大の里、関脇以下年2度Vで貴花田以来32年ぶりの快挙「最高の相撲」大いちょうの結えない力士の2度目Vも初
スポーツ報知 / 2024年9月22日 5時30分
◆大相撲 ▽秋場所14日目(21日、東京・両国国技館)
関脇・大の里(24)=二所ノ関=が13勝1敗で2場所ぶり2度目の優勝を決めた。土俵上では過去3戦3敗の大関・豊昇龍(25)=立浪=を押し出しで圧倒した。同一年に関脇以下の力士が2度優勝するのは1992年の貴花田(後の横綱・貴乃花)以来の快挙となった。また大関昇進判断を預かる審判部が千秋楽に臨時会議を開くことを決め、場所後の昇進も事実上、決まった。初土俵から所要9場所での昇進なら、羽黒山らの12場所を抜いて昭和以降最速となる。
大の里は懸賞を両手で受け取ると、大きく息を吐いた。大歓声の花道を後に支度部屋に戻ってくると、なかなか腰をかけず、興奮を押し殺すように周辺を歩いた。口を開くと「(重圧は)全くなかった。思い切ってやるだけで、最後は気持ちだった」と淡々と語った。
過去3戦3敗の豊昇龍との結びの一番。立ち合いから強烈なもろ手突きでのけぞらせ、一気に攻める。土俵際で回り込もうとする大関を追撃し、右手で押し出した。「立ち合いと土俵際を(意識するよう)自分に言い聞かせた」。2秒3の圧勝だ。関脇以下の同一年の2度目Vは、92年の貴花田以来。優勝回数では早くも師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)と並び、大いちょうの結えない力士の2度目のVも初となった。
5月の夏場所の初優勝後、師匠は「優勝といっても12勝3敗」と褒めなかった。2度目の巡業参加となった8月の夏巡業で申し合い稽古に積極的に参加。自分や相手の弱点を考えて稽古し「感覚が分かってきた」。今場所未対戦の豪ノ山を除き、名古屋場所で負けた力士全員に今場所でリベンジ。目標の横綱、大関での賜杯は13勝以上、取りこぼしは許されないと考えた。だからこそ13勝目を挙げた一番は「最高の相撲を取れた」。
7月の名古屋場所初日の1週間前に石川・津幡町での優勝パレードに参加した。しかし大関の座に初挑戦した名古屋は9勝に終わり、パレードに参加したことをネットで「だから勝てない」などと批判された。実家へ立ち寄った後、相撲経験者の父・中村知幸さん(48)の運転する車内で交わした会話の中で「名古屋場所は意識しすぎた」と気がつき「(大関は)通過点」と考えを変えた。秋場所中は「何も考えていない」と繰り返し、目の前の一番に集中した。
初日から11連勝と賜杯レースを引っ張った。八角理事長(元横綱・北勝海)は「大の里は立派で文句なしだ。相撲において一番いいものを持っている」と絶賛。初土俵から所要9場所で大関に昇進すれば、昭和以降で最速記録。大関昇進に関し、審判部長の高田川親方(元関脇・安芸乃島)も「最高の流れ」。千秋楽へ向け、「14勝1敗か、13勝2敗は自分次第」と大の里。着実な歩みが看板力士の座へと結実した。(山田 豊)
◆大の里に聞く
―過去に3敗している豊昇龍に勝った。
「一度立ち合いを突っかけたが、立ち合いが大事だと思っていたのでよかった」
―名古屋場所からの成長。
「まだ終わってない。明日、終わったら言います」
―師匠には?
「千秋楽で勝って、良い報告できるよう頑張りたい」
―地元への思いを。
「8月に夏巡業へ行ってその前に(しこ名の由来である元大関の)大ノ里関の地元である青森・藤崎町に行った。(温かい歓迎を受けて)中学、高校を過ごした新潟や石川の思いを背負うようになった」
―目標は「大関昇進」という中での優勝だ。
「まだ場所終わってない。最高の結果で終わりたい」
―千秋楽はどんな相撲を。
「思い切って締めくくりたい」
◆大の里 泰輝(おおのさと・だいき)
▽本名・中村泰輝
▽生まれ2000年6月7日、石川・津幡町生まれ。
▽相撲歴 小1から相撲を始め、新潟・能生中、同・海洋高を経て日体大。1年で学生横綱。3、4年時には2年連続のアマチュア横綱に輝いた。
▽入門後 二所ノ関部屋に入門し、昨年夏場所で幕下10枚目格付け出しでデビュー。同秋場所で新十両。初場所で、昭和以降3位タイのスピード記録となる所要4場所で新入幕。夏場所で最速となる初土俵から7場所でのV。
▽三賞ハンター 1944年に三賞の制度が制定されてから初めて新入幕から4場所連続の三賞受賞。殊勲、技能、敢闘賞が2度ずつ(名古屋場所終了時)。
▽阪神ファン 家族全員が虎党。昨年18年ぶりにリーグ優勝したときには「ビールかけが印象に残った」。
▽好きな食べ物 ウニなど魚介類。
好きな歌手 湘南乃風。愛知・一宮市で行われた春巡業では「純恋歌」をファンの前で歌を披露。
▽得意は突き、押し、右四つ、寄り。
▽身長・体重 192センチ、182キロ
▽家族 両親と妹。
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