災害に強いと導入相次ぐ PHS、「非常時に繋がる」のはなぜか?【インターネットコム】

インフォシーク / 2012年3月22日 10時1分

PHS は「マイクロセル方式」で、きめ細かく基地局を設置している

東日本大震災はわれわれに、非常時に際しての数多くの教訓を残した。なかでも、通信インフラがダメージを受けた状態での連絡手段の確保については、誰しもが真っ先に困ったことだろう。

電話が殺到してシステムがダウンしてしまわないよう、地震発生直後から携帯電話各社は最大87%の発信規制を実施した。行政による救援などの活動に使用する回線の確保を優先するためだ。唯一、混乱のなかで通信規制をかけなかったのが、ウィルコムの PHS。その理由について、ウィルコム・サービス企画部では、次の2つを挙げる。

「弊社では、データ通信定額制サービス『Air H”』や、音声通話定額制サービス『ウィルコム定額プラン』など、使い放題の定額制サービスを業界に先駆けて提供してきました。一般的にそうしたサービスは従量制に比べ、何十倍ものトラフィックが発生するものですが、弊社にはそういったトラフィックの急増に対応してきたネットワークキャパシティがあります」(ウィルコム)。

今年に入ってから、携帯電話が連続して通信障害を起こしたが、これはスマートフォンの普及などによる通信量の大幅な増大が引き金となっている。しかし、ウィルコムの PHS 通信網には、非常時において過度に集中する通話を捌くだけのキャパがあった。

もう一つ、携帯電話とは基地局の配置の仕方が異なることが、ウィルコムの PHS が“繋がった”背景にある。「PHS は、マイクロセルという方式で基地局を設置しています。一般的な携帯電話では、1つの基地局で数百メートルから数キロメートルの範囲をカバーしますが、PHS では数十から数百メートル程度ごとにきめ細かく基地局を設置しています。これにより、通信が集中した場合でも効率的に分散してアクセスを処理することができます」(ウィルコム)。

発信規制がなされていないことも含め、基地局がきめ細やかに設置されている PHS は局所的なアクセス集中に強く、したがって PHS は災害時には心強い通信手段のひとつと言えそうだ。

実際、災害時への備えとして、ウィルコムの PHS を導入する自治体や公共機関が急増している。さいたま市では、市の災害対策本部と各区役所、および被災者や帰宅困難者に向けた市内の避難所256カ所にウィルコムの PHS を常設することを決めた。また、東京都三鷹市では、教育委員会が全ての小・中学校に、非常時の通信手段として固定電話に加えて PHS を配備することにしている。

「三鷹市で導入していただいたのは、固定電話と同じ形状をした『イエデンワ(WX02A)』という機種。通常業務でも使えますから、誰もが使い方に慣れておくことができますし、非常時には乾電池でも作動します。ウィルコム同士なら通話も無料ですから、現状の予算のまま導入していただくことができます。各行政拠点・避難所同士で内線電話的な使い方ができるのは、大きなメリットだと思います」(ウィルコム)。

ウィルコムでは、これまでにも「小型、省電力、電池作動可能」をコンセプトに、さまざまな PHS 端末をプロトタイプとして試作してきた。この4月にも、緊急時の使用を想定した法人向け PHS「防災だフォン(TWX01NX-DE)」をあらたに発売する。通常の移動端末と同様の形状だが、単4乾電池3本で350時間駆動するのが特長だ。

しかし、こうして各地各所でウィルコムの導入が進むと、いざという時にアクセスが集中して繋がらないということにはならないのだろうか?

「弊社の通信ネットワークのキャパシティは、現状まだ余裕があります。また、仮に局所的なトラフィック増加があった場合でも、すぐに新しい基地局を増設することが可能(DCA 方式)なため、急なアクセスの集中にも対応が可能です」(ウィルコム)。

東日本大震災で被災した宮城県の村井嘉浩知事は、著書「復興に命をかける」のなかで、「(災害時優先電話に指定されていた)私の携帯電話ですら3日間全く通じなかった」「県職員の中によく通じる携帯電話を持っているものがいました。調べてみると、彼の携帯電話は PHS でした」と綴っている。

東日本大震災の別の教訓は、災害は「いつか」だが「必ず起きる」ということだ。非常時や帰宅困難に備えて、家庭内で PHS を持ち合ったり、連絡手段が確保されている避難場所を把握しておいたりするのも、家庭でできる防災対策のひとつと言えよう。

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