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井上尚弥を“モンスター”に 大橋ボクシングジム会長に聞く「持続可能なジム経営」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月31日 11時3分

●ドコモのスポンサードは「人生最高の出来事」

 川嶋の後も八重樫、井上と世界王者を生み、興行はやりやすくなった。一方、かつてボクシングの世界戦を必ずといっていいほど放送していた地上波は2000年代に入り、経営的な体力を失いつつあった。

 2018年に「ひかりTV」を運営するNTTぷららが、井上尚弥のスポンサーになった。それをきっかけに、大橋ジムが主催する興行「フェニックスバトル」のネット配信を始めた。その後NTTドコモがぷららを買収。Leminoで配信を続け、現在に至る。

 「ネット配信は私にとって次のターニングポイントでした」と話す。まさにネットの力によって収益構造が変わった瞬間だったのだ。ドコモがスポンサーになったことも、ジム経営にとって意味があった。

 「かつて米倉会長は『ボクシングの人気、知名度を上げるために、誰もが知っている企業がスポンサーになってくれたら最高』と話していました。夢見ていたナショナルクライアントのスポンサードが、ついに実現したのです。ボクサー生活、今のジム経営を含めても、人生で最高の出来事でしたね」

 ドコモのスポンサードによって「収益はさらに安定しましたし、強気の経営ができるようになりました」という。

 強気の経営とは、東京ドームなどの大会場で興行をすることを想像しがちだが、それだけを意味しない。マッチメークやファイトマネーで主導権を多くとれることになり「フェニックスバトルではファイトマネーが高い、良いボクサーを呼べるようになりました。面白い試合が組めて、さらに視聴者が増える」という好循環を生んだ。

●恩師から学んだ帝王学 次世代へ継承

 経営環境の悪化によって多くのジムが閉鎖され、1代で終わってしまうジムも少なくない。大橋会長によれば、生前の米倉会長は、大橋会長が現役の頃からビジネスの現場にも連れ出したという。

 「後援会対応を学んだり、テレビ局との話し合いの場に同席したりしたのです。現役生活の後半、2度目の世界王者になる時は、相手との交渉の場にもいました。オプション(再戦に関わる興行権)の詰めとかもやりました。だから引退後も、違和感なくビジネスができましたね」と笑う。

 今は井上の防衛戦の交渉に八重樫トレーナーを同行させている。「私がいなくなった後、八重樫体制にするということですよね」と話す。米倉会長が大橋会長に施した帝王学を八重樫トレーナーに教えているのだ。

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