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『学園アイドルマスター』でこだわったのは、“みずみずしさ”!細部まで作り込まれたキャラクターモデルの裏側【CEDEC 2024】

インサイド / 2024年8月31日 19時0分

2024年8月21日~23日まで、パシフィコ横浜ノースで開催された「CEDEC2024」では、ゲーム業界をリードする第一線のクリエイターたちが登壇し、ゲームにまつわる幅広い分野のノウハウを共有するセッションが行われていました。


本稿では、初日に開かれたセッションのうち『神は細部に宿る!「学園アイドルマスター」のこだわり抜いた3Dキャラクター・背景制作』の内容を一部抜粋してお伝えします。


◆「みずみずしさ」をコンセプトに、アイドル1人あたり6万ポリゴンを使用


本セッションでは、人気スマートフォンゲーム『学園アイドルマスター』の3Dモデルディレクションを担当する杉村氏と、パイプライン周りのテクニカルアーティストとして活躍する見原氏の両名によって、同作のキャラクター・背景の3D制作事例が紹介されていきます


本作『学園アイドルマスター』では、「モバイル3D美少女の最高クオリティ」を目指すために「みずみずしさ」を当初からキーワードに掲げていたと言います。そして本作は既存の「アイドルマスター」シリーズとは異なり、アイドルが1人で舞台上のパフォーマンスを行う“ソロライブ”がキモとなります。


しかし、ソロライブは複数人のライブと比較しても、見栄えが劣ってしまいます。そこで、キャラクター1人に対するモデリングの表現力、個性、実存感などを増す方向性で制作しつつ、舞台背景とライティングにも注力することで、リアルライブらしい臨場感を演出することに成功しました。


キャラクターモデルはライティングが映える造形を目指し、光と陰の演出が印象的なビジュアルになりました。髪の毛も1本の毛がほつれる“おくれ毛”など、柔らかい表現を取り入れています。そして身体表現は、アイドルごとのバックボーンや設定を反映するため、個別に造形とテクスチャにこだわっているそうです。


もちろん、アイドル衣装とキャラクターの表情、汗表現にも抜かりなく力を入れて、高い表現力を実現しました。揺れものは3Dモデルが持つ硬さを取り除く要素なので、従来と比べてできるだけ多くの箇所が揺れるようになっています


こうして出来上がったアイドルのポリゴン数は、1体につき約6万ポリゴンに及ぶとされています。ただ、昨今のコンソールゲームなどと比較すれば、キャラクター1人に数十万ポリゴンが使用される場合も決して珍しくないため、ゲーム業界的には贅沢なポリゴン数とは言い切れない、と杉村氏は言います。


陰影映えしてカクツキも感じさせない造形を作るために、依然としてポリゴンの使い方には気を使うとのこと。なお、ポリゴン数の内訳を見ると「髪」が23000~26000、「顔」が8200、「体」が25000~26000といった状況になっています。 


◆キャラクターモデルへのこだわりポイント


キャラクターモデルへのこだわりポイントとしては、前述したように、キャラクター個々で固有の身体造形を作成。体型を決定付けるのは「筋肉」「脂肪」の2軸の要素となっています。これは、体型が完全に中間の標準モデルから始まり、各アイドルごとの身体的個性を反映するかたちでモデリングしているとのことです。


部位ごとにボリューム感やシルエットなど、複数の身体パーツの造形が持つ個性表現から、アイドルたちは構成されています。また、筋肉・脂肪の凹凸の違いなどは、テクスチャーの陰影オフセットによって表現。中でも筋肉については、ライブパフォーマンスを行うアイドルのリアリティに寄与する狙いがあるそうです


髪の毛もポリゴン数を活かし、滑らかな表現になっています。先にも触れた“おくれ毛”は、どこにどの程度配置するかが重要だったとしていました。やり過ぎるとボサボサになってしまうため、髪の毛の効果的な配置・流し方に気を配らなければならなかったようです。


せっかく配置した髪の毛も、動かなければやはり宝の持ち腐れになってしまいます。おくれ毛1本にも惜しみなく1ライン分の揺れ骨を入れることにより、髪の毛がハラリと落ちる瞬間や、ダンス中にフワっと舞う瞬間などを演出できています。


SNSでも度々話題になるキャラクターの揺れもの表現は、モーションに反応してポリゴンを揺らすことで、キャラクターの柔らかさを模索していきました。ただ、当初は揺れ骨を入れても思ったように動いてくれなかったそうで、揺れ骨の設定をスライドさせる工夫をしています。


人体の皮膚触れは、波を打ち、伝うような動きが短い時間に起きることで、揺れているように見えると言います。そして、この揺れが縦向きの動きというよりか、横向きの動きであることに着目し、スライド骨の動きを縦ではなく横のベクトルに変換したのだそうです。これにより、当初イメージしていたような皮膚揺れを実現できるようになったと、杉村氏は話します。


本セッションは、技術者向けの専門的な内容もふんだんに盛り込まれており、必ずしもエンドユーザー向けとは言い切れないものでした。


それでも60分間の中で語られるにはかなり濃密なセッションとなっており、CG業界の専門用語が理解できなくても、アイドル1人をリッチに表現するため、相当な試行錯誤が重ねられていることが分かります。


本講演の詳細はアーカイブから視聴できます。


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