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許される不祥事/許されない不祥事の違い/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2016年7月6日 6時30分

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増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

・ベッキーとゲス氏の違い
年明けからたいへんなスキャンダルとなったベッキーさんの騒動ですが、いまだかつてのような芸能活動は再開できていません。一方、その相手となったゲスのきわみ乙女の川谷さんですが、こちらも根強い批判にさらされ続けています。被害者は元妻であって、この当人お二人は加害者なので、いつまでも許されないのでしょうか?

国民的タレントで好感度がトップクラスだったベッキーさんにとって、このスキャンダルは正に芸能生命を脅かすほどの大問題となりました。結果として収束を図るはずの記者会見がさらに燃料投下となってしまい、半年たった今もレギュラー番組やCMへの復帰はできていません。危機はまだ続いています。

一方の川谷さんですが、こちらも激しい批判が続き、現在も表舞台には出ていないようです。しかしこの方、そもそも表舞台の人だったのでしょうか?昨年のNHK紅白歌合戦にまで出場するほどのメジャーになったバンドですが、決して日本中誰もが知っているような存在ではないと思います。

つまり客層がベッキーさんと川谷さんは全く違うのです。広く国民的タレントで、誰にも好かれる好感度を武器にその立場を築いた人と、知る人ぞ知るインディー系出身バンドでは、その提供する芸能・芸術の対象が全く異なります。


・お客は誰?
ゲス川谷さんへの批判はいまだに根強いものがあると思いますが、一方でコンサートやイベントを中止して謹慎しているという話はありません。元々テレビCMがあった訳でもないでしょう。スキャンダル後、現在も芸能活動を続けているのは川谷さんの方です。

それゆえ相手の女性が強い批判にさらされているのに、男の方が活動をしていることへの批判はいまだ止みません。しかしその批判をしている人は誰でしょう?

危機管理の事態収拾できわめて大切なことは「相手は誰か」という特定です。ゲスのきわみのファンであっても、今回のスキャンダルで離れた人はいるでしょう。しかし離れない人もいるからこそ、今でもコンサートや音楽番組出演は続いています。つまり世間一般ではなく、特定のコアなファンこそが「自分たちのお客」であることを、特定できているのは川谷さんということになります。

お客を握ってさえいれば、お客でない人からの批判は耐えることも可能になります。批判をしている人は元から自分たちの音楽にお金を払う人ではなく、CDも買わないしコンサートにも来ません。しかし一方のベッキーさんはそうはいきません。広い世間一般がお客さんですから、そこからの批判が止まない以上、活動再開などできず、現在に至っているのです。


・倫理と商売
つまり世間の批判と商売は別物。倫理や道徳に反したという批判があっても、自分の商売が継続できるスタイルのビジネスモデルと、そうでないビジネスモデルがあるということです。昭和の伝説的俳優の勝新太郎さんなど、麻薬で有罪になっても「勝新だから」と納得してしまう存在感がありました。立川談志さんも亡くなる前から放言・トラブルはしょっちゅうありましたが、「談志だから」で済んでしまう存在でした。

さすがに法律違反はもはや許されなくなりましたが、倫理や道徳といった点であれば、アウトロー的な存在感を売りにした昭和の芸能人であれば、客も認めてしまう(許してしまう)風潮があったといえます。単純に善悪だけで結果が決まるものではないのは、芸能というものがただの情報やロジックではなく、感情を揺さぶる作品だからでしょう。結果としてみれば、川谷さんがどれだけ世間から批判されても商売ができているのは、そのビジネスモデルのためです。

舛添知事の場合、自分を知事職から追い払えるのは都民ではなく、与党しかいないという制度上の特質を見抜いていました。リコールシステムの限界で、都民が知事をリコールするのは、方法としては可能でも現実には不可能というシステムの欠陥を知り抜いていたのでしょう。舛添氏のビジネスモデルでは与党が支える限り、自らの地位は安泰との判断だったと思います。

目算が狂ったのは、自らの傲慢な態度がその与党にまで批判として広がってしまったことです。与党も自分たちの選挙に影響が出てまで舛添氏を支えることはできません。舛添氏は「お客」を見誤ったと言えるのではないでしょうか。

危機の事態収拾では、こうした冷徹な分析が欠かせません。批判や炎上でパニックになれば、冷静な判断もできなくなります。ビジネスを継続したいから謝罪によって事態収拾を図るのであって、単に詫びれば済むのではありません。自分のビジネスを支える「客」が誰で、その客が自分の商売を支持し続けてくれるかどうか、その基本を押さえた上で謝罪があるのです。

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