「オヤジ」の壁、「オフクロ」の壁。

インフォシーク / 2012年9月5日 17時0分

外ではオヤジ、家ではお父さん

とうとう9月になり、夏も終わろうとしている。

子供の頃、夏休み明けの学校というのは何だかそわそわした。ほぼ一ヶ月ぶりに会う友達もいて、夏の間にどこか成長している子もいたものだ。

そしてこの時期、成長と共に話す言葉が変わることもある。

例えば父親に対する呼び方が、パパやおとうさんから、オヤジに変わる。だいたい中学生から高校生くらいの、いわゆる思春期だろう。何故か男の子というのは、オヤジという呼び方に憧れるようになるのだ。

だが、昨日までパパやおとうさんと呼んでいたのに、突然オヤジと呼ぶのは簡単なことではない。このタイミングに悩む少年も少なくないようだ。

実は私自身このタイミングを掴みきれず、オヤジという呼び方への切り替えができなかった。友達と話すときは「うちのオヤジがさあ」なんて言いながら、家ではいつも、おとうさんと呼んでいたのだ。

だが少し調べてみたところ、私と同じような男性は意外に多いようだ。外ではオヤジと言っているから、見えていないだけなのである。

同様に、ママやお母さんからオフクロと呼ぶ変化もあるが、これはオヤジよりさらに難易度が高い。オフクロという言葉は、大人すぎて(おじさんすぎて?)怯んでしまうのだ。

学校から帰ってきて「おふくろー、おなかすいたー」なんて言うのは、ちょっと重たい。だから大体が「かあちゃん」くらいに落ち着くのだろう。

そもそも、パパ、ママ、おとうさん、おかあさん、おやじ、おふくろ、おとん、おかん、とうちゃん、かあちゃん、父上、母上、などなど、絶妙にニュアンスの違う言い方がよくこんなにも出来たものだ。

親が子供にどう呼ばせるか。

「ママ派」か「おかあさん派」か、なんて議論も至るところで行われている。そしてこの議論の歴史は、意外と深い。

パパ・ママは明治時代後半に、洋行帰りの家庭で使われるようになったそうだ。これが流行りはじめると俳人であり小説家の高浜虚子が「パパは吹けば飛びそうでいやだ」と反対論を唱えたという。それに対して与謝野晶子が、「日本は文字も法律も外国から移植した。ことさら忌む理由なし。」と反論し、論争となったらしい。

なんと、パパ・ママなんて平和な言葉に、こんな争いがあったとは。

この時にパパやママが衰退していたら、いつ呼び方を変えるかなんて悩まなくて済んだということか。

いや、でも多彩な言葉があるのはいいことだと思う。言葉の変化で成長を感じるのもきっと素敵なことだ。

初めて息子にオヤジと呼ばれた日に、「こいつも大人になったなあ」なんてしみじみすることもあるかもしれない。

いい感じのビールのCMでもできそうだ。

石井 良
Ryo Ishii 1980年・東京都生まれ。コピーライター。制作プロダクションを経て独立し、良案工房を設立。広告・冊子・WEBなどのコピーや記事を書いている。真心を込めた文章で、多くの人の課題解決や夢実現の力になれるよう日々奮闘中。ロックバンドのドラマーでもあり作詞も手掛ける。憧れの甲本ヒロトに自分の書いた歌詞を歌ってもらうことが夢。MAIL:ishii@ryoankoubou.com

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