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中小企業ナレッジワーカーの生産性を上げるために 労働生産性とは付加価値を上げることだということを忘れてはいけない/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2019年1月21日 16時48分

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猪口 真 / 株式会社パトス

労働生産性の分子は付加価値

「働き方改革~生産性を上げる」というサービスやソリューションがあふれるほど出ているが、その手段はICTを活用して働き方を変え生産性を上げましょう、仕事を効率化して残業を減らし働く人たちの負荷を減らそう、あるいは、働き方に多様性を持たせることで女性や高齢者が働きやすい環境を用意することで働き手に様々な選択肢が生まれ、多様な労働力を確保する(生産量を上げる)、というというものが大半を占める。

生産性の定義には様々なものがあり、厳密に言い切ることはできないが、基本的に労働生産性の分母は付加価値であり、生産量ではない。

一人当たり労働生産性=付加価値額/従業員数

原価割れした商品を大量に売っても生産性はマイナスであり、労働生産性を向上させるために必要なことは付加価値(利益)を上げることだ。

ただし、付加価値(利益)といっても営業利益のことではない。付加価値とは投下する労働にあたる「人件費」と労働の投下によってもたらされた「利益」となる。

付加価値額=人件費+支払利息等+営業外利益(不動産など)+租税公課+営業純益

さらに、人件費にも付随する費用がたくさんあり、法定福利費(社会保険)、福利厚生費、研修教育費、会議費・接待交際費、旅費交通費などがある。

付加価値とは、売り上げから原価などの変動費用+減価償却費(原価の一部と考えるのが妥当といえる)を引いたものと考えてもよい。

この労働生産性には、今懸案事項となっている「残業」も大量に含まれているので、より重要な指数は、また、1人1時間当たりの付加価値(労働生産性)、つまり1人の社員が1時間働いて生み出す会社の付加価値ということになる。


付加価値であるかどうかは顧客が決める

問題なのは、分子が売上ではなく付加価値だということだ。

B2Bのビジネスにおいて、特にナレッジワーカーのビジネスの場合、付加価値(利益額)を他社に比べて上げるために最も必要なことは、顧客の満足度を高めることだ。

顧客の仕事に対する満足度、仕事への評価が売上金額(利益額)のアップにつながることが少なくなく、なかでもコンサルティング業務や企画系の仕事の場合は特にそうだろう。

よく言われる「定価はあってないようなもの」というような仕事だ。

こうした業種では、会社の中の経費は人件費が大半であり、多いところでは7割近くを人件費が占める会社も珍しくない。

そういう会社で、一人当たりの付加価値が600万円とか700万円しかないとすれば、そもそも社員への給与だけでいっぱいいっぱいになってしまう。

確かにICTの導入による効率化も重要だし、働き方の多様化も必要だろう。効率化すれば多少の利益は増えるかもしれないし、少ない労働力を確保すればアウトプットが増えるかもしれない。しかし、効率化のための投資が回収できる保証はどこにもないし、取り入れた労働力がすぐに力を発揮できる仕事が常にあるとは思いにくい。

現状の中小企業のB2Bビジネスをとりまく環境は楽観視できるものではない。デフレ傾向は続いている。

ではどうすれば付加価値を上げることができるか。

生産性向上の論議は、大半が自社内のものであり、いかに効率化を図るかばかりに視点がいっているが、B2Bにおける価格の決定権は基本的にクライアント側にある。

つまり、その仕事に付加価値があるのかどうかは顧客(クライアント)が決めるということだ。現在の労働生産性向上論議は、内側の話ばかりで、顧客の問題解決や顧客の成功によってもたらされる付加価値の拡大に関する論議はほとんどない。

顧客の本当の課題の理解、課題に対する解決策の作成、実施(提供)する以外に、付加価値の増大はないだろう。

自社のサービスや商品では顧客の満足に対応できていないところは何か、顧客がさらに満足し、顧客の成長につなげるためには何を提供すればいいのかに応えなければならない。

ただし、他社との同じ土俵や同じサービス内容だけで勝負していたのでは、価格競争に陥ってしまい、むしろ、付加価値は減少してしまう。

ここに、中小企業の厳しさがある。ルーティンの仕事だけこなしていては、付加価値は下がってしまう。

いかにクライアントのニーズ、課題、成長への問題解決を正しく理解し、正確な問題認識・分析スキルを持ち、それに対するソリューション案を質、量ともに出し続けること、そして案を出し続けるために、身となる知識、スキルを自分自身に与え続けること、これらの蓄積以外に付加価値を出し続けることはできない。

コヴィー氏が「7つの習慣」で語った、「緊急ではないが重要な第Ⅱ領域活動」とはまさにこのことであり、だから、毎日「第Ⅱ領域活動」を行い続けなければならないのだ。

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