あえて「開発に時間がかかりそうな企業」を選ぶエンジェル投資家の視点

ITライフハック / 2014年6月11日 10時0分

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『「人月って言葉、失礼ですよね」 Rubyの生みの親Matzがソフト開発者に伝えたいこと』で紹介してきているように、DODAエンジニアITでは、さまざまな業種の著名人が登場してエンジニアたちへハートフルで有益なメッセージを送ってきている。著名人の中には、ゼロから会社を起こし、上場まで成し遂げた人がいる。

今回紹介する鎌田富久(かまだ とみひさ)氏も、そうした著名人のひとりだ。同氏はフィーチャーフォン向けのWebブラウザで圧倒的シェアを誇る「NetFront」の開発者だ。自らの経験を活かし、スタートアップを支援するTomyKを設立。現在は、10社ほどの会社をサポートしている。

■学生時代に起業
鎌田氏は東京大学博士課程に進学し、コンピュータサイエンスを専攻。その学部在学中から会社を起業しビジネスの世界に身を投じた。普通なら学問を修めるべきところだ。アルバイトならまだしも起業して会社まで経営するのは珍しい。

起業した理由は「大学院に合格して、入学金と授業料を稼がないといけなかった」ためだという。そして「アルバイトの中でもプログラミングは割が良い仕事だった。当時はプログラムが書ける人が少なかったから」と、鎌田氏は当時を振り返る。

だからといって会社まで作ってしまうというのは行き過ぎだろう。その当時、アルバイト仲間だった故 荒川亨氏らと有限会社アクセス(現:株式会社ACCESS)を設立した。特に深い意味はなく「アルバイトの延長」のような意識だったそうだ。

そのプログラミングの知識が最初のヒット商品を生み出す。当時、開発の主流だったBASIC言語が使いにくいと感じた鎌田氏は、MITが開発したLOGO(教育向けプログラミング言語)をベースに新しいプログラミング言語「ACCESS LOGO」を開発。これがそこそこヒットするという好結果をもたらす。

そこで「ソフトウェアのライセンスは、もしかしたらすごくいいビジネスじゃないか」との考えから、ソフトウェアの研究開発を行い、ライセンスすることを事業の柱と考えるようになったという。ベースとなる知識さえあれば、製品を仕入れることなくお金に変えることができるということをこの時に学んだわけだ。

■次の主力製品の開発に苦悩
次の主力製品は、いまでは当たり前になっているネットワークプロトコルの「TCP/IP」だった。「当時のパソコンはスタンドアローンで売られていたが、絶対にネットワーク機能が入るという確信があった」と鎌田氏。そのパソコンをネットワークで接続する際に「TCP/IP」が必要になる。当時のパソコン向けのOSには「TCP/IP」は含まれていなかったため後付けソフトウェアという形で「TCP/IP」を商品化したわけだ。

パソコンを使ってネットワーク化をしたいと考えていた企業にTCP/IPは、「それなりに」売れていたが「Microsoft Windowsが標準でTCP/IPを載せるらしい」との情報があり、そうなると現在の商品は売れなくなってしまう。そこで新たな主力製品を作る必要性が出てきた。

鎌田は次の柱とすべき製品を4つ考えた。「ネットワークを前提とするアプリケーション層の製品」、「ネットワークルーター」、「ネットワークOS」、「グループウェア」である。Windowsにネットワーク機能が標準搭載されたら、いずれも大きな需要が生じる分野である。

決断は難しかったが、紆余曲折を経てネットワークアプリケーション層の製品開発を選択。その結果、NTTドコモのiモード携帯電話向けWebブラウザ「NetFront」の開発に至ったというわけだ。条件分岐の必要が出てきたときに、その時点で取れる選択肢を考え、それを的確に選択することで成功を導き出したのが鎌田氏の凄いところだ。

■スタートアップ支援ではあえて時間がかかる技術ベンチャーを支援
先述したように鎌田氏は現在、ACCESSから離れ、スタートアップを支援するための企業「TomyK Ltd.」を設立。現在10社ほどの会社をサポートしている。

それも一風変わっており「成果を出すのに時間がかかりそうなもの、あえてを選んで投資している。」と鎌田氏。

その理由は「大きな変革を引き起こすにはある程度時間がかかる。10年で10社の成功例が出ればいい。」からとこともなげに言う。短期間で回収できて、次々と回していくほうが効率的だと思うのだが「短期間で資金回収できそうな会社は、別のVC(ベンチャーキャピタリスト)を紹介する」と鎌田氏。何やら割の合わないことをしているように思えるのだが。

ベンチャーを支援する投資会社の多くは、数年間で資金回収できそうな企業を選んで投資している。効率を考えれば当然そうなる。これに対して鎌田氏は、資金回収できそうな期間が「10年ぐらい」と長い、投資効率の低い会社を、あえて選んで投資しているのだ。

確かに気の長い投資であるし、そんなに待てないという企業がほとんどだろうから、同じような投資をするライバル企業もいないだろう。なぜ、このような長期専門のエンジェル投資家になったのか。知りたい人は本コンテンツを読んでみるとよいだろう。

■「三年予測」って、なに?
「三年予測」とは、DODAエンジニアITが提供するWebコンテンツだ。様々な分野で活躍する「トップリーダー」と称される人にインタビューを行い、IT・Web系の企業に勤務している「エンジニア」へ向けたメッセージを発信している。

「トップリーダー」の人物像やご経験にスポットライトを当て、先の見えない昨今においてエンジニアとして魅力のある人物に成長していくためにはどうあるべきか、考え方や姿勢など、日々の業務を行うだけでは思いつかなかった発見・気付きを示唆するコンテンツとなっている。

同コンテンツを読んでもらうことで、より重宝される人材になるためのアクションを起こしてもらうことを目的としている。

■「粘ればチャンスは訪れる」、時間がかかる技術ベンチャーを支援

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