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コロナ対策で「物言う知事」として存在感を示す丸山島根県知事と、虚飾ぶりが露呈した小池都知事

HARBOR BUSINESS Online / 2021年3月30日 8時33分

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2月25日に上京して厚労省などへの要請活動をした後、記者会見に臨んだ丸山達也・島根県知事

「コロナ対応強化が不十分なままでの五輪開催反対と、聖火リレー中止の検討」を表明した丸山達也・島根県知事が、存在感を発揮し続けている。

 五輪反対を明言した2月10日の会見を皮切りに、翌週(2月17日)の「聖火リレー中止検討」発言で「物言う知事」として注目度が急上昇。ネット上では評価する書き込みが相次ぎ、「#頑張れ島根県知事」がツイッターのトレンド入りをした。

 五輪開催ありきの菅政権(首相)や小池百合子知事に「待った」をかける問題提起の姿勢は一貫。海外の観客受入れ断念が決まった直後の3月23日の会見でも、「当たり前」と一蹴したうえで「国内も含め、無観客でやるべきだ」と踏み込んだ。

「無観客ではチケット収入が減少する」との報道に対しても「感染拡大による政府の対策費は数兆円規模」と、桁違いの損失を招くデメリットを強調。あらためて第三波の検証に基づく対応強化がない限り、五輪開催に反対する考えを明らかにしたのだ。

◆東国原英夫・元宮崎県知事が丸山知事の気持ちを代弁

 丸山知事は、2月25日には上京して政府と自民党に要請活動をした後、約90分間の記者会見にも臨んだ。中でもメディアが注目したのが、「注意する」発言をした竹下亘・元総務会長(島根2区の衆院議員)との面談だ。

 TBS系「ゴゴスマ」では、丸山知事が「第3波を踏まえたコロナ対策の強化」「緊急事態宣言“外”地域の飲食店への支援」が入った要望書を竹下氏に手渡す冒頭公開部分を映し出した後、東国原英夫・元宮崎県知事が次のように解説した。

「僕は丸山知事の気持ちが非常に分かります。やり方はちょっと強硬すぎたのかなと感じがしますが、あれぐらい声を発しないと、なかなか島根とか鳥取とか宮崎もそうなのですが、全国的に注目されない。

(丸山知事は)『政府とか行政とか政治の協力金を含めた、コロナ対策が不十分だ』ということを言いたかったわけです。つまり政府と東京都を批判している。都の感染対策は『ザルだ』と。

 実際、そうなのです。『都が感染の根源地、源泉地なのに、なぜ我々が聖火リレーというところで犠牲を払わないといけないのか』とおっしゃりたかったのだと思います」

 丸山知事は都が積極的疫学調査縮小(簡略化)で感染経路を十分に追跡できない状況に陥ったことを問題視、その実態調査を厚労省に求めていたのだが(筆者記事「丸山達也・島根県知事の『東京は五輪を開く資格がない』発言について“お気に入り記者”たちは小池都知事に何も質問せず」参照)、これを東国原氏も「ザル」状態と指摘し、丸山知事の気持ちを元知事として代弁したのだ。

◆世間の注目を集めて島根県の政策を説明する

 続いて東国原氏は、丸山知事による小池知事批判を紹介したうえで、橋下徹・元大阪府知事と重ね合わせた。

「(小池知事は)緊急事態宣言の中で千代田区長選に応援に4回入られている。それで“密”の中で、都側は『密ではない』と言っていますが、写真を見たけど“密”でした。“密”の中で演説をされている。『東京都の組長さんが緊急事態宣言の中で千代田区長選を応援する、街頭で“密”の中で応援をするのは感染対策上どうなのか』と丸山知事は(2月10日の会見で)おっしゃった。これは“ド正論”ですよ。

 そういうことをされている方(小池都知事)が、積極的疫学調査をいうたら縮小したわけではないですか。『そういったことでいいのか』と問題提起をして、聖火リレー(についての疑問)を出された。こういうキャッチ―なことをボーンと出して、そして衆目を集めて自分らの島根県の政策を皆様に説明する。

 このやり方は“橋下徹方式”なのです。橋下さんはキャッチ―な言葉をバーンとまずぶつけておいて、世間の衆目を集めてから政策の中身に入っていく」

 もちろん、丸山知事の場合は「キャッチーな言葉で衆目を集める」だけではなく、地に足のついたコロナ対策をしっかりと行なっているのはいうまでもない。

◆知事経験者が語る「東京に声を届けることの難しさ」

 その橋下氏も、翌2月26日のフジテレビ系「バイキングMORE」で同じように丸山知事を高く評価した。

「地方の知事が東京に声を届けるってものすごく難しい。普通は地方の知事の声なんて、東京のメディアが取り上げてくれない」

「例えば国の直轄事業の負担金という、国から何百億円という請求書を地方は請求されるのですが、それに関して僕が『ぼったくりバーだ』というふうに言うと、取り上げてくれる」

「全国のキー局でこういった放送が流れると、国も考えざるを得なくなって、あとはどっちの方に国民が支持をするかっていう、政治的な力関係で決まる」

 そして橋下氏は、さらなる“過激発言”を丸山知事に勧めていた。

「残念ながら丸山さんは僕と違って上品にやってしまっているので、まだ『島根県応援』という雰囲気になってないから竹下さんはかなり強気になっている。これはもう最終的には国民がどっちを支持するか」

◆厚労省も竹下氏も、丸山知事の問題提起を軽く見ている!?

 実際に丸山知事の要請活動は、全国のキー局を含めて大きく報道された結果、島根県の政策発信に成功。政府・自民党の動きの鈍さを浮彫りにする効果もあった。要請活動後の会見で筆者の質問に対して、次のように丸山知事は答えたのだ。

――知事が2月3日に厚労省に「積極的疫学調査縮小の調査をしてほしい」と要望書を出し、無回答状態だったので五輪反対にまで踏み込んだが、今日の(山本博司・厚労)副大臣との面談で調査が進んだとかの具体的回答はあったのか。

丸山知事:「今日、回答できることはない」という答えでした。もしかしたら、(厚労省は積極的疫学調査縮小の調査について)「回答する必要がない」と思われているかも知れませんね(笑)。

 無回答状態が続いていることを確認した筆者は、「丸山知事に注意する」と発言した竹下亘・元総務会長についても聞いてみた。注意すべき相手は、積極的疫学調査の調査を進めない厚労省ではないかと思ったためだが、丸山知事はこう答えた。

「『注意』というのは物の言い方ですが、私自身も政治の世界に入って知事になって2年、政治の世界の流儀でいうと、今回のやり方がかなり乱暴なやり方なのは間違いないと思う。(「注意すべき相手は厚労省ではないか?」と聞くと)竹下先生とはそういう議論をしていない」

 丸山知事の五輪開催に対する問題提起を、厚労省も竹下氏も重く受け止めているとは言い難い。

 今回の島根県の要望書には「第3波を踏まえたコロナ対策の強化」とある。これは、第3波の感染拡大では保健所がパンク状態(マンパワー不足)となって感染経路を追跡する「積極的疫学調査」縮小に陥ったが、第4波を抑え込むためには「コロナ対策の強化(保健所職員の増員など)」が不可欠だと丸山知事は訴えているのだ。

 そのためには第3波の検証、つまり「積極的疫学調査がどこまで縮小されたのかの全国調査(現状把握)」をしたうえで、ワクチン接種や五輪関連業務が加わる中での「コロナ対策強化プラン」を作成、準備を進めることが五輪開催の必要条件となる。しかし現時点では、具体的内容が示されていないことから丸山知事は五輪反対の立場を取っている。

◆丸山知事「(都の対策に対する)メディアの社会的チェックは大事」

 丸山知事は、筆者の質問に対して次のように締めくくった。

「次の感染拡大局面(第4波)に対してどこまで耐えられるのかを確認しておかないといけないのではないか。『(コロナ)対応能力』というのはそういうことだ」

 会見終了後、「小池知事の千代田区長選『密集』街宣の記事を書いたものです」と自己紹介しながら、筆者の著書『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』を手渡した。すると、「(都に対する)社会的チェックが効いていない」(2月10日の会見)と語った丸山知事は、「メディアは大事です」と言ってエレベーターに乗り込んだ。

 丸山知事の問題提起後、小池知事は積極的疫学調査を回復(縮小解除)するように通知を出し、保健所職員の増員方針も発表した。しかし、千代田区長選「密集」街宣を否定するなど言葉上だけでごまかす傾向のある小池知事については、コロナ対応強化発言と実態が伴っているのかどうか、メディアが厳しくチェックする必要があるのだ。

「物言う知事」として存在感を一気に示し始めた丸山知事と、虚飾ぶりが暴かれ始めた小池知事――対照的な2人の言動から目が離せない。

<文・写真/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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