速報:ニバリ、観客のカメラストラップに絡まり落車!/純丘曜彰 教授博士
INSIGHT NOW! / 2018年7月20日 18時10分
純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学
ツールドフランス第12ステージ、アルプデュエズ。残り3.7キロの悪名高き「ダッチコーナー」。トーマス、フルーム、デュムラン、バルデ、そして、ニバリがデッドヒート。とくにニバリは、昨日、足があった。だが、そこで踏み込んだ瞬間、激烈な落車。
情報が錯綜し、先動する警察バイクとの接触と言われたが、原因は、ハンドルが観客のカメラのストラップに絡まったためのようだ。胸椎骨折。それでも、わずか13秒遅れで完走。しかし、もう走れない。ここでリタイア。チームスカイを「模範」とするコントロールレース(チームが先頭で場所取りして競争させない)が横行する中、天才肌のニバリは、レースをおもしろくする選手の一人だったのだが。
アルプデュエズは、フランス東部イーゼル県の高原リゾート。ツールドフランスでは、定番のコースの一つ。全105回のうち29回も使われている。つづれ織りで登っていく細い道には21のコーナーがあり、「ダッチコーナー」は、その上から7番目。大勢のオレンジ色のシャツのオランダ人が集まり、屋台を出して酒を飲み、馬鹿騒ぎをしているので有名。ピレネーのバスク人と並んで、とにかくタチが悪い。応援と称して、裸になり、コースにせり出し、正面に立ち塞がり、一緒に走り、坂を登る選手に直接に手を出す。今回も、道幅を狭め、赤や黄色の発煙筒を焚き、走ってコース内で転び、とにかくひどいありさまだった。
だが、ニバリ落車の原因は、観客との衝突ではなかった。カメラを持っている観客本人は、きちんとコースの外にいて身を乗り出しているだけ。しかし、そのストラップが山風になびいてコース内へ長く垂れ下がり、そのループが、外側ギリギリからフルームを抜こうとするニバリのハンドルの高さと同じだった。つまり、偶然の事故だ。これは、木の枝と同じ扱い。視界不良で、右前の警察バイクに気を奪われ、前方左側の注意を怠ったニバリ本人の責任とされる。
とはいえ、二年前の第12ステージ、モンヴァントゥーでも、観客が道を塞ぎ、中継バイクとフルームらが接触する事故が起きており、以前から、観戦マナーとコース管理体制が問題視されていた。それを繰り返したという意味では、レース運営側の責任が問われる。ましてニバリがこれで選手生命を失うようなことになれば、不備では済まされない。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。最近の活動に 純丘先生の1分哲学vol.1 などがある。)
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