西のタイガースファンと東のタイガースファン ~1分でわかる大阪人の言い分~

インフォシーク / 2012年12月12日 17時30分

7回裏、夜空を染める甲子園名物ジェット風船

2012年の大阪は暗かった。

大阪だけじゃない。近畿地方一帯、いや日本人の半数はどんよりとしていた。

なぜなら、阪神タイガースが弱かったから。

ここ数年クライマックスシリーズが行われる10月までは、優勝できずとも胸を熱くさせてくれる試合を繰り広げていた。

それが今年はどうだ。点は取れないわ取ってもすぐ逆転されるわ、マートンは「能見がアホやから野球がでけへん」と江本孟紀よろしく内紛するわで、無気力なチームを前にファンは見放された状態が続いた。

7月1日のヤクルト-阪神(神宮)であっさり逆転された頃には、まだ前半というのにモチベーションのかけらすらない静まり返った3塁側に、冷たくもない昼の雨が降っていた。

東京にも大勢のタイガースファンがいる。

3塁側の席が先に売り切れることが多く、在京タイガースファンの多さに気付かされる。

東京ヤクルトスワローズの本拠地である神宮球場は、雰囲気や立ち上る焼鳥の匂いなどから「第2の甲子園」と呼ばれ愛されている。

ダメな試合のうえに雨が降り続いた7月1日も、大勢のタイガースファンが席を埋め尽くし、試合終了まで見守っていた。

タイガースファンは仲間だ。みんなで喜びあい、歌いあう。

しかし西のタイガースファンと東のタイガースファンでは、ちょっと雰囲気の違う部分がある。

東京人の阪神ファンは「アンチ巨人だから」や「ヤンチャ(または悪役)なチーム」との理由で応援する人が多い。大阪でそれが一番の理由からファンになる人はまずいない。

大阪人にとっては「野球=阪神タイガース」であり、虎こそが野球の父である。毎試合テレビ放送している中継を観ながら生きてきた。

最下位ばかりだったどん底の時代も共に生きてきたから、今年のような失態も「昔みたいやな」と歯を食いしばるし、近年の移籍組ばかりのオーダーに「巨人みたいや」といささかの不満はあっても一度タテジマのユニフォームに袖を通した選手はみな家族だ。他球団へ放出された選手でさえも、移籍チームは嫌いでもその選手だけは今でもファンだったりする、情に厚い人種なのだ。

ほどんどのファンは観戦する際、ユニフォームに着替える。

入れ墨のような虎や六甲颪(おろし)の歌詞などがウェアじゅうを縫い尽くしている。

まるで特攻服。

どこで売っているのかタイガースのロゴ入りニッカポッカを穿いているファンも見る。

もはや野球ではないが、それが関西の愛情表現なんだから仕方ない。

西のタイガースファンも当然ながら巨人は嫌いだし、ヤンチャぶりはファンどうしを結束させる。

そんな西の濃い愛情表現が、なぜか全国でヤンキーイメージに映り、なんかおかしい東のタイガースファンが出来上がったのだろう。

野次を聞いても異なる部分に気付く。

例えば上本選手が3打数ノーヒットだったとする。甲子園球場の場合は「上本ーしっかりせんかーい!」と励ますが、東京の球場の場合は「お前もう引っ込んでろ!早く変えろよ和田ー!」と怒鳴っている。

チームを愛しているなら、悪びれるんじゃなくてあっためてやれよ。

さっきまでスーツを着てペコペコ頭を下げていたはずの男が「死ぬまで虎命」と縫ったユニフォームに袖を通した瞬間にオラオラって。カラオケでも行って歌ってればいいじゃない。

関西以外で生まれたタイガースファンは、一度大阪へ来てほしい。

46000人中45500人が阪神ファンで埋め尽くす甲子園球場で喜怒哀楽そして祈りのすべてを共有しあう地元のファン達から、悪いイメージなど持てないだろう。

甲子園球場が浪花のエルサレムに見えた頃には、虎の威を借る狐だったと気付くはず。

そろそろ来年の予想を言いあう酒の席が開幕する。

鹿タカシ
しかたかし ライター・コピーライター・歌い手(バンド活動休止中)。大阪生まれ。大阪芸術大学にて写真を専攻した後に上京しなぜかコピーライターとなって約10年。現在は都内広告プロダクションに勤務しながら、大阪人からみた東京、また東京在住の人からみた大阪人について研究。

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