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PDCAサイクルとアウトソーシング/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2016年4月21日 14時15分

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野町 直弘 / 株式会社アジルアソシエイツ

品質管理の大家であるエドワーズ・デミング博士が推奨し、別名デミング・ホイールとも呼ばれるPDCAサイクルですが、やはり長い間コンサルタントをやっているとその重要さを身にしみて感じる場面が多くあります。

PDCAとは言うまでもなくPLAN-DO-CHECK-ACTIONの頭文字をとったもので、品質管理に限らずあらゆる業務や企業経営そのものにも適用できる考え方です。
私はその企業でマネジメント(経営管理)が行き届いているかどうかは、このサイクルが回るような仕組みができているかどうかによって判断できると考えます。そしてサイクルが人に頼らなくても回せる、所謂属人性が排除できているかどうか、があらゆるサイクルで一番の課題と言えるでしょう。

しかし、特に調達購買業務においても多くの企業でこのPDCAサイクルが回っていない状況が見られます。例えば調達購買機能を強化したい、集中購買の範囲を拡大していきたい、間接材購買のチームを立ち上げたい、などの改革についてはPDCAのうち特にDの部分ができないことが多いようです。

「P(企画・検討)は何度もやっているのだが、D(実行)に移せない」という声をクライアントからよく聞いたものです。理由は様々なのですが、やり方が分からない、社内の説得に時間がかかる、上司の承認が取れない、実行した時のリスクを考えるとやり切れない、人材がいない、専門家がいない、などが上げられます。

そうするとP-Dの部分(特にD)をアウトソーシングしようとします。例えばコンサルティング会社に戦略を作ってもらい(P)、実行支援(D)を依頼する。間接材購買で言えばコスト削減推進などをアウトソーシングしコスト削減実行(D)をしてもらうということです。

特に間接材購買は社内(調達購買部門)に専門家がいないことが多いので、外部の専門家に依頼したほうが上手くいくと思われがちなのでしょう。

私はアウトソーシングの一種であるコンサルティングで生計を立てている身分ですので、このようなアウトソーシングの活用自体を否定するつもりはありませんが、アウトソーシングは上手く活用しないととんでもない結果がもたらされてしまうこともあります。

「やり方が分からないから意見を参考にして進めていく」とか「やり方は分かっているけどアウトソーシングを活用することで早く上手く実行できる」という場合はいいでしょう。
しかし丸投げに近い形で自分たちでやったこともないことをアウトソーシングしてしまうのはあまりお勧めしません。丸投げでアウトソーシングしたとしても最終的には自分たちでPDCAを回さなければならないからです。

そういう企業さんから相談を受けると私は「まずは自分たちでDをしましょう。その後アウトソーシングした方がよいです。」とアドバイスします。ただやはり様々な事情から丸投げに近い形でアウトソーシングを行うことからスタートする企業も少なくありません。一時的なコスト削減プロジェクトであればそれもありでしょう。しかし多くの日本企業に求められているのは調達購買業務の改革を行いPDCAを回しその仕組みを定着させることです。

一方で自分達である程度PDCAを確立した上でアウトソーシングをしていくことは自然な成行でしょう。それでは調達購買業務のアウトソーシングはどのような形で進めていくべきか。

調達購買業務は大きく分けて契約プロセス(コスト削減実行なども含む)と購買実行プロセスに分かれます。また契約プロセスでも単に必要な都度、見積を入手してサプライヤを探してくるような非戦略的な案件とサプライヤ戦略やリスクマネジメントなどの戦略に基づき推進する契約プロセス(戦略ソーシングと呼んだりします)ではやはり業務の重要性や難易度も
変わってきます。

これらのプロセスの中でもアウトソーシングに向いているのは、やはりルーティン化している業務です。アウトソーシングの基本的な考え方はルーティン業務を外に出して業務コストや業務品質を高めること、です。これ以上でもなく以下でもありません。そう考えますとやはり購買実行プロセスにかかる業務のアウトソーシングが中心となり、一部非戦略的な案件に関する契約プロセスにかかる業務が向いていると言えます。

間接材購買などではコスト削減業務を代行するアウトソーシングを提供している企業があります。私はこれを否定している訳ではありません。以前米国でFreeMarketsという企業がありました。同社は全世界から有力なサプライヤを探してきてオークション等を実行し、コスト削減につなげるというサービスを間接材だけでなく直接材においても提供してきました。
その後FreeMarkets社はARIBA社に2004年に買収され、ARIBA社は従来のFreeMarkets社のソーシングサービスをその後Accenture社に売却。また、ARIBA社はSAP社に買収されています。FreeMarkets社のソーシングサービスは現在Accenture社の包括的なBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の事業の一部になっていると言えます。このようにソーシング事業(企業)の歴史を見て改めて感じるのは、やはりコスト削減代行はあくまでもオプション的なサービスであり、アウトソーシングの基本的な考え方はルーティン業務の業務代行だということです。

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契約プロセスは調達購買側にとってはサプライヤとの重要なコンタクトポイントとなります。
バイヤーの主要な役割はコスト削減だけではありません。サプライヤと社内の仲立ちになり価値をもたらす情報源となることもその重要な役割です。契約プロセスをアウトソーシングすることはこのようなサプライヤとの貴重なコンタクトポイントを得る機会を自ら失することにつながります。これはサプライヤとの信頼関係の欠如につながり、サプライヤは次第にあなたの会社を向いて仕事をしなくなります。

業務の優先度や重要度、経営資源の配分などの様々な事情はあるものの、短期的な成果だけではなく、PDCAを回すことを重視し、それを上手くサポートできるようなアウトソーシング活用を進めていくことを企業は考えなければならないのでしょう。

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