていた党大会で金正日氏以来の党総書記のポストに就任したと発表されている。

 

<取材・文・写真/中野鷹>

【中野鷹】

なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID@you_nakano2017

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