1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

給料が上がらなくても「社員旅行」を復活すべき、その意外な経済効果

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月25日 9時46分

●「外国人観光客依存」問題も

 そして、もう一つが「外国人観光客依存」という問題だ。コロナ禍で日本から外国人観光客が消えて多くの観光業が打撃を受けたように、外国人観光客はパンデミック、自然災害、国家間の対立・紛争などでガクンと減るものなのだ。もちろん、時間が経過すればまた戻ってきてくれるものだが、観光業者の多くは中小企業なので、その間をしのぐだけの体力がなく廃業・倒産してしまう可能性がある。

 このような「観光立国の副作用」を緩和する一つの対策が、「社員旅行」ではないかと思っている。

 まず、オーバーツーリズム問題の根幹は「外国人観光客を分散できていない」ことだ。なぜ分散できていないのかというと、都市部や有名観光地以外の観光地の魅力が伝わっていない。多言語対応はもちろん、観光資源の整備もできていない。なぜやらないのかというと、「ニワトリが先か、卵が先か」という話だが、観光客があまり来ないのでカネがなく、魅力的な観光地にするための「投資」ができないのである。

 だから、そういう場所に企業は積極的に行ってカネを落としてもらう。

 もちろん、宿でただ酒を飲んで宴会をするのではなく、例えばその企業の事業分野やノウハウを生かして、訪れた地域をどうすれば有名観光地として「アピール」できるのかを社員みんなで考えてもいいし、自治体などと協力して実際に社会貢献のプロジェクトにしてもいい。「みんな仲良くなってよかったね」という社員旅行よりもよほど建設的ではないか。

 さらに、「外国人観光客依存」にも有効だ。もしまた世界的なパンデミックや大規模な自然災害が起きたとき、外国人観光客は一斉に消えるので、観光業は大打撃だ。それは国内GDPの約7割をサービス業が占める日本経済も、危機に追い込まれるということでもある。

 そこで社員旅行の活用だ。経済的に苦しい地域へ企業が積極的に旅行をしてカネを落とすことで、外国人観光客が戻ってくるまで、地域をなんとか持ちこたえさせるのだ。

●なぜ企業が負担をするのか

 ……という話をすると、「地方経済を支えようという目的は分かったが、それをなんで企業がわざわざ自分たちの負担でやらないといけねーんだよ」というおしかりが飛んできそうだ。なぜ筆者がこんなことを言っているのかというと、残念ながら今、「日本人の観光客」を増やす術はそれしかないからだ。

 先ほど申し上げたように日本の労働者は賃金が低い。そして、おそらくこれからもなかなか上がらない。「賃金と物価の好循環」を掲げた岸田政権下で、実質賃金マイナスが26カ月連続で過去最長を記録した。先ほども申し上げたように、労働分配率も過去最低だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください