ペトロヴィッチ監督の曲げぬ信念にクラブの迷い…チーム低迷を招く…J2陥落 コンサドーレの今季を振り返る(上)
スポーツ報知 / 2024年12月12日 6時0分
北海道コンサドーレ札幌は今季、J1で20チーム中19位に終わり、来季は2016年以来9年ぶりにJ2で戦うことが決まった。今季限りで退任したミハイロ・ペトロヴィッチ監督(67)の下、18年にはクラブ史上最高の4位となり、昨季まで残留争いに巻き込まれることはなかったが、第2節以降、降格圏を脱することはできなかった。低迷の裏側にはどんな出来事があったのか。3回にわたって振り返る。
(取材・砂田 秀人)
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5月、札幌は大きく揺れていた。降格圏を抜け出せず、2~4月に挙げたのは1勝のみ。ペトロヴィッチ監督を続投させるべきか、上層部で議論が続いた。「交代すべき」という意見も少なくなく、取締役の中でも表に思いを出す者もいた。「1人の考えだけでは抑えきれないところに来ている」。当時、三上大勝代表取締役GM(53)が漏らすほど、解任を望む経営側の声は、大きくなっていた。
開幕2戦目から5連敗し、トップ5入りの目標は早くも崩れかけた。「絶対に残留を」と立て直しに動き、後任として日本で実績のある外国人監督の身辺調査を行ってもいた。しかし進退を判断する一戦と位置づけていた4月6日のG大阪戦で今季初勝利を挙げ、決断は先送りされた。一度は沈静化していたが、采配に対する疑問視から、再び“解任論”が湧き上がった。
4月27日の第10節湘南戦。後半9分に3―0としながら追い付かれ、勝ちを逃した。その直近の2戦は新潟、広島といずれも追い付かれながら粘り切り、ともに1―1に持ち込んだ。その2戦では後半、MF小林祐希(32)と長谷川竜也(30)の経験豊富な選手を投入。2人が時間をうまく使うなどしたことが奏功した。しかし湘南戦は「守備に課題がある」という指揮官の判断で長谷川がベンチ外に。失点を重ねる中、流れを再び変えられる存在を送り出せず、交代枠を1つ残して試合終了。クラブ幹部は「竜がいたら違っていたかも」とつぶやいた。
ペトロヴィッチ氏は、自身のサッカー信念を貫き、札幌をJ1に根付かせた。ブレずに攻撃的スタイルを推し進めるべく、厳しく指導し、選手起用も「自分が信頼したメンバーで戦う」とこだわりを持っていた。その方針は結果が出ない今年も変わらなかった。ルヴァン杯などで活躍してもリーグ戦はベンチ外。アピールしても報われない選手のモチベーションは上がらず、クラブがメンバーに関して意見しても通らない時期が続いた。補強も「いる選手でやる」と言い続け、新たに選手を取ることに積極的ではなかった。哲学を決して曲げないミシャの良さが、悪い方向に出てしまった。
5月29日、三上代表取締役GMは「今季はペトロヴィッチ監督で戦い抜く」と声明を出した。「選手の要望を聞いた」というのを大きな理由としたが、黒字必達という絶対目標も背景にあった。新たに監督を選べばペトロヴィッチ氏への違約金も発生する。仮にシーズン途中で後を託しても、一からのつくり直しでは成功の可能性が高いとはいえない。後任探しも順調には進まなかった。これまでの積み上げを基にして戦うことが、選べる最善の策だった。
コーチ陣に新たに人材を加えて体制を強化することも検討されたが、話し合いの末、現状維持を約束。その上で「ミシャにはもっと意見していってほしい」と求めた。選手には声明発表の前日に「ミシャは今季限り」とミーティングで伝え、発奮を促した。スポンサーにはクラブの意思をはっきりと伝え、夏の補強での巻き返しを宣言した。
後半戦は7勝5分け7敗としたことから、監督問題が再燃することなく、シーズンは終わった。クラブ全体が一体感を持って戦い抜いたとは言えない今季を象徴する出来事は、他にも複数、あった。
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