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バイヤーの神髄とカスタマーサクセス/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2020年12月24日 10時0分

バイヤーの神髄とカスタマーサクセス/野町 直弘

野町 直弘 / 調達購買コンサルタント

前回のメルマガで、「バイヤー業務には万歳がない、と言われている」と書きました。これは逆に言うと「チャレンジするバイヤーや失敗を乗り越えたバイヤーだけが、万歳!と言える」ことをお伝えしたかったからです。

これに対して、私の友人のZhenさんが「グローバル調達とものづくりのリアル」というご自身のブログで「バイヤーに万歳を!」というタイトルで、こう書かれていました。「自分のことを思い起こすと、たくさんの万歳があった。」「それは、責任と権限の明確な仕事を淡々と熟すだけの業務遂行と真逆のことをしてきたからだ。」
「淡々と右から左に仕事を流すだけであれば、面倒なことになる確率はさがる。しかし、面倒くさいことをやるから会社は、給料を払ってくれるのだ。それに面倒くさいことには、往々にしておもしろいことが潜んでいる。 誰もやっていないこと、成功していないこと・・・といった困難に同志とチャレンジすれば、必ず万歳がある。」と、正にその通りのことを、ずばり書かれてました。

いや、その通りです。

今年も年の瀬になりましたが、特に印象に残っていることは、調達購買の手法や方法論などの、技術論ではなく、バイヤー魂を感じる機会が、多かったことでしょう。今年も、色々な企業の色々なバイヤーの方と話す機会がありました。そういう機会の中で、たいへん興味深かったのは、優秀なバイヤーほど「バイヤー業務(仕事)が楽しい」とおっしゃっていたことです。特に今年は、そういうバイヤーが身の回りに多くいたことを感じました。

あるバイヤーは自分が考えた通りのシナリオで、コスト削減ができた時が楽しい、とおっしゃってました。また、あるバイヤーは、自分が探してきたサプライヤを開発部門に紹介、提案し、技術革新を起こし、それが自社の競争優位につなげることを実現できて、「こんな仕事は(他の職種では)なかなかできない」とおっしゃっています。

Zhenさんも「発注とは、サプライヤとジョイント・ベンチャーを組んだようなものだ。」と書かれています。このように、優秀なバイヤーの共通点の一つは、自分の仕事に壁を作らずに、次々にチャレンジしていることです。また、もう一つの彼らの共通点は、競争よりもむしろ協調を重視していることが上げられます。

先日、Twitterや様々なメディアで活躍されているストラテジストの永江一石さんが、ブログで「BtoBに共通するカスタマーサクセスという考え方」という記事を書かれていました。

ここで永江さんは「B2Bのビジネスは基本的に継続的な取引であり、いわゆるサブスクが主流である。」サブスクが成り立つ前提は「取引先に成功体験を積ませること」であると書かれています。
これが「カスタマーサクセス」という考え方です。

「カスタマーサクセス」を積ませる(実感させる)ために、「効果測定」→「効果を上げる施策の提案・実行」→「レビューと再提案」という、いわゆるマネジメントサイクルを回していくのが取引先(顧客)との関係性を強化するための定石なのだそうです。
ここで重要なのは「取引先にしっかりと利益を出させることを意識すべし」と、永江さんはおっしゃっています。

ここでのカスタマー(取引先)=顧客という定義ですが、これをサプライヤ(パートナー)と読み変えても全く違和感がありません。「B2Bの取引でサプライヤの利益を出すことができれば、自社の収益やメリット、競争力強化につながる」ということです。

従来、調達購買部門はサプライヤを競争させ、コストを削減する、ことが仕事だ、と思われていましたが、実際にはB2Bの場合、殆どが、長期継続的な取引であり、サプライヤ(パートナー)の「カスタマーサクセス」を実現させることで自社の収益やメリットにつなげていく
ことが、本来の役割であり、機能と言えるでしょう。

先に申し上げた「バイヤー業務は面白い」とおっしゃっているバイヤーの共通点は、正にサプライヤ(パートナー)の「カスタマーサクセス」を実現させることができているバイヤーです。

正に、バイヤーの神髄を実現できている方たちと言えるでしょう。
逆にいうと「カスタマーサクセス」を実現することが、自社のサクセスにもつながり、それを実現することで「バイヤー業務の面白さ」を日々感じているのではないか、と考えられます。

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