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米議事堂突入直前に行われていた日本のトランプ支持者の「最後の戦い」<陰謀論問題だけでは片付かない日本的ナショナリズムの危うさ1>

HARBOR BUSINESS Online / 2021年2月22日 8時31分

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1月6日に都内で開催されたトランプ応援デモ

◆1月6日に都内で開催されたトランプ応援デモ

 アメリカ大統領選をめぐって米国時間の1月6日、米連邦議会にトランプ氏支持者らが乱入し、5人の死者を出した。この少し前、日本時間の同日6日、日本ではトランプ氏を支持する人々が東京・銀座で「最後の戦い」とするデモ行進と街宣を行っていた。こちらの「戦い」は暴力を伴わないものだった。

 これまでの類似のデモの取材とあわせながら、日本でトランプを支持する運動を展開してきた「Jアノン」がどのような運動だったのか、改めて整理したい。

◆統一教会分派、幸福の科学、法輪功、新中国連邦

 アメリカの陰謀論「Qアノン」をもじって、日本でトランプを支持しQアノン同様の陰謀論を唱える一群が一部で「Jアノン」と呼ばれる。その実情を知る上でも、まずは、これまで日本でトランプ氏を応援するデモや集会を開催してきた主要団体の顔ぶれを整理しておこう。

 日本のトランプ応援デモや集会は、米国大統領選があった昨年11月以降だけでも大小無数に開催されてきた。実際には、1月6日の「最後の戦い」以降も開催されている。このうち私自身が現地取材をしたのはごく一部だが、ネット上での各団体による告知や事後報告等で情報を補足して、まとめる。

 2週間おきに合同で首相官邸前集会を繰り返してきた「トランプ大統領を支援する会」「日米同盟強化有志連合」「自由と人権を守る日米韓協議会」の3団体。さらに昨年11月29日に日比谷、12月27日に名古屋でデモ行進を行った「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」。そして11月25日と12月23日に日比谷でデモ行進を共催した「トランプ・サポーター・イン・ジャパン」「チェンジジャパン」。

 いずれもメンバーや路上での活動以外の実態は不明だが、「トランプ大統領を支援する会」「日米同盟強化有志連合」には、サンクチュアリ協会(統一教会分派=7男派)関係者である小林直太氏と同姓同名の人物や、千葉県にある「浦安サンクチュアリ教会」の代表者・松岡裕子氏と同姓同名の人物が関わっている。小林氏は「トランプ大統領を支援する会」の事務局長だ。

 また「自由と人権を守る日米韓協議会」には、同じくサンクチュアリ協会の会長・江利川安栄氏が関わっている。統一教会の日本支部に当たる日本統一教会の第7代会長だった人物だ。

 小林氏は「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」が関わるデモにも繰り返し参加している。また、「最後の戦い」だった1月6日より後も、1月17日に福岡でデモが行われたが、こちらは「日本の自由と平和を守る会 福岡」が主催で「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」は協賛。チラシに記載された主催者の代表者は、福岡県にある「九州有明サンクチュアリ教会」の教会長・松本昌昭氏と同姓。連絡先電話番号は同教会と同じだった。

 つまり首相官邸前で集会を開いている3団体だけではなく、トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会も、サンクチュアリ協会勢力と親しいか、少なくとも一緒に活動する程度の友好関係にあるということだ。

 1月17日の福岡のデモについては、ルポライターの安田峰俊氏が『デイリー新潮』で詳しくリポートしている。

●博多でトランプを支援する「Jアノン」 デモ密着で見えた正体

 11月29日の東京でのデモには、アメリカに亡命した中国人実業家・郭文貴氏らが設立した反中国共産党団体「新中国連邦」の旗を持つ一群も参加していた。先導車のドライバーは新中国連邦の旗を振りながら運転していた。実行委員会と新中国連邦は一体ではないかもしれないが、新中国連邦もしくはその支持者がデモ主催者側のスタッフに加わる程度の関係にはあるようだった。

 「トランプ・サポーター・イン・ジャパン」と「チェンジジャパン」は、ともに幸福の科学系だ。「トランプ・サポーター・イン・ジャパン」は、信者であり幸福実現党党員であることを公言している古山貴朗氏が代表。「チェンジジャパン」は、幸福実現党外務局長・及川幸久氏と幸福の科学職員・与国秀行氏の団体。両団体は日比谷から銀座にかけてデモ行進をした後に、銀座・数寄屋橋交差点付近で演説を行うが、そこで使われている街宣車は与国氏が主宰する政治団体「武士道」の車だ。当然、デモ参加者の多くが幸福の科学信者と思しき人々である。

 複数の団体が入り組んでいてわかりづらいが、全体を見渡せば構図は比較的単純だ。サンクチュアリ協会関係者と思しき人々が相乗りしている「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」のデモと、幸福の科学系のデモ。この2系統が、都内での2大勢力だ。そしてこれらのデモの周囲で法輪功が、新聞を配布し、また関連メディアがデモを取材し報じて情報を拡散するという形で加わっている。

◆超豪華!Jアノン・オールスター

 11月25日の幸福の科学系デモは300人程度。11月29日の「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」によるデモはゆうに1000人は超えているのではないかと思える規模だった。29日のデモには、一部の幸福の科学信者も参加していた。さらに12月23日の幸福の科学系のデモは、11月25日と比べて2倍ほどに膨れ上がっていた。

 その上で開催されたのが、バイデン氏の勝利を米連邦議会が承認する(つまり議事堂突入事件が起こる)直前、日本時間で1月6日の夜に日比谷から銀座にかけて練り歩いた「最後の戦い」のデモ行進だ。

 主催は幸福の科学系の「トランプ・サポーター・イン・ジャパン」。同じく幸福の科学系「チェンジジャパン」と、サンクチュアリ協会や新中国連邦と接点がある「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」とが、共催として名を連ねた。

 つまり、これまで別々にデモを開催してきた2大勢力が名実ともに結集したのである。

 当日、日比谷公園に集まった数は、11月29日の「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」よりやや少ないように思えたが、それでも1000人近く。幸福の科学系単独のデモより明らかに多い。

 新中国連邦の旗は見当たらなかったが、これまで「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」のデモで掲げられていたプラカードや横断幕と、幸福の科学系デモでのそれとが混在している。周囲では法輪功が新聞配布と取材に勤しんでいる。これまで双方のデモに参加してきたヘイトスピーチ活動家氏の姿もあった。

 「最後の戦い」にふさわしい、「Jアノン・オールスター」の布陣だ。

◆「ウィズ・セイビア! 」

 デモの主力が宗教団体であるからか、その主張にも、宗教的な要素がちらほら見受けられる。

 昨年の首相官邸前集会では、演説で “悪魔の勢力共産主義”“「天倫、人倫に反する共産主義は、70年ないしは73年を超えることが出来ない」という天理があります” “(バイデン氏は)神様を騙し、世界を騙した自分の悪事、自分の罪により、地獄に堕ちるのみなのです!”などという内容が語られていた。共産主義は73年もたないという趣旨の具体的な内容には、伝統宗教や、多くの人々が漠然と共有する宗教意識とは明らかに正確の違う宗教色を感じるが、現時点では出典はわかっていない。

 昨年11月の「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」のデモでは、聖書に「神のラッパ(the Trump of God)」としてトランプの名が登場するとして、聖書のその部分を引用した横断幕も登場した。幸福の科学系のデモでは、行進前に祈りを捧げる時間が設けられ、主催者や関係者が演説等で信者であることを毎回告白する。

 1月6日の「Jアノン・オールスター」デモにも、聖書を引用した横断幕が持ち出されていた。それより驚いたのは、デモも終盤に差し掛かった頃、先頭でシュプレヒコールをリードしていた古山氏(幸福の科学信者)が、マイクでこう叫んだことだ。

「ウィズ・セイビア~!」

 当然、デモ隊も「ウィズ・セイビア~!」と、これに応える。

 「ウィズ・セイビア」とは、昨年からの幸福の科学のキャッチコピーであり、年末に行われた教団の恒例行事「エル・カンターレ祭」での教祖・大川隆法総裁による講演のタイトルである。同タイトルの宇宙人霊言本も出版されており、やはり同タイトルの歌(作詞・作曲大川隆法)を長女の咲也加氏が歌うCDも教団から発売されている。

 日本語に訳せば「救世主と共に」。幸福の科学における救世主とは、言わずと知れた大川総裁である。

 繰り返すが、これは「Jアノン・オールスター」デモである。「幸福の科学のデモ」ではない。幸福の科学の信者ではない人や他の信仰を持つ人達もいる。そんなデモ隊に、主催団体の代表者である幸福の科学信者が、大川総裁賛美のシュプレヒコールを叫ばせたのである。

◆文鮮明を地獄にいる蜘蛛扱いした幸福の科学

 サンクチュアリ協会系との合同デモでこのシュプレヒコールというのは、なかなかのチャレンジだ。

 2012年.統一教会の教祖・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が死去すると、統一教会内に後継者争いが起こった。そこで分派したのがサンクチュアリ協会で、文鮮明(=故人)氏の7男・亨進(ヒョンジン)氏を直接の指導者としている。亨進氏は米国時間の今年1月6日に連邦議会前で行われたトランプ支持者たちの集会にも現地で参加している。

 一方の幸福の科学は文鮮明氏が存命中だった2010年、その守護霊の言葉であると称して大川総裁が語る霊言を映像で収録し、全国の教団施設で上映したり書籍化して販売したりした。文鮮明氏の守護霊を地獄に住む蜘蛛であるかのように扱う内容で、当時、統一教会が幸福の科学に抗議書を送付する騒ぎとなった。

 文鮮明氏存命中のことであり、サンクチュアリ協会が分派する前の出来事だ。

 サンクチュアリ協会の信者や同協会が関わる政治団体関係者がこのデモで実際に「ウィズ・セイビア!」と叫んだかどうかは定かではないが、少なくとも主催者はお構いなしに叫ばせようとした。

 過去の因縁を乗り越えての大同団結という、実に清々しい光景だった。

◆デモ後の街宣も超豪華!

 1月6日のデモ終了後には、銀座・数寄屋橋交差点前で街宣が行われた。前出の与国氏を代表とする政治団体「武士道」の街宣車を使い、与国氏のほか、これまた前出の及川氏、古山氏といった幸福の科学関係者が挨拶や演説を行う。

 これは、それ以前に行われていた幸福の科学系のトランプ応援デモと同じ光景だ。

 ただしこの日のデモには、別勢力である「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」も共催として加わっている。デモ後の街宣の顔ぶれも、それを反映していた。

 登壇順に並べると、

幸福実現党外務局長・及川幸久氏

日本再興プランナー・浅香豊氏

日米同盟強化有志連合、トランプ大統領を支援する会・松岡ユウコ氏

日本沖縄政策研究フォーラム理事長・仲村覚氏

トランプ・サポーター・イン・ジャパン顧問(安田建設社長)・安田永一氏

幸福の科学職員・与国秀行氏

トランプ・サポーター・イン・ジャパン代表・古山貴朗氏

 及川、与国、古山3氏はすでに述べた通り幸福の科学関係者。安田氏は幸福実現党関係者の事務所開きの場で、自身は2016年入信の幸福の科学信者であると明かしている。

 安田氏は入信前の2013年にはすでに、幸福の科学系団体「論破プロジェクト」の「株式会社安田建設」として後援と協賛の両方を行っている。「論破プロジェクト」は、2014年にフランス「アングレーム国際漫画祭」に「従軍慰安婦は捏造」とする主張を引っさげてマンガ作品を出展しようとして、主催者から拒否されるなどの騒ぎを起こした団体だ。代表者の藤井実彦氏も幸福の科学信者。つまり安田氏は、幸福の科学入信前から、幸福の科学関係者の政治活動に賛同し、自身が社長を務める会社ぐるみで支援してきた人物である。

 仲村覚氏は、沖縄の実家が幸福の科学の布教所となっていたこともある信者。元信者の証言などによれば、母親も信者で、2012年に日本会議事業センターから椛島有三氏(日本会議事務総長、日本青年協議会)と共著『祖国復帰は沖縄の誇り』(明成社)を出版。日本会議による2011年の「沖縄県祖国復帰39周年記念大会」や翌年の40周年記念大会で講話を行っている。幸福の科学理事長を務めたこともある神武桜子氏は覚氏の姪とされる。

 仲村氏自身は2015年に幸福の科学を脱会したと主張しているようだが、真偽は定かではない。一方、今回こうして幸福の科学関係者が主催するデモ後の街宣に登壇したことで、今なお信者たちと交流があり、少なくとも政治活動を共にする程度に近い立場にあることがうかがえる。

 登壇者7人のうち5人が幸福の科学関係者もしくは近い人物。そして残り2人のうち浅香豊氏は『左翼を心の底から懺悔させる本』(NextPublishing Authors Press)の著書もある保守寄りの人物。松岡ユウコ氏は前述のように、所属するトランプ大統領を支援する会等が統一教会分派のサンクチュアリ協会と関わりがあり、同協会の地方支部教会には松岡氏と同姓同名の人物もいる。

 デモ後の街宣でも、幸福の科学系、サンクチュアリ協会系、その他の保守系といった各方面の人物が揃い踏み。しかも全員が、顔出し・名前出しで(サンクチュアリ協会の名前だけは公言されなかったが)、名実ともに共闘した形だ。

 街宣でのスピーチ内容を逐一紹介するのは、今回は省く。米大統領選挙に不正があったとする主張のほか、日本にとっての中国の脅威等に言及し中国共産党を批判する内容もあった。街宣前のデモでも「Take down CCP」(中国共産党を倒せ)というシュプレヒコールが叫ばれていたことからも、中国共産党批判を強く意識した、あるいはそれ自体が本来の目的であるデモと街宣に見えた。

 次回、日本におけるこのトランプ応援運動が何を意味し、我々が何を警戒すべきなのかについて考えたい。

<取材・文・写真・図版作成/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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