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オンライン合同説明会で学生に響く企業説明/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2021年3月9日 8時0分

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増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・2020年3月で世界は変わった
就活、採用する企業にとっては採用活動ですが、昨年の3月から大きく世界が変わりました。合説はわざわざ大学や説明会場に足を運び、直接席で語り合うものだったのが、このときを境に、基本はオンライン、Zoomのウェビナーなどオンライン会議ツールを通じて行うものとなりました。

ごく一部に「オンラインでは迫力が伝わらない」「オンラインでは学生の意欲が感じられない」ということで、リアルの対面説明にこだわる企業があるとのこと。しかしコロナ渦で安全を考えないような旧来の方式に固執する姿勢は、リスクマネジメントが出来ない企業と見なされていることでしょう。

最終面接まですべてオンラインで行う企業も珍しくなくなり、少なくとも合同説明会レベルまでは、基本的にオンラインが前提となっています。急な環境変化ではありましたが、各社は昨年の経験を経て、今シーズン、いわゆる22就活には、オンライン化への完全対応が出来ているようです。いや、できなければもはやまともな大学生の採用は不可能な環境へと変わりました。

・オンライン合説のメリット
オンライン合説はまたたく間に全国を席巻しました。なんといってもオンライン化のメリットがやってみてよくわかったからです。特に地方大学で、わざわざ大都市まで移動しなければ参加できなかった合説や、各大学に企業を招いての説明会は、オンライン化により一気に全国が一律に実施できることになりました。

授業のオンライン化には批判もありますが、残念ながらコロナへの安全性が確保できない以上、「オンラインが嫌」という気持ちはわかりますが、他に代替できる手段がありません。世界的な感染症に対して、「あるべき論」でしか反証できない意見が通ることは難しいでしょう。

また参加者とのコミュニケーションは「味気ない」とか「熱意や真意が伝わらない」という意見があるものの、単に慣れと方法でいかようにもコミュニケーションは取れると思います。正論より実利が認識されているからこそ、オンライン説明会は完全に定着しましたし、この先コロナが解決した後も、続いていくだろうと思います。

・オンライン合説における企業の課題
さて私は全国のさまざまな大学や就活イベントで基調講演や就活セミナーを行ってきました。私の講演後に参加学生は各社の説明を聞き、リアルな対面合説同様に質疑応答を行います。

今ではすっかり企業側も慣れ、各社それぞれに工夫も見られます。一方で、未だに「単にリアル説明会を映像化しただけ」の古くさい説明企業が、かなり多いのではないかと感じています。

私は学生に企業の見方、企業研究手法を指導していますが、その際の最も重要なソースが一次情報です。つまり企業自身が発する情報こそ、学生にとって重大な判断材料となります。その説明会がつまらない、中身の薄いもので大丈夫でしょうか。

特に私は長年国立大学など上位校の理系大学院生を指導してきました。理系学生が知るべき企業情報は文系と違い、技術や製品情報が欠かせません。最近は技術者出身・理系の人事担当者もずいぶん増えてきました。それでも自社製品や技術について語らず、経営理念やら福利厚生ばかりのつまらない説明会に陥っている企業はかなり見ています。

・オンライン合説の鉄則「言いたいことより、聞きたいこと」
創業者の話や経営理念など、外から見ればほとんどの企業はたいして差はありません。オンライン説明会は10分から長くて30分程度と限られています。限られた時間で企業が伝えたいことばかり話しては、学生は退屈します。

私は大学でオンライン授業に早くから取り組み、対面授業以上に成果を得ていると感じています。それにはオンラインならではのすすめ方があり、チャットやQAを活用してインタラクティブなコミュニケーションを絶えず意識することが欠かせません。テレビ出演時には秒単位で台本があり、進行があります。司会の方が台本をすっ飛ばしてアドリブ進行することもあります。

何よりオンラインでの話すスピードは、普段から早口の私くらいでちょうど良いくらいな早さが求められます。テレビ番組以上にネット番組は早口で進みます。聞きたい情報が出てこずにえんえんとどうでも良い話をされる説明は、その会社への意欲や関心を大きく失わせると考えられます。

さっさと学生の関心事に入り、学生の意欲を引っ張ることを、オンラインで実現するという目標を立てて下さい。

・学生が欲しがる情報
学生側も情報の取り方では混乱しています。学生が気にする「社風」とか「職場の雰囲気」「若い内からチャレンジ出来るか」など、実際にはどうでも良いことです。そもそも合説や採用で接する社員と実際に職場で一緒に働くことなどありませんから、社風など気にしても意味がありません。

職場や上司によって雰囲気など全く違うのが普通でしょう。若くしてチャレンジしたいというのは、苦労したくない、好きなことをやりたいという学生のある意味勝手な希望であり、仕事が出来ればそうした機会も得られるでしょうが、こればかりは働いて実績を上げなければ何とも言いようがありません。

そんなことより会社に入ったらするであろう仕事の内容、その求められる成果、成果の評価(人事評価)といった、一番根本となる仕事の中身こそ一番重要です。「営業」とか「研究開発」ではなく、何を、どこで、だれに、どうやって売るのか。大学の研究をそのまま続けられる訳ではなく、目指す開発分野、そこで期待される市場性、その市場やニーズ自体の今後の変化。変化に伴うビジネスモデルの変化対応など、ここが一致しなければ仕事にはならないと思います。

・構成が命
つまり合説では、意味があるかどうかは別に学生が知りたそうな話をきっかけにして、実際に働く上でのマッチング上大切な業務内容について、いかに伝えられるかという構成を考えていただきたいのです。話の上手さ以上に構成は重要です。

学生が聞きたがるからと、えんえん福利厚生や教育システムの話ばかりでは、権利意識しか生まれません。そこに触れつつも、重要な業務適性に話を持って行ける構成力、プレゼン力がかつてないほど重要といえるでしょう。

貴社が人気企業であれば、説明をなるべく短くしてQ&Aに入る方が良いかも知れません。一般知名度の低いB2B企業であれば、変に学生に名前を売ったり社名の由来を語るより、さっさと自社の優位性を技術でも営業でも何でも話しましょう。元から知らない会社なのですから、今日から知ってもらえば良いのです。

Q&A対策にはサクラ作戦
特にQ&Aは決定的に重要です。しかしこれまた多くの企業は「何か質問はありますか?」と投げっぱなし。質問がなければ時間前に閉じてしまうというもったいないことをする社もあります。投げっぱなしは超人気企業だけに許される姿勢で、ただでさえ自分から行動するのが苦手な学生、引っ込み思案が多い理系学生には絶対に「誘い水」がいるのです。

サクラのようにダミー学生を混ぜられたら一番だろうと思いますが、普通はできません。そこで社歴の浅い、一番欲しい学生層に近い経歴の社員をダミーにして、疑似サクラ学生のように質問してもらうのも有効です。

採用活動をアドバイスしている企業さんとはさまざまな角度から学生への関心喚起策を考えますが、そうした努力があれば、オンライン合説は宝の山だと思います。特に一言メッセージや1分メッセージの機会は重要ですから、練りに練った内容を用意して臨んで下さい。採用成功のためには、こここそコストと労力を投入すべきところです。

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