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サービス価格競争の抜け出し方  ~日本サービス大賞 受賞事例に学ぶ~ |service scientist's journal /松井 拓己

INSIGHT NOW! / 2018年6月25日 0時2分

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松井 拓己 / 松井サービスコンサルティング

日本最高峰のサービス表彰制度である日本サービス大賞の第2回受賞サービスの発表が6月28日に迫っています。この表彰制度は、サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰するもので、業種や業界、地域、規模にかかわらず、様々なサービスが表彰の対象になっています。内閣総理大臣賞をはじめ、各大臣賞および優秀賞が隔年で表彰されます。第2回からは、JETRO理事長賞も加わり、日本の優れたサービスのグローバル展開についても注目が集まります。

さて今回は、第2回日本サービス大賞の表彰に向けて、前回の第1回日本サービス大賞を受賞サービスの中から、テーマに合わせた共通点を見出してみたいと思います。テーマは「サービスの価格競争からの抜け出し方」です。


価格もスペックも、自己犠牲のサービス競争

日本のサービスの生産性が低いことに注目が集まっています。その原因のひとつが、これまでのサービス競争の仕方にあると思います。多くの企業では、「いいモノを安く」「いいサービスを安く」と、スペック競争や価格競争を進めてきました。価格やスペックでの競争方法しか思い付かなかったといった方が正しいかもしれません。

しかし今の時代、新しいメニューや機能を開発しても他社にすぐマネされてしまうため、結局はスペック競争も価格競争に追いやられていきます。これでは、事業は疲弊する一方で、生産性が低いのも当然の結果といえます。今こそ、自己犠牲のサービス競争から抜け出すための新たな方向性を持つべきなのです。


旭山動物園とフォレストコーポレーションの共通点

さてここで、第1回日本サービス大賞の地方創生大臣賞を受賞した2つのサービスを紹介します。その共通点から、サービス競争の新たな方向性を見出すことができます。


事例①|旭山動物園

行動展示で、日本を代表する動物園に生まれ変わった旭山動物園。ここはどんな動物園なのかを簡単に説明すると、次のようになります。

――― 旭山動物園には、他のどこの動物園にもいる普通の動物しかいません。しかし、他の動物園では決して味わうことのできない動物との関係性や仕草を味わうことができるのです。―――

動物園の差別化の王道は、動物の種類です。「他の動物園にはいない、珍しい動物がいます。」というのです。最近では動物の種類では、あまり差が付かなくなっています。多額の投資をして、他にはない動物を連れてきて飼育しても、思ったほど来園者数が伸びない可能性が高いのです。そんな中、旭山動物園のアプローチは、サービスの差別化として新たな方向性を示しているといえます。


事例②|フォレストコーポレーション

信州の住宅会社フォレストコーポレーションのお客様参加型の家づくりが、圧倒的な支持を受けています。それは次のようなものです。

――― フォレストコーポレーションは、国産の天然素材にこだわった最高等級の家をつくります。加えて、自分の家に使う木を、山に入って選んで切るところからお客様が参加することで、一生に一度の家族での家づくりを、感動の物語に変えているのです。家づくりは家族づくりなのです。 ―――

ハード面では、中小企業といえども大手に引けを取らない家づくりを実現しています。ただし、ハード面を磨いてスペックを高めたところで、大手競合他社に大きな差をつけることはできません。ハイスペックな家であることは、もはや当たり前になりつつあるのです。この状況において、選木から始まるお客様参加型の家づくりは、他社との圧倒的な差として顧客に認識され、事業を8年で3倍に伸ばすに至っているというわけです。

両者のサービスの共通点は、サービスの差別化や競争力強化の方向性のシフトです。


方向性をシフトして、スペックや価格競争から抜け出す

以前の記事取り上げましたが、顧客からの評価は、2つに分解することができます。サービスの「成果」に対する評価と「プロセス」に対する評価です。多くの企業が熱心に取り組んでいるのは、成果の評価を高めることでの差別化や競争力強化です。たとえば、メニューや機能の開発、コストパフォーマンスの向上が該当します。もちろんこれらの取り組みは重要ですが、問題は差が付きにくくなってきたことです。メニューや機能で差別化しても、すぐに他社にマネされて、あっという間に価格競争に追い込まれてしまいます。成果の評価を高めるアプローチでは、苦しいスペック競争や価格競争からは抜け出せないのです。

一方、旭山動物園やフォレストコーポレーションは、「プロセス」の評価を高めることで、圧倒的な差別化を実現しているといえます。行動展示で、動物園の中で経験できる価値を高めた旭山動物園。家づくりのプロセスに顧客が参加することで感動を生んでいるフォレストコーポレーション。どちらも、差別化のカギになるのは、メニューや機能ではなく、サービスプロセスで経験できる価値を高めることです。

ジリ貧のスペック競争や価格競争から抜け出すのであれば、サービスのプロセスの価値を高めることが有効です。少し極端な表現ですが、他社と同じメニューや機能しかなくても、サービスのプロセスの価値を抜群に高めることで、圧倒的に差別化できるのです。

これまでサービスの「成果」としてのメニューや機能、価格で競ってきたのであれば、新たな打ち手として、サービスの「プロセス」を磨くという方向性で、サービス競争力を高めてみる価値があるといえます。

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