1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

りそなデータサイエンス部長に聞く「金融DXの課題」 AI活用で何が変わる?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月29日 14時44分

 こうして見ると、10年ほど前から進めてきた、りそなグループのデジタル戦略は、成功していると言えそうではあるものの、ネットバンクの登場により伝統的な金融機関はより厳しい競争にさらされている。今後はより一層のデジタル化と、有人店舗を使った高度なサービス展開が求められそうだ。

 同社は、そんなマーケティングモデルの大半を自社で内製化しているという。

 「モデルは途中で作り変えることも多くあります。外部に発注すると、手直しする場合にスケジュール調整が必要になるため、どうしてもスピード感が出ません。自社の従業員で作っていれば、中で回していけばよいので、早く失敗と成功を繰り返せます。成功に導くためにも、内製化がカギだと考えています」

 一方で単純に内製化するだけだと、新しい知見や他社で使われている技術などを吸収できずに時間が掛かってしまうこともある。内製化と外部委託とをすみ分けながら、モデルの改善に努めているという。また、このマーケティングモデルの基礎となっているデータ分析の分野についても当初から内製化にこだわりつつ、高度な分析技術を組織として学んでいくために外部の知見も取り入れている。

 「新しく難しい案件は、資本業務提携しているデータ分析専門のブレインパッド社の知見を借りながら一緒に取り組んでいます」

 現在、データサイエンス部の人数は60人超で、約半数は中途採用だという。データを用いた調査・分析・可視化、アドバイス配信モデルの開発・改良などに取り組んでいて、支店勤務の従業員と同じ人事制度体系の中で、中途採用などの専門系人財が活躍できる人事評価制度も備えている。こうした制度上の受け皿があるからこそ、専門系人財の確保にもつながっているという。

 大西氏は「分析能力も大切ですが、コミュニケーション能力がもっと大切です。現場との対話を通じて課題を明確にし、現場が真に求めるものの解像度を上げた上で分析の設計をしていくことが求められます」と話す。

●銀行に求められている課題は?

 いま銀行に求められている課題としては、例えば、手続きとサービス面の向上を挙げる。

 「伝統的な銀行はもともと紙と印鑑を使用した取引をベースとしており、これまで既存の取引の電子化などに取り組んできました。今後は、さらに利便性を高めていく必要があると考えています。まだまだストレスを感じる手続きが多く残っています」

 例えば、税公金の支払いでは紙の書類を銀行窓口やコンビニに持ち込んで手続きをする必要があった。これをアプリ内で簡単に完結できるようにしたという。利用者の動線を意識したUIを作り込み、可能な限り「テクノロジーの力を使って顧客の負担を軽減したい」と話す。

 これまで人海戦術的に提供してきたサービス面についても、AIによって置き換えられれば「人手の数や利用時間に縛られない世界にできると思います」と指摘する。

 「マーケティングモデルを作るにあたっても、多くは人間がルールベースで作っていますが、足元では生成AIを使ってルール自体を自動的に生成するような実験をしています。いまはモデルのパターンを人間が考えているので数に制約があります。一方で生成AIを使うと、圧倒的なスピードで大量のデータを処理できる強みを発揮できるようになります。現時点では、生成AIが作成するモデルの正確性の担保など、乗り越えるべき課題はまだまだ多いのですが、今やっている配信を生成AIによって置き換えられないか試していきたいと考えています」

(中西享、アイティメディア今野大一)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください