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小規模事業者こそ、「STP戦略」の基本をしっかりと/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2018年7月29日 19時3分

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猪口 真 / 株式会社パトス

格差が広がる大企業と小規模事業者

大企業と小規模事業者の差が歴然だ。

先日発表された、「小規模企業白書」を見ても、小規模事業者の「業況判断DI」は、改善しているとはいえ、二けたのマイナスだ。しかも、建設業だけが大きくプラスで牽引している結果でこうである。

一方、大企業は絶好調だ。こちらも日銀の発表によれば、2カ月連続のマイナスとはいいながらも、大企業製造業の業況判断指数(DI)は、なんとプラス21だ。

また、中規模企業と小規模企業の差も広がり始めている。

中規模企業と小規模事業者の設備投資の推移をみると(財務省「法人企業統計調査年報」)、昨今は、中規模企業の設備投資額は伸びている一方で、小規模事業者では2014年度をピークに減少しており、中規模企業との差が広がっている。さらに、小規模事業者の数は大きく減少し続けている。

こうした状況を見ても、約1000万人(従業員29名以下では1500万人)いる、小規模事業者の就業者は厳しい毎日を過ごしている。

小規模事業者(特にB2B)においては、少ない顧客を大切にしながら、大手にはできないこまやかなサービスを展開しながら、なんとか事業を継続している。小規模事業者といってもライバルは大手、中小も含む。顧客から見れば、発注する会社は自分たちのような規模の事業者とは限らず、大手、中小企業と真っ向勝負しなければならない。つまり、組織力や大手企業との企業としての関係性が、競合大手に比べると強くない分、より強い差別化要因を探し出し、訴求していく必要がある。

イノベーションはむしろ小規模事業者から起こるのであって、小規模事業者が元気になることこそが、全体が元気になる。

基本に立ち返る

そのためには、今一度、マーケティングの基本に立ち返り、自社(自分)が本当にやるべきことを明確にするべきだ。

それには、フィリップ・コトラーが提唱したフレームワーク「STP戦略」による分析が効果的だ。

STP戦略」とは、マーケティング・プロセスの6つ、①マーケティング環境分析と市場機会の発見、②セグメンテーション(市場細分化)、③ターゲティング(市場の絞り込み)、④ポジショニング、⑤マーケティング・ミックス(4P)、⑥マーケティング戦略の実行と評価、のうち、3つ、「セグメンテーション」、「ターゲティング」、「ポジショニング」に注力するマーケティング戦略のことだが、今の時代だからこそ見直すべきフレームだ。

顧客への情報発信の手段が変わってきたのは明らかであり、かつてのように予算にまかせたマス広告に大きな効果が望めなくなった今、市場を絞り込み、自らのポジションを確立することは、今すぐにでも取り組むべきことだ。

実際に、活躍する小規模事業者において、「小規模企業白書」の「自社の強みと感じること」を見ても、「小規模事業者は自社の事業内容のどこに強みと感じるのか」いう点について、「顧客との信頼関係が強い」「製品やサービスの質が高い」「受発注や顧客要求等への対応が迅速である」ことを強みとしていると答えた事業者が多い。つまり、自社の戦略が明確だ。

小規模事業者が取り組むSTP戦略(「セグメンテーション」、「ターゲティング」、「ポジショニング」)とは以下のような内容だ。

セグメンテーション

市場をセグメンテーションするといっても、大手企業のように、人口動態や俯瞰的なライフスタイル動向を見ていこうというものでもない。

たとえば、旅館・ホテル・宿泊施設をターゲットに絞るといっても、それは大手企業のものであり、小規模事業者であれば、そこからさらに、地域や規模、スタイルや嗜好、業績、ブランドの方向性など、様々な要素を考えて、その市場に対して自分たちの経営資源を十分に投下できるレベルにまで細分化していくことが必要となる。

ターゲティング

セグメンテーションが終わったら、その中でターゲットとするべき対象を決める作業がターゲティングだ。

どれだけセグメントしても、そのセグメントしたところが成長性も規模感もなければ意味はない。自分たちが収益を上げ、成長できるセグメント先である市場であり、かつ、自分たちの強みが発揮できなければならない。

このターゲティングをするうえで、次の2つのアプローチを考えるといい。

・いくつかの市場(企業)に向けて、共通のニーズに対応した同様のサービスやソリューションを提供する方向

・決め込んだ市場(企業)に向けて、より深い個別的なニーズに対応した、高付加価値商品やソリューションを提供する方向

いずれにしても、これまでとは異なる顧客ニーズや新たなサービスをいかに見つけ出すことができるかがポイントだ。

ポジショニング

最後のポジションニングは、顧客にとって、自分たちのサービスがどのような位置づけであるのかを決める作業だ。

ポジショニングの代表的な例としては、「価格」と「品質」の2軸によって自社商品がどの位置に位置づけされるのかをマッピングするものがあるが、ここはぜひ、ユニークな機軸を考えてほしい。「顧客に提供できるメリット」と「リスク」、「競合商品の有無や強弱」と「機会と脅威」、「将来性」と「現実性」、ユニークで楽しい、自由な軸は、新たなソリューションにつながることだろう。

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