菅首相の“ケータイ値下げ”は、格安SIM市場の崩壊を招く ドコモにも副作用

ITmedia ビジネスオンライン / 2020年10月29日 12時10分

写真

菅義偉首相は「携帯電話の大手3社が9割の寡占状態を長年にわたり維持している」「世界でも高い料金で、20%もの営業利益を上げ続けている」と指摘=9月16日の記者会見より

 景気の悪化が目立つ中で、負担が重くなってきている携帯電話料金の引き下げに焦点が当たるのも無理はない。「携帯は4割安くなる」と発言した菅義偉氏が首相になったのだから、そうした期待が出てくるのも当然だ。

 昨年、菅氏の官房長官時代の「4割値下げ」発言から、各社が料金プランを改定したことは記憶に新しい。「大して安くない」との声も上がったが、携帯電話事業者の決算を見る限り、消費者の実感以上に支払額は減っていたようだ。

 もっとも収益が減ったといっても、携帯電話事業専業のNTTドコモの営業利益率はおよそ20%もある。決して低収益の事業ではない。

 その後、菅氏が首相となり、官邸主導による値下げの圧力が増す中、KDDIとソフトバンクが10月28日、低価格の大容量通信プランを発表した。それぞれサブブランドのUQモバイル、Y!mobile(ワイモバイル)の商品ではあるが、20GBの通信プラン、定額の通話プランを含んで4500円前後という価格設定だ。

 4割という数字はともかく、菅首相の“個人的な思い”だったケータイ料金値下げは一定の範囲で実現したことになる。

●市場原理による淘汰には任せられない?

 携帯電話料金は、単純な通信料だけで構成されているわけではない。サポートなり、付加機能・サービスなり、あるいは端末買い替えのサポートや各種お得サービスパックなどさまざまな要素がある。

 KDDIとソフトバンクが、多様なパラメータを調整してこの価格を実現したのであれば、決して後ろ向きなことではない。サブブランドを持たないNTTドコモは、ドコモブランドのままでは対応できないだろうが、例えば、NTT本体による買収後なら「OCNモバイル ONE」ブランドでの展開も可能だろう。

 しかし、ここでは直近の料金妥当論から外れて、政治による携帯電話料金への介入の是非について話を進めたい。

 繰り返しになるが、携帯電話料金は通信サービスを提供するための原価に対し、どのようなサービスを付加し、適切な利益を乗せて販売するかで決まるものだ。利益の適正化は競合する事業者がいるのだから、市場原理の中で解決されるものであり、本来、政治が介入する余地はない。

 通信料金の原価については、その算出基準について繰り返し検討され、決められてきた経緯がある。いわゆる「格安SIM」を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)が存在しているのも、そうした原価に関する評価基準が定められ、基準となる原価に適正利益を乗せて、携帯電話事業者がMVNOに回線を卸しているからだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング