能力が変われば必然的に働き方は変わる。働き方改革とは学び方改革。/猪口 真
INSIGHT NOW! / 2019年9月20日 17時41分
猪口 真 / 株式会社パトス
働き方改革法案が順次適用されることになり、各企業とも対応を迫られている。主には、残業時間の把握や減少、有給休暇の消化だが、もうひとつがいわゆる「高プロ人材」、労働時間とは関係なく、高収入の雇用契約への対応だ。
大半が労働時間に関することだが、いずれにしても、経営側に立てば従業員の労働時間は短くなることに間違いはなく、これまでよりも短い労働時間のなかで、これまでと同等、それ以上の成果を出してもらわなければならないことになる。とはいえ急にはそんなことが起こるわけでもなく、これまでも十分に能率・効率を向上させる仕組みをあれこれ考えてきたはずだし、労働時間の減少=収益の減少ということになりそうだ。
従業員の立場に立ってみても、会社は残業をさせるな、残業代はきちんと払え、休みはとらせろという権利を保護するものに見えるが、逆から見れば、これまで休日返上で働いたり、夜遅くまで働くことで稼いできた残業代や休日出勤手当が相当少なくなるということであり、よほどの出世や営業として大きな契約によるインセンティブをもらうことしか、高収入の道はなくなったということでもある。しかも、プロフェッショナルとしてある程度の収入になると、「高プロ人材」として固定給になってしまえばそれ以上の収入はない。
こうした制度が本当に労働者の味方かどうか(いわゆるブラック企業は結局あの手この手でやってくるだろうから)は、意見の分かれるところだ。
同じ時間で多くの成果を出すには、一人ひとりの仕事の能力(知識・スキル・スピード)を向上させるか、組織全体のバリューチェーンのプロセスを改良していく、この2つが王道なのだが、残念なことに、多くのビジネスマンはこれまで会社の体制に恵まれすぎて、自ら能力開発やビジネススキル取得の方法を身につけている人はほとんどいない。
これまでは、会社に入ると、OJTで先輩社員が懇切丁寧に教えてくれた。先輩にしても、後輩を育てることで、自分も楽になり、そして出世することで給料も上がっていったからだ。ところが、現在は誰もが感じるように、こうした余裕はなくなり、昔ながらのヒエラルキーもほとんどない。おまけに残業代もカットされるとなると、先輩にしてみても自分でやったほうが残業代をもらえるわけで、後輩はむしろライバルに映る。
今ビジネスマンは、自らの力は自らで伸ばすしかない。
これからは誰も教えてくれないのだ。多くのビジネスマンは、これまでは教えてもらうことが学ぶことであった。知らないことは、「自分はわからない」と言えばよかった。わからないことはやらなくてもよかった。「わからないので、勉強させてください」という考えになった人はまれだ。
会社で奨励されている資格制度にしても、仕方なしに取得にいっている人が大半だ。英語にしても、必要にせまられてというという感じだろう。
働き方改革とかっこよくいってみても、要は残業減らしが目的だとすれば、何も変わることはない。残業を減らしたおかげで会社の収益が悪化すれば、さらに給与が減るだけだ。
結局、働き方を変えるには、学び方を変えなければならない。OJTがないのであれば、自分で身につけるしかない。むしろ、これはラッキーなことだと思おう。OJTではその先輩を超えることはできないし、これからのイノベーションのためには、先輩の考え方が邪魔になることすら多い。
制度のなかで知識を得ること、仕事の仕方を学ぶこと、これらがあたりまえの人にとって、自ら学ぶことは非常に難易度が高い。
しかし、仕事のアウトプットを変えるには、仕事に関するインプットを変えるしかないというのは自明の理だ。
「7つの習慣」のコヴィー氏も語るように、「蒔いたものしか刈ることはできない」のだ。
自分の境遇を卑下し、自分のアウトプットの少なさを周囲のせいにするのは、金輪際やめなければ将来はないことを自覚しよう。まずは、自分のなりたい姿と現状の姿を冷静に分析しよう。
そして、そこに足りないものが見つかったなら、むしろチャンスと考え、「学び」の方法を探すことだ。先輩に教えを乞うことも一つの方法だ。OJTで与えられるまま、学んだつもりになっているのと、自分で学ぶことをみつけ、先輩に教えを乞うことは、雲泥の差だ。
この主体性のあるなしが、将来の姿を決定する。
働き方改革は、「学び方改革」だ。
自分へのインプットの仕方、学び方を根本から見直し、アウトプットのクオリティを激変させよう。時間はかかるかもしれないが、能力が変われば必然的に働き方は変わる。
同じ能力のまま、働き方を変えることはできない。
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