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New Normal時代、マネージャーは受難かチャンスか/猪口 真

INSIGHT NOW! / 2020年8月16日 18時32分

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猪口 真 / 株式会社パトス

「マネジメント受難の時代」、この言葉を始めて目にしてからずいぶんと経つが、多くの中間管理職(マネージャー)は、今ほどこの言葉が身に染みるときはないのではないか。

最近、以下のような内容のコラムを読んだ。

主旨としては、業績に対するプレッシャーが強まり、一人当たりの仕事の負荷が増大している。人手不足によって年功序列が崩れ、マネージャーはプレイヤーとの兼務が増加、また、年上の部下、パートや派遣など正社員以外の人たちが増え、マネジメントが一筋縄ではいかなくなった。職場環境も大きく変わった。メールやPCによって生身の人間同士の対話が激減、飲みニケーションの場も減った。その結果、各職場で、上下関係を超えた最も濃密なコミュニケーションの場となっているのが喫煙スペース。

といった内容だった。

このコラムが書かれてから、約15年経つ。最後の「喫煙スペース」の部分以外は、現在のコロナ禍の話と同じではないか。オフィスに行くことが減り、ビル全体が禁煙となる会社が多いなか、喫煙スペースでのコミュニケーションすらできなくなっている現状では、マネジメント受難どころではないという話だろう。

15年前でもこうだったうえに、その後、働き方改革と言われて、上司からの残業命令はできなくなり、働く人の環境を向上させるべく、マネージャーの負担は大幅に増えた。

そこにコロナ禍だ。まさに、マネージャー受難であり、もはやどうしていいのかわからないのが現状だろう。

マネージャーへの警告も多い。「テレワークが減ることはない。働き方の多様化を目指し、企業は、さらにテレワーク、リモートワークを推進しなければならない」「多くの若いビジネスパーソンは、テレワークを継続してほしいと考えている」「出社することが仕事の人はもういらない」といった論調が主流だ。中には、「デジタル化に対応できないマネージャーはもういらない」といった話すらある。

また、これからのwithコロナ時代においては、新たなマネジメントスタイルを取らなければ、この先は厳しいという話も多く、評価を「ジョブ型」へと変える、目標を常に共有する、プロセスではなく成果の報告をさせる、バーチャルな空間を共有する、時間管理は各自に任せる、などといった「ご提案」が識者と呼ばれる方々から発信されている。

しかし、こうしたことが簡単にできるマネージャーは少ない。そもそも、日本企業のマネージャー(部長や課長クラス)に「ジョブ型」へ評価方法や給与を変えることができるマネージャーがどれほどいるのだろうか。(役職の変更に関しては、上長が決める場合もあるようだ)

また、ジョブ型というからには、成果重視型ということもできるだろうが、そもそも成果を出している社員が誰で、どれだけいるのかというのは、このコロナ禍でなくとも、優秀なマネージャーはすでによくわかっている。

さらに、こうした視点は、スタッフの能力やスキルを平均化しすぎている。よく、80/20の法則などといわれる(2割のスタッフが8割の利益を稼ぐ)こともあるが、実態は、8対2どころか、9:1、95対5だと感じるマネージャーは少なくないだろう。

実際には、このコロナ禍で、その姿がよりあらわになっていると思う。日本の心優しいマネージャーたちは、それを口にしていないだけだ。

もちろん、目標にしてもそうだ。わざわざ目標を共有するなどしなくとも、できるスタッフは必ず自分で高い目標を持っていて、常に上司やクライアントの期待以上の仕事をしようとする。それは、コロナ禍でも関係なく、マネージャーの仕事は成果を出しやすくするためにクライアントとの関係をさらに高めたり、使える予算やリソースを確保してやることだ。

そうなれば、プロセスではなく成果の報告をさせることも、意味がないということがわかる。優秀なマネージャーは、報告されることがプロセスだろうが結果だろうが、そのスタッフのスキル、働きっぷりは百も承知だ。

バーチャルな空間を共有することも、これまで会議に参加するだけだった仕事の仕方と何が違うのだろうか。こうした指摘は、オンラインミーティングで絆を深める的な、非常時には効果的な方法だとは思うが、それが恒常的な解決策とはまったく思いにくい。

時間管理の方法は各自に任せるというのは、フレックスや、働く時間の自由裁量を意味するのだろうが、先ほど述べた、成果を出している5%~10%のスタッフに対しては問題なく、むしろそうすべきだろう。

しかし、仕事を自分で組み立てるスキルを持たないスタッフまで同じ対応をすれば、どういうことになるかは明らかだ。

本当にマネージャーは受難だ。完全に、これまで行われてきた、中間管理職の仕事と「思われた」仕事はほぼなくなった。

そこにいなくてもマネジメントできる、市場のニーズと自社のニーズを読み込み、的確な戦略策定とプロセス管理を行う、本当のマネジメントスキルが求められているからだ。

そういう意味では、マネージャーはいい機会を得ているともいえる。会社の経営陣は、できるマネージャーの有難みがわかったのではないか。報告の仕方やこれまでの管理業務がマネージャー業務ではなかったことが明白になったからだ。

期待された以上の成果を出してきたマネージャーは、縁の下を支える役目として、これまでもやってきたことであり、とりたてて問題になることもないだろう。これまでの業績は、こうしたマネージャーの力によって築かれてきたのだ。そういうマネージャーのスキルはあまり表に出ることは少なかっただけだ。

マネージャーは自信を持って、今こそ、自分のスキルを再構築し、勝負に出る時期が来ていることを肝に銘じなければならない。

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