極右、白人至上主義者から人気ミュージシャンまで デマに覆わせてはならない米国議事堂襲撃犯たちの素顔

HARBOR BUSINESS Online / 2021年1月16日 15時32分

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一連のテロでももっとも目立っていたジェイク・アンジェリ (Photo by Win McNamee/Getty Images)

 アメリカはもちろん、世界中を震撼させたトランプ支持者によるアメリカの連邦議会議事堂襲撃事件。ここ日本でも、一部の熱烈なトランプ支持者によって「アンティファによる成りすまし」「BLM運動のデモと同じ人物が参加している」といった極めて稚拙な陰謀論が沸き起こっているが、そのほとんどがすでにデマであると検証済みだ。

◆極右勢力・陰謀論者による計画的な襲撃

 では、実際にトランプに煽動され、議事堂を襲撃したトランプ支持者たちは、いったいどのような人々なのか? 前代未聞の民主主義への攻撃を受けて、アメリカでは襲撃犯の特定が進んでいる。

 たとえば、「ニューヨーク・タイムズ」は「キャピタル・ヒルの騒乱はソーシャル・メディアで計画されていた」との見出しで、議事堂襲撃が極右勢力、Qアノン信者、プラウド・ボーイズらによって計画的に行われたと報じた。(参照:The New York Times)

 「GabやParlerなどの極右が利用するソーシャルメディアサイトでは、警察を避けるためにどの通りに行けばいいのか、ドアをこじ開けるのに役立つ道具を持っていけばいいのかなどの指示がコメントで交わされた。少なくとも十数人が、議事堂の構内に銃を持ち込むことについて投稿した。

 議員たちに対する暴力と、連邦議会議事堂の建物を奪還するための親トランプ運動の呼びかけは、数か月間オンラインで渦巻いていた。Qアノンやプラウド・ボーイズといった少数派の運動を寵愛してきたトランプに先導され、これらの団体はソーシャル・メディアのネットワーク上で公然と組織されて、彼らの理念のために他者をリクルートしてきた」

 このように、今回の事件は一般市民の鬱憤が噴出した結果でもなんでもなく、トランプ大統領の発言をキッカケに、極右や陰謀論者、ヘイト団体などが組織した計画的な犯行だったわけだ。

◆デマ拡散をあと押しするネットメディア

 ご存知の方も多いだろうが、こうした状況を受け、FBIとDC警察は暴動の参加者に関する情報提供を広く呼びかけている。(参照:CNN)

 これだけの情報が信頼に足るメディアや当局から発信されているにも関わらず、アメリカや日本のトランプ支持者たちの多くが、「反トランプ派の成りすまし説」を信じているのは驚くほかない。厄介なのは、そうしたネット上の妄言を促進するようなメディアもあることだ。

 日本のトランプ信者がソースとして流布していた「ワシントン・タイムズ」(混同されがちだが、老舗メディアの「ワシントン・ポスト」とはまったく別物で、本サイトでも既報の通り、統一教会系のニュースサイトだ)も、そういったデマをバラ撒いたメディアのひとつ。

 「XRVision社による顔認証ソフトでアンティファが紛れ込んでいたことが発覚!」と根拠のない煽り記事を発表したが、その後、事実誤認があったとして謝罪に追い込まれた。(参照:The Daily Beast)

 XRVision社は『(ワシントン・)タイムズ』の記事は完全にでっち上げだと述べている。XRVision社の弁護士が発表した声明によると、XRVision社の顔認識ソフトウェアは、実際は2人のネオナチとQアノン支持者を特定したという。

 『2名の人物(ジェイソン・タンカーズリーとマシュー・ハイムバック)を、メリーランド・スキンヘッズと国家社会主義運動に所属していると結論づけました』と声明は述べている。『この2つはネオナチ組織として知られており、アンティファではありません。3番目に確認された人物(ジェイク・アンジェリ)は、Qアノンの宣伝をしていたことがある俳優です。繰り返しになりますが、彼もアンティファに所属しているとは確認されませんでした』

 トランプ信者のソースとなっているメディアがデマであることを認め、謝罪し、記事で取り上げられた顔認証ソフトの運営会社が「アンティファではなくネオナチ」と発表したにも関わらず、デマが収まる気配はない。

 これは連邦議事堂襲撃に限った話ではないが、厳しく精査されたファクトよりも、デマのほうが広がる範囲も速度も速く、かつ謝罪や訂正はそれほど話題にならないというのはとても危険だ。もはや世界中で当たり前となっているが、「(デマを)言ったもん勝ち」の状態には、何としても歯止めをかけなければならない。

◆参加者はネオナチや極右活動家だらけ

 それだけに、連邦議会議事堂襲撃に関わった人物は特定され、法律に則っとって裁かれることが不可欠だ。現在、大手メディアや当局によって確認されている襲撃犯には、次のような人々がいる。

 ジェイソン・タンカーズリー:ネオナチ団体、メリーランド・スキンヘッズの一員

 マシュー・ハイムバック:白人至上主義団体のリーダー

 ジェイク・アンジェリ:「シャーマン」の異名を持つQアノン信者の俳優

 アシュリ・バビット:議事堂で射殺された元空軍兵士

 リチャード・バーネット:ナンシー・ペロシ下院議長の執務室に侵入。銃規制反対派

 ティム・ジオネット: 極右活動家、SNSタレント

 ニック・オクス:極右活動家。プラウド・ボーイズ、ハワイ支部創設者

 ジェニー・カッド:テキサス州の企業経営者

 アーロン・モストフスキー:ニューヨーク州ブルックリンの判事の息子

 デリック・エヴァンス:ウェストヴァージニア州下院議員

 まさに「錚々たる顔ぶれ」だが、これらの人物はすでに訴追や退職に追い込まれており、連邦議会議事堂襲撃という犯罪行為の代償は、支持者たちからの「イイね!」だけでは済まなさそうだ。

◆議事堂への行進には人気ミュージシャンの姿も

 今回の襲撃に加担したのは、Qアノンやネオナチ界隈での「著名人」だけではない。過去には来日公演も計画された人気メタルバンドのメンバーも、その姿が議事堂襲撃に向かう行進で目撃されている。(参照:LOUDER、VULTURE)

 「昨日(1月6日)、ワシントンDCの連邦議会議事堂に侵入した、怒りに満ちた暴徒のなかで、ICED EARTHのバンドリーダー、ジョン・シェイファーが撮影された。(中略)ICED EARTHのギタリストであり、メインソングライターが、退陣するトランプ大統領の支持者と撮影されるのは、ここ数か月で2回目だ。(中略)7月の『メタル・サックス』隔離ポッドキャストでは、シェイファーは新型コロナウイルスが『深刻なパンデミックというよりは人々への心理的な戦争キャンペーンである』と主張し、政府のパンデミックへの対応に関して『信じられないほどの不正があった』と述べた」

 また、音楽メディアやファンから支持を集める、アリエル・ピンク、ジョン・マウスといったインディ・アーティストも議事堂襲撃の行進に参加したことが判明している。

 「ピンクは長い間、物議を醸しているミソジニスト、反同性愛、トランプ擁護発言で知られています。集会の数日前、彼は 『トランプに投票しろ』とツイートしました。ツイッターユーザーが彼の参加に気づいたあと、彼は選挙がトランプ氏から『盗まれた』という誤った陰謀についてもツイートし、集会を昨年夏のブラック・ライブズ・マターの抗議活動と比較しようとしました。

 一方、マウスは過去に彼の左翼的な政治観について語っており、『コップ・キラー』や 『ライツ・フォー・ゲイ』などの曲にそれが表れています。しかし、アダルト・スイム(大人向けの深夜放送局)の番組『ミリオンダラー・エクストリーム・プレゼンツ』に出演したことでも物議を醸しました。この番組は、制作者であるサム・ハイドのオルタナ右翼との関係を理由に中止されました」

 数千人とも言われる参加者全員を特定することは難しいかもしれないが、捜査の手が届くことに期待したい。皮肉になるが、それこそがトランプ大統領のツイートした「法と秩序」が成就する瞬間だということだ。

<取材・文・訳/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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