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誰も傷つけず、害のないノハムな社会へ!日本ノハム協会 代表理事 神田尚子氏に聞く、同協会が目指す未来

ITライフハック / 2020年12月23日 17時30分

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日本ノハム協会は、ウエディング事業を展開する株式会社タガヤの代表取締役でもある神田尚子氏がSDGsへの積極的な活動を推進すべく2020年2月に立ち上げた一般社団法人だ。すべての企業がSDGsに取り組むことを目指し、中小零細企業を中心にSDGsのコンサルティングと定期診断サービスを提供している。国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に向けて、今後注目が高まっていくと予想される。同協会代表理事 神田氏に話を聞くことができた。

■ウエディング事業からノハムへ
神田氏が代表取締役を務める株式会社タガヤは1974年、織物で有名な京都・西陣で設立された。創業当初は婚礼に関わる和装をレンタルとして扱う会社だった。神田氏がタガヤにCOOとして入社したのは1998年。10年ほどホテルで接遇を学んだ経験があり、会社の事業形態を和装レンタルから結婚式場運営へと拡大していった。そして2012年、同社代表取締役を引き継ぎ、現在に至る。

2016年に大きな転機が訪れる。創業者が癌で他界してしまったのだ。この出来事をきっかけに食への興味を持つようになり、自身も学びを進めていくうちに、世界にはいろいろな食文化が存在することを感じたのだそう。

癌にならないためには、どうしたらいいのだろう?

この疑問からさまざまな気づきを得た神田氏は、自身が学んだ知識を他の人たちに知らせる方法を考え、たどりついたのが「ノハム」だった。
「ノハム」とは、「no harm」。「害がない(悪い影響をもたらさない)」という意味であり、同時に誰も傷つけない(誰も取り残さない)という思いが込められている。

そのため、最初にフォーカスしたのは食事だった。

「害のない食事とは何か?」を考えた時に出てきたのが「無添加」「無農薬」である。畜産業では、ホルモン注射を打って成長を早めて育てた牛もいるが、「そういったものを食べてしまって、本当に良いのだろうか?」という疑問も湧いてきたのだという。
フランスでは、走りまわって育てた牛(赤身の肉)しか売れないのだそう。霜降りの肉を好む日本とは、価値観がまったく異なる。

日本ノハム協会 代表理事 神田尚子氏
日本ノハム協会 代表理事 神田尚子氏
■多くの中小企業にSDGsに取り組んでもらいたい
神田氏は年に6回ほど男女共同参画が進んでいるノルウェーやデンマーク、フランス、ポルトガル、イングランドなどに取材に行くという。それらの国を取材して感じることは「どんどんビーガン寄りになっている」「ベジタリアンが増えてきている」ということなのだそう。
先進国では、日本だけがベジタリアン専門店に行かないと、そういうものが食べられないのだという。取材に行った国ではステーキ屋など、どこへ行ってもベジタリアンメニューが食べられるのだ。このように様々なことを感じた結果、最終的にノハムを使ってSDGsに取り組むことにしたという。

当初は食の害を訴えるためにSDGsに取り組み始めたが、それだけでは足りないと感じ、SDGsのすべてに取り組むことになった。
ちなみにSDGsには17の目標があり、食に関すること以外にも様々な達成目標が設定されている。

その後、タガヤの経営理念に「SDGsに貢献する」を組み入れ、社内だけでなく顧客にもさまざまな気づきが生まれた。
一例を挙げると、次のようなものだ。
・健康に対する意識の向上
・ゴミを出さないような工夫
・余った食事を持ち帰る
・環境に配慮した商品を選択する

一番の目的について神田氏は、「自分ごとに思えない中小零細企業にSDGsに取り組むきっかけにしてほしい」とのこと。SDGsに取り組む中で自分たちの視点などを変えていき、時代にあった新しいサービスなどを生み出してほしいというのだ。

「サステナ企業診断」は、企業のSDGs経営を支援するサービスで、取り組みの分析・提案・PR をまとめてサポートしています。ノハム協会の展開について神田氏は、「今後はノハム協会に加盟していただいた中で、どれだけCO2を削減できたかなど、具体的な数値を示していける団体になりたいと思っています」と語ってくれた。

最近では毎日SDGsというキーワードが聞かれるようになり、各地でフォーラムなども開催されているものの、ほとんどが大きな団体ばかりであり、上層部の3%くらいしか参加していないのが状況だ。そういう状況の中でSDGsに対する日本の貢献度は、毎年落ちていっているのが現状なのだそう。「国民誰一人取り残さない」というメッセージ性を考えると、個人個人がしっかりとSDGsのことを理解して行動を変えていく必要がある。

日本の企業は、99.6%が中小零細企業である。その点を踏まえ、同協会は中小零細企業に対してSDGsを理解してもらえるように取り組んでいる。一人一人の行動が環境や社会を良くしていくことを信じて活動しているのだそう。またSDGsという言葉自体が少し難しい印象を与えることから、「ノハム(no harm)」という可愛らしい名前にしたことも語ってくれた。

SDGsは2030年で修了となるが、ノハム協会はその先も見据えた活動を展開している。

自分にSDGsの何ができるのか?

ノハム協会ではSDGsの17の目標と169のターゲットを企業向けの分かりやすい項目にアレンジしたチェックシートで用意しているとのこと。チェックシートへの記入で、「これだったらできそうだ」と気づいてもらい、実際に取り組んでもらえる仕掛けになっている。

ひとつ注意すべき点は、自分の行った取り組みが他の16の目標を傷つけてはいけないということだ。
「できるだけはやく、この指標を学んでいただいて、これからも持続的に生き残る会社になってもらいたい。」と、神田氏は語ってくれた。

SDGsについて語る、日本ノハム協会 代表理事 神田尚子氏
SDGsについて語る、日本ノハム協会 代表理事 神田尚子氏
■ノハム協会が中小零細企業を全力サポート
「企業がSDGsを学ぶ理由は、人材獲得にも影響があるからです」と、神田氏。
企業の人事部からの情報では、学生面接において5割の学生が「御社のSDGsへの取り組みは何ですか?」という質問をしたという。当然担当者がこの質問に答えられないと、学生はその企業へ入りたいとは思わないだろう。その点においてもSDGsへの取り組みを、企業として表明しておくべきなのだ。もちろんゼロベースで行うことは大変なので、ノハム協会が企業の伴走者となり、サポートを行う。

具体的なサポート内容だが、大まかな流れとしては次のようになる。
・チェックシートを提出して頂き、取り組みと指標を分析する
・企業にヒアリング監査を行い、現状把握や課題に向けての対話を行う
・SDGs 取り組み報告書にまとめて、社内・社外のPR活動をサポートする

その他社内ワークショップや、動画制作、SNS活用方法などもサポートしてもらえるとのこと。企業としては、SDGsに取り組むことによって、その会社のプロモーションにも繋がるサポートが受けられるというのだ。
費用も低く抑えられているのも、特徴のひとつ。年間12万円(メンバーシップ費用、サステナ企業診断、その他サポート含む)で、中小企業でも一歩を踏み出しやすい金額に設定されている。

近年はSDGsを商品として取り扱う企業なども多くなってきたが、その多くはただ情報を提供するだけなのだと言う。ノハム協会は情報提供するだけではなく、その企業と伴走する点が大きな違いだ。

「コロナ禍で企業の生き残りが大変な時代ですが、SDGsを戦略とすることによってその企業が発展し、社会や環境が良くなることに繋がります。SDGsを実践する企業しか、この先は生き残らないというのがコロナの示唆だと思います。」と、神田氏は語った。

小学校でもSDGsが始まっており、世界には飢餓で苦しむ国がたくさんあると知り、自分の置かれた状況がいかに恵まれているかを認識する。何かをしてもらったから喜ぶのではなく、ただこの状態が幸せなんだとハッピーに感じる強い心になるのだという。

■そもそもSDGs 経営とは?
先述したサステナ企業診断が、ノハム協会の役割はSDGsを上手く利用して社会に求められる企業に育てるサポートをすることだ。
中小企業のあるリスクを減らすため、200項目のチェックシートとヒアリング監査でSDGsのフィルターにかけて企業の弱みや課題などを可視化する。それをどうやって改善していくかを手伝ってくれるのだろう。

「最終的には大企業に劣後しない、国際競争でどこに行っても戦える企業になってもらえるように手助けしたい」と、神田氏。

SDGsとは包括的なもので答えがないし、やり方もいくらでもある。だからこそ、経営者の「経営に統合する」という宣言が必要。

ノハム協会の現在目指すところは、SDGsの概念がゼロだった企業がSDGs経営を通じて、未来に愛される商品やサービスを開発し、企業も継続・発展できるようになるか、だという。

■SDGsの実践が企業に良い効果をもたらす
さて、SDGsを実践することにより、本当に良い効果があるのか。企業の事例も紹介していただいた。

まずは、自身の会社である株式会社タガヤだ。
これまでタガヤでは砂糖を使わないクッキーを販売していたが、月に40万円ほどしか売れなかった。SDGs 経営を取り入れてredesignしたクッキーを販売したところ、月に1,000万円ほど売れるようになったのだ。子どもが嫌いなケールやピーマンを原材料に使ったクッキーにも関わらずなのだから、これは驚きだ。この事例が神田氏の大きな自信になったのだそう。

クッキーが売れた原因を考えてみると、消費者がどういう意思で商品を購入しているのかが見えてくる。
クッキーはアルミ缶に入っただけのシンプルなもの。消費者も見た目だけでなく、包装を簡易にすることによる環境面への影響や良質の素材が使われているのかという点を、しっかりと意識しているのが見えてくる。

次の事例は2020年7月東京にオープンしたレストラン「Noeue.TOKYO(ヌー・トウキョウ)」だ。Noeue.TOKYOは環境問題に向きあうレストランとして、環境に配慮した様々な取り組みを行っている。
一例を挙げてみると、次のとおりだ。
・間伐材を使ったテーブル
・枯渇しそうな食材を使わない
・食品ロスを無くすために普通は捨ててしまうような根や葉なども全部使う

コロナ禍で店が閉店してもおかしくない状況ではあるが、このレストランはずっとオープンしつづけているのだそう。「ものを捨てない。大切にする」「地産地消」「サステナブルな料理/サービス」いうメッセージが顧客に受けているのからなのだろう。
若者たちは、このような強いメッセージに共感して店を選んでいるという。

協会の今後について語る、日本ノハム協会 代表理事 神田尚子氏
協会の今後について語る、日本ノハム協会 代表理事 神田尚子氏
IT企業はすでにSDGsに取り組んでいるところが多い。特にGAFAではジェンダーや教育の問題に取り組んでいる。
eラーニングやテレワーク、SGDsに取り組むために本社を移動したりするのもその一例であろう。

ノハム協会の今後の展望についてだが、「ノハム協会がなければSDGsに取り組めなかった、またはその存在を知ることもなかった中小零細企業に取り組みを啓蒙していきたいと考えています。「ノハム協会でSDGs 経営を学び、自社サービスを新たに事業戦略化したところが、2030年以降にはさらに大と小が入れ替わるくらいの繁栄をしていただきたいと考えています。そのように企業と伴走していきたいです。」と、神田氏。

日本ノハム協会では、2025年までに中小企業零細企業の0.5%である2万社に取り組みを達成し、2030年までにスタンダードからプレミアムまでステージを分けながら、貢献度による表彰ができることを目指している。

■日本ノハム協会

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