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中小企業の調達購買/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2017年12月6日 10時0分

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野町 直弘 / 株式会社クニエ

中小企業の多くには調達購買部門はありません。専門部隊として部門が設置されるのはある程度企業規模が大きくなってからでしょう。

一方で営業部門、技術部門、経理・財務部門、総務部門などは比較的早い段階から専門組織化することが多いのではないでしょうか。
それでも必ずどこかから何かを買っているのが企業です。

調達購買部門が専門組織化されないのは、誰かがその機能を担っているからでしょう。
まず考えられるのは社長がその機能を担っているケースです。これは立上げ当初の企業ではよく見られます。社長にとって会社のお金はニアリーイコール自分のお金です。当然のことながら自分のお金(財布)ですから無駄なお金の使い方や価格の高いものにはものすごく高い感度を持っています。企業によっては技術部門の人間が仕入担当だったりするでしょう。彼らは自分の開発製品の収益に責任を持つ立場
ですから購買に対しても高い感度を持っている方が多いです。

両者に共通するのは自分の財布という概念をもっていること。

しかし中小企業は大企業とは異なり多くの購買手法は通用しません。ボリュームディスカウント、相見積、サプライヤ評価、そもそもサプライヤさんに売ってくれという立場です。そう、立場が替われば大企業向け購買手法は通用しません。
私は今まで多くのベンチャー企業の調達購買立上げのお手伝をしてきましたが、驚くべきことが一つあります。
汎用的なサービス、物品などの購入価格を相場比較することをベンチマークといいますが、それをすると多くのベンチャー企業で最安値ではないが最安値に近いコスト水準だったりするのです。
これは、調達購買機能を担っている誰かが、自分の財布という感覚を持ち粘り強く交渉しているからでしょう。(以前こういう中小企業の購買をサポートするサービスを本気で考えていましたがリーマンショックの影響などで結局実現しませんでしたが。。)

しかしいつからか中小企業は個人で購買機能を果たすことが難しくなってきます。それは企業規模が大きくなり、関係者が増え、一人で見れる範囲に限界が来るからです。そうすると多くの企業は予算管理制度を導入し始めます。予算管理制度はよく考えられたやり方ですが、一方で自分の財布から支払う感覚がなくなってきます。自分が自分の為にする買い物で数百万円の買い物の場合、見積り、中身を確認せずにお金を支払うことは通常考えられないでしょう。
しかし会社の買い物は数百万円の買い物=少額とみなされ、のようなことがあたり前になってくるのです。そうすると次の段階では買い物をする専門部隊をつくろう、ということになります。これが調達購買部隊の立上げです。

私の過去の経験からベンチャー企業での調達購買部隊の立上げ時に意識すべきことは4つだと考えています。
クイックウインによる早期のコスト削減成果出し、購買規定・購買ルール・ガイドラインの作成による社内でのルールつくり、全社員に対するコスト意識改革、そして最後はカテゴリ管理の仕組みです。

中でも一番大切なのは全社員に対する意識改革でしょう。物を買う専門部隊を作り予算執行部署を独立させ、予算管理制度を導入したとたんに予算=自分の金という意識になってしまいます。これは最も危険な兆候です。

予算を持たせるのであれば収益予算を持たせるべきでしょう。いわゆる機能部門が予算を持ち、予算の範囲内であればOKということでは非常に危険です。お金を使うことに緊張感を持たないといけません。そして機能部門は事業部門と協業し常に収益予算を意識する必要があります。これは会社の中にミニ経営者を作ることにつながるでしょう。また機能部門は全社的な視点からミニ経営者をサポートしていきます。

調達購買部門の役割としては全社視点でサプライヤとの信頼関係を築くことです。この信頼関係は何かトラブルがあった時力になってもらえる仲をつくることに相違ありません。そしてこの信頼関係は企業規模が大きくなっても続いていきます。これがベンチャー企業での調達購買部門の立上げ方のコツと言えるでしょう。


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