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低精度の抗原検査、入国者の体調確認は自動発信のLINEだけ? 水際防疫のザルさが恐ろしい

HARBOR BUSINESS Online / 2021年2月18日 8時32分

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pocketalbum / PIXTA(ピクスタ)

 2019年12月に中国・武漢で新型コロナウイルスの感染が確認されて約1年が経ち、早くも「イギリス変異株」「南アフリカ変異株」「ブラジル変異株」と、新たな変異株が次々に出てくるようになりました。厄介なことに、これらの変異株は従来のウイルスに比べて感染力が高く、さらには重症化するリスクも高くなっているのではないかと懸念されています。

 日本に変異株を蔓延させないためには、何よりも海外からウイルスが入ってこないようにする「水際対策」が重要になってくるわけですが、皆さんもうっすら気づいている通り、日本の水際対策は「ザル」としか言いようがありません。日本政府が「水際対策」のことを真剣に考えていないのです。

◆日本の水際対策は、今も「抗原定量検査」である

 海外から日本に入国する際、かつては「PCR検査」が行われていたのですが、検査の正確性よりも時間的な効率が重視され、「富士レビオ」の「ルミパルス」という商品が採用されるようになり、精度の高いPCR検査ではなく、精度という点では劣る「抗原定量検査」が行われるようになってしまいました。これだけ世界的にはPCR検査が一般的になっているのに、わざわざ空港検疫のような「絶対に見逃してはいけない」という場所で、精度の劣る検査が採用される意味が、さっぱりわかりません。

 PCR検査は、RNAそのものを見るのに対し、抗原定量検査はウイルスのタンパク質を見るため、PCR検査よりも少ないウイルス量で検査をすることができるとされています。ただし、検査の精度としてはPCR検査の方が高く、見逃してしまうリスクが高いため、変異株を止めるための「水際対策」には向かないはずなのです。

 当然、「これではまったく水際対策になっていないではないか」という声が出て、田村憲久厚生労働大臣は国会で「空港検疫をPCR検査にする」と発言していたはずなのですが、現場では今も「抗原定量検査」が採用され続けているため、このままでは日本にどんどん変異株が入ってきて、せっかく緊急事態宣言が出され、飲食店をはじめ、カラオケ屋さんやゲームセンターなどの娯楽施設、ホテルや旅館といった会社が苦しい思いをしながら頑張っているのに、こうした努力が台無しになってしまう危機的な状況になっているのです。今すぐ精度の高いPCR検査に切り替えないと、これからますます変異株が国内に蔓延し、日本経済に大きなダメージを与えかねない状況になっているのです。

◆言っていることとやっていることのギャップ

 先日、父親が入院したとの知らせを受け、ドイツから帰国した女性がいたのですが、その女性に日本の水際対策がどうだったかを尋ねたところ、衝撃の事実が判明しました。

 当初、日本政府の説明では、入国した人は14日間隔離され、3度のPCR検査を受け、陰性が認められて初めて、日本国内を自由に行動できるという話でしたが、実際はどうだったのかと言うと、海外を出国する際にPCR検査を受けていれば、日本では抗原検査のみで判断され、一応、14日間の自主隔離をお願いするものの、本当に自主隔離しているかどうかを確かめることはないというのです。つまり、真面目に隔離される人もいるかもしれませんが、多くの人が入国と同時に自由に行動していると考えられます。

 そもそも「抗原定量検査しかしない」というのには、大きな問題があります。抗原検査だと、精度が低いために、感染している人を見逃してしまうことはもちろん、飛行機の中で感染していた場合に、検査をされずに野に放たれてしまうことになるのです。この問題について、さっそく空港検疫の担当者に話を聞いてみると、「14日間の自主隔離があるので大丈夫だ」という答えでした。仮に飛行機の中で感染しても、14日間の自主隔離があるので大丈夫だというのです。

 しかし、そうだとすると、別の問題が生じます。14日間の自主隔離がほとんど徹底されていないのではないかという疑惑があるのです。そこで、空港検疫の担当者に、14日間の自粛隔離を徹底するために、どのような対策をしているのかを聞いてみました。すると、担当者は「入国した人には毎日連絡をして、体調などをチェックしている」と言ったのです。

◆入国者の体調を聞き取ることは不可能

 空港検疫の担当者が「毎日連絡をして、体調などをチェックしている」と言うので、知人にそのことを確認すると、入国した日に確認されたが、それから帰国の直前まで連絡をもらったことは一度もないとのことでした。しかも、その連絡というのは「LINE」で自動的に配信されてきたものだけで、人によってはメールの場合もあるそうです。つまり、職員が一人ずつ丁寧に確認しているわけではないということです。こうなってしまうと「ちょっと体調が悪くなってきました」という返信をしても、ちゃんと対応してくれるのかどうかが、ものすごく不安です。

 しかし、それこそ「LINE」で自動的に送るだけであれば、自動的に毎日送ればいいのではないかと思うのですが、その「LINE」の連絡さえ、入国した日と出国する直前の2回しか送られてこなかったというのです。

 それだけではありません。別のケースでは「症状があるか」を聞かれ、間違えて「はい」をタップしてしまったそうなのですが、自動的に「より詳しいご相談をされることをおすすめいたします」と言われただけで、何の連絡も来なかったそうなのです。幸いにも、この方は間違えて「はい」と答えてしまっただけなのですが、症状があると答えても、その後のフォローがないというザル加減。これはもうオペレーションそのものは破綻しています。

 実際、入国した人に連絡を取り、体調を聞くということは「物理的に不可能だった」と考えられます。というのも、2021年1月1日から1月21日までの約3週間で入国した人は約5万5000人もいました。空港の職員なり、保健所の職員なりが、毎日毎日、この人たちに電話をかけ、健康状態を確認することは不可能。つまり、ほぼ野放しの状態になっていたのです。

 これは「空港職員の気合いが足りない」という話ではなく、そもそも物理的に不可能な設計になっているため、表向きは全員をチェックしていることになっているけれど、その裏ではまったくチェックできていなかったということになります。設計そのものがザルになっているということです。

◆変異株は着実に日本に入っている

 山梨県では、2月12日にブラジルに渡航歴のある男性が、ブラジル型の変異株に感染していたことが分かりました。接触者1人が感染していたことも分かり、現在、国立感染症研究所で分析しているといいます。

 この男性はブラジルから帰国した際、検疫では「陰性」だったため、自宅で隔離生活を過ごしていたそうですが、2月上旬に発症したため、検査を受けたということです。

 新潟県燕市では、2月12日に保育園の関係者6人が集団感染していることがわかり、10代未満1人、10代2人が感染しているといいます。従来の新型コロナウイルスでは子供が感染するのは珍しいため、新潟県の研究所で検査したところ、変異株の可能性が示されたといいます。

 このほか、イギリスに渡航歴のない滋賀県の女性、兵庫県の10歳未満の女児と30代の男性などが変異株に感染していることがわかっています。日本では既に100人以上の変異株感染者が見つかっています。

◆ワクチンが変異株に効かない疑惑がある

 南アフリカ政府は、国内で流行している変異株にアストラゼネカのワクチンが効かないとして、使用を見送ることを発表しました。どれくらい効かないのかということについては、別の記事でお伝えされることになると思いますが、一言で言うと「まったく効果がない」というレベルだったようです。

 先日、日本にファイザー社製のワクチンの第1便が入りましたが、今後はアストラゼネカのワクチンも供給される見込みで、晴れてワクチンを打てる環境が整った時に、あなたが打つのはアストラゼネカのワクチンかもしれません。

 ところが、南アフリカ変異株にちっとも効果がないのだとすると、ワクチンを打つ意味がなくなってしまうかもしれません。その時に日本で流行しているものが、従来の新型コロナウイルスであれば、それは十分に予防効果があるということになるのかもしれませんが、もし南アフリカ変異株が流行するようになっているとするなら、ワクチンを打っても意味がないということになってしまうからです。

 もはや日本は、ワクチンに頼る以外の戦略がない状態ですから、国内に変異株が流行するようなことがあると、その戦略すらままならない状態となってしまい、ますますハードなロックダウンをせざるを得なくなります。そうなってしまう前に、せめて「空港検疫」だけは万全の状態にしておかなければならないのですが、今のところは、かなりザルなのです。

◆ 変異株に対抗しようとしている知事もいる

 日本には「コロナにはイソジンが効く!」と言ってしまう知事もいるのですが、実は、変異株を早期に見つけ出し、県内の流行を防ごうと対策をする知事もいるのです。

 鳥取県の平井伸治知事は、新型コロナウイルス陽性が確認された場合、すべてのケースで「変異株ではないか」を確かめるスクリーニングを実施すると発表しました。もし変異株であった場合には、恐ろしい速さで蔓延してしまう可能性があるので、とにかく変異株なのかどうかを確かめることにしているのだといいます。

 もちろん、すべての都道府県で鳥取県と同じようなことができるわけではありません。鳥取県は新型コロナウイルスの感染者が少なく、ここ最近は新規感染者が見つからない日が連続するほどです。そもそも感染者が少なければ、変異株のスクリーニングを実施したとしても、そんなに大変ではないという事情があります。

 東京都や大阪府でもスクリーニング検査をやっています。東京都では1月29日までに1710件、大阪府では2月1日までに約40件弱のスクリーニング検査を実施しており、変異株に感染していないかどうかを確認しています。ただ、東京都では変異株に感染している人を確認できましたが、大阪ではいまだ見つけられていません。東京には羽田空港、大阪には関西国際空港がありますが、変異株にどれだけの危機感を持っているのかで、こうした動きも変わってくるというわけです。

◆コロナ対策優等生のニュージーランド

 台湾と並び、完璧な新型コロナウイルス対策を進めているニュージーランドでは、ニュージーランド最大の都市・オークランドで新型コロナウイルスの感染者が3人見つかったことを受け、3日間のロックダウンを発令。170万人が外出を自粛し、必要不可欠な仕事を除き、学校や会社が閉鎖されたといいます。

 ロックダウンに踏み切った理由は「感染力の高い変異株だったことに備えるため」だと言いますが、実際、感染が判明した人は変異株に感染していたことがわかり、ロックダウンに踏み切ったのは正解だったということになります。

 日本にも、こういうキレキレの政治家がいたら、日本経済をこんなにガタガタにすることもなく、国内を安全に旅行したり、みんなでゴハンを食べに行ったりできたと思うのですが、水際対策さえ「ザル」なのです。どいつもこいつも政治家が無能なものだから、いざとなったらワクチンがあると思っているのです。しかし、変異株にワクチンが効くとは限らないとあれば、また振り出しに戻ります。日本もニュージーランドも島国で、環境的な共通点はたくさんあるはずですが、まったく異なる政策、まったく異なる政治家のレベルなのです。

◆選挙ウォッチャーの分析&考察

 国民の政治への無関心が蔓延し、能力に欠けた議員が、選挙制度上の「穴」や、血縁などだけで議員になることだらけのニッポンでは、なかなか新型コロナウイルス対策が思うように進まず、まともな補償も出さないため、企業がどんどん倒産していますが、こうした現状を諦めるのではなく、政治家にしっかり「水際対策をちゃんとやれ!」と声を出すことが大切だと思います。

 政治家の皆さんも、このまま何もせずみんなから嫌われてしまうと、次の選挙で無職になってしまうもので、みんなからガタガタ言われるようになると、なんだかんだで動かざるを得なくなります。だから、みんなで「空港検疫をちゃんとやれ!」と大きな声を出すことが大切です。そうでないと、このままどんどん新しいタイプの変異株が入ってきて、ワクチンを打っても意味がなくなってしまうかもしれません。とうとう変異株の変異株が見つかり始めていて、このままだと人類が新型コロナウイルスを克服するまでに10年かかるとまで言われるようになっているので、とにかく打てる手をガンガンに打っていく以外にないのです。そのためには私たちが何もしない議員のケツを叩いていくしかありません。

<取材・文/選挙ウォッチャーちだい>

【選挙ウォッチャーちだい】

選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材しています。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「チダイズム」にて公開中

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