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【改訂】内定辞退を乗り切るための謝罪作法 2017/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2017年7月4日 6時44分

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増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

空前の採用ブームとなった現2018就活(2018年4月入社新卒)ですが、複数内定ゲットも多々見られるようです。しかし複数内定のメデタさも一段落すれば、いよいよ1社「だけ」に絞り込む作業と、絞った結果、お断りを伝えるという作業が残っています。

1.就活都市伝説
今から30年以上前、バブル時代の就活の話です。ある有名企業に内定辞退を伝えに行ったところ、コーヒーをぶちまけられ、同時に1万円札を渡されたという伝説がありました。(ラーメンだったりカレーの話もあり)この話は筆者が学生時代から語り継がれる都市伝説ですが、今だに語り継がれるくらい内定辞退は恐怖の対象といえるでしょう。

他にもえんえん説教くらったとか、交通費返還、損害賠償を請求されたなどの話もあります。こちらは伝説ではなく事実かも知れません。しかしそれがどの程度のものだったのかは当事者しかわかり得ません。怒られなれていない若者にとって、何より実体のわからない「怒りを浴びる」行為は恐怖なのだと思います。

都市伝説では口裂け女というものが40年以上前に流行りました。当時小学生はもし会った時に口裂け女が嫌がる(喜ぶ)角砂糖を持参して毎日学校に通ったと言われるほど、伝説、つまりはウソでも信じられたものでした。「コーヒー伝説」も同じです。要するに会社員として仕事をしたことがない学生や、年上の他人から怒られるという経験のない若者が、初めてぶつかる違和感が増幅し、正に伝説レベルまで変化したと考えられます。これは文化人類学的な古代宗教や神話のソースと似ていて、人間の本能である未知への恐怖心が生み出しているとすれば、口裂け女伝説と同じようなものかも知れません。


2.内定辞退でするべきことの整理
内定(内々定)にもいくつか形態があり、単に企業からメールで内定を知らせてきたもの、正式な内定通知として郵送や手渡しされたもの(正式な社印あり)、中には電話だけというものもあるかも知れません。いずれにしても、何らかの形で内定受諾の意思表示をしているのであれば、入社しないと決めた場合、その旨伝えることが内定辞退です。相手企業が確実に入社を取りやめることを認識させるという作業です。

つまり内定辞退とはビジネスにおけるコミュニケーションの一つなのです。もちろん相手企業にしてみれば、採用予定だった学生が減ることはダメージです。人事担当は責任を問われることもあります。それゆえ単に内定を辞退すると告げるだけではなく、「お詫びをすること」が必要です。内定辞退を伝えただけで収まることも普通にありますし、説明に呼ばれることもあり得ます。

しかし企業側は平気で採用を見送ってくるくせに、なぜ学生だけお詫びをするのか反発を感じるかも知れません。これはビジネスで発生するトラブルや謝罪と全く同じ現象です。つまり自分に非があって謝るのは、人間として誰でも当然できますが、ビジネスの上で発生した問題には必ずしも自分に非が無いとか、同僚や上司、部下など関係者が原因で起こったもの、取引先やら市場・自然環境など不可抗力で発生したものなど、およそ「自分は悪くない」にもかかわらず、お詫びをする場面が多くあるのです。


3.謝罪の障害
自分が悪くないのに謝るとは、何とも理不尽です。ではなぜ社会人はそんな理不尽さを飲みこんで謝罪するのでしょう。もし自分が謝らなければ、その問題は会社全体に及び、結果として事業に悪影響が出たり、取引を失ったりする恐れがあるからです。つまり社会人の仕事とは、自分一人で完結することはまずありません。だから就活ではコミュニケーション能力が大事だ大事だとさんざん言うのです。面接でもグループディスカッションを課すのは、良いアイデアや発言を評価したいのではなく、チームとして組織として活動できる、集団競技の適性を見るためです。

謝罪ができない人は社会人でも珍しくありません。今年は特に芸能人や政治家等、記者会見で謝ったはずなのに返って反発と怒りを呼んで炎上する事件が多発しています。筆者は大きな記者会見のたびにテレビや新聞などから取材を受け、こうした著名人の謝罪の作法について指導をしましたが、その際に一番注意すべきだとしたのは事態の鎮静化を目指すことです。多くの人は鎮静化よりも自己正当化を優先してしまいがちです。

自分が悪くない、会社選択は権利、そもそも立場は対等だから謝罪など不要、いずれも間違っているとは思いません。しかしそうした個人の感情へのこだわりはめんどうな事態を何も解消しません。さっさと事態を処理して楽になるためには、一旦自分の感情は横に置き、今、この内定辞退というコミュニケーションプロジェクトに立ち向かうことです。まずは事態の収拾を図るのだと肝に銘じましょう。これは就活で内定を得るよりさらに上のレベルとなる、実践ビジネスコミュニケーションです。

大切なことは内定辞退をするあなたが悪いから謝罪をするのではなく、社会における雇用契約というビジネス上の問題を解決するための交渉をするのだという認識を持つことです。人格や姿勢、人生観などは一切関係ない、大人の行動が求められているのです。ここはトラブル収拾において決定的に重要な心の持ち方なので、十二分に理解して下さい。


4.内定辞退の手順
具体的手順としてはトラブル処理の鉄則、初期消火からです。つまり一番早く辞退の情報を届ける手段から始めます。それは電話でしょう。メールは即座に届いても、開封されなければ情報として伝達できたことにはなりません。まず電話をし、これまで採用でお世話になった窓口の方(多くは内定通知を送ってくれた人事部門の方)に伝えます。特定個人ではなく、「人事部」とか「人事課」「HRグループ」など部門で対応している場合は部門代表に電話することになります。


不在だった場合はかけ直しで良いですが、一度電話した後であればメールを送るのも悪くありません。メール本文にて、「先ほどお電話いたしました〇〇大学〇〇学部4年の〇〇ですが、まずは取り急ぎメールにて失礼させていただきます」と書いて、要件を伝えます。ただしメールを送った後も、しつこく相手が捕まるまで、電話は続けることを忘れないで下さい。

今行っていることは、いたずらをして小学校の先生に怒られているのはありません。ビジネス交渉です。交渉から逃げるのではなく、会いづらい相手に、苦手な内容を伝えるという、非常に高度なコミュニケーションです。先方からメールで、「本件了解」という返事が来ない限りは、決してこちらから連絡をあきらめてはなりません。

さらに高度なテクニックとして、直接お詫びに行くという手段もあります。いずれにしても、一度着手したら、結果を出すまで最後までやりぬいて下さい。仮に電話や面会で激しく怒られたとしても、先方はあなたを勝手に入社させることは不可能です。あなたの意思が決まっている限り、コンプライアンスの求められる企業社会で強制入社は絶対にありません。


5.交渉が終わって
ここで述べた内定辞退のプロセスをどう感じたでしょう。とても勇気が持てない恐ろしいものでしょうか。しかし会社に入った後は、日常的にこうした謝罪の場面は訪れます。特に文系の営業職や企画職など、人と接する仕事をする業務であれば、どんなことがあっても逃げることのできない「仕事」の一つです。

しかしこの厳しいコミュニケーションを学生の内にクリアできたらどうでしょう。就活面接通過どころか、その何段階も上のレベルの、実践ビジネスコミュニケーションに成功したことになるのです。就活では、わずか数か月~半年程度の間に大きな自己成長が見られます。就活が終わった後でも、これだけの困難な課題を処理できれば、確実に人として、社会人として成長するのは間違いありません。内定辞退という経験を経ずに入社する学生より、二歩も三歩も差が付くことになるでしょう。

皆さんの成功と、事態をくぐり抜けた末の大きな社会人としての成長を祈ります。

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