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給料が上がらなくても「社員旅行」を復活すべき、その意外な経済効果

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月25日 9時46分

 これは岸田首相が「無能」だなんだという以前に、日本の構造的な問題だ。世界のほとんどの国は最低賃金が「全国一律」だ。しかも、国や自治体が、人々が最低限の暮らしができるように物価上昇にともなって、最低賃金をしっかりと引き上げていく。もちろん、経営者も文句を言うが、全国一律で上がるわけなので、全国一律に価格転嫁をすればいいだけだ。だから、世界では日本円で1500円とか2500円の最低賃金が当たり前になっている。

 しかし、残念ながら日本ではこれができない。全国一律ではないので価格転嫁しにくいこともあるが、やはり大きいのは「どんなに成長しない企業であっても倒産させてはならぬ」という不文律だ。

 日本企業の99.7%を占めるのが中小企業だというのはよく知られているが、実はその大半は何年経過しても企業規模や従業員数が変わっていない。いわば「現状維持型企業」だ。だから、海外のようにドラスティックに最低賃金を引き上げると、困る人がたくさんいる。

 そして、そういう人たちが、自民党の選挙を支えている。だから日本の賃上げは基本的に「春闘の賃上げが中小企業にも波及」という世界的にも珍しいストーリーに基づいて進められている。

 当たり前の話だが、日本企業の0.3%しかない大企業がいくら過去最高の賃上げをしたところで、全国の99.7%の中小企業にはほぼ関係がない。ましてや日本経済を支えているのはサービス業だ。この分野は製造業と違って、大企業の下請けなどほとんどない。

 当然、よく言われる「トリクルダウン」(富が富裕層から低所得層に徐々にしたたり落ちる理論)の影響などほとんどない。結局、物価上昇に追い付くわけもなく、中小企業で働いている日本人の6割はどんどん貧しくなるというワケだ。

 こういう八方ふさがりの現実がある中で、「それでもどうにか地方経済を支えなくてはいけない」という無理ゲーを続けなくていけないのが、今の日本だ。

●いま選べる「アイテム」は

 そこで選べる「アイテム」は限られている。一つは税金だ。補助金やらを地方にバラまいていく方法だが、人口減少でこれも厳しい。となると、いつものパターンで民間企業に頼るしかない。過去最高になっている「内部留保」をどうにか理由を付けて、吐き出してもらうのだ。

 しかし、先ほどから申し上げているように「賃上げ」は期待できない。悲観しているわけではなく、30年以上も給料が上がっていない国で、首相も政権も変わっても上がっていないのだ。そういう長年の問題がここにきて急に解決できるという楽観的なものの見方ができないだけだ。

 そうなると消去法で残るのは、企業しかない。日本は国民は貧しいが、企業は過去最高益で内部留保も潤沢だ。これをどうにか理屈をつけて、地方にバラまいてもらう。その理屈の一つに「社員旅行」を活用したらどうだろうか。

 かつて昭和の社員旅行といえば、「大型温泉ホテルの宴会場でどんちゃん騒ぎ」「コンパニオンを呼んだり新入社員の余興で大盛り上がり」という感じだった。もはや昔のドラマやドリフのコントでしか見かけない、このような社員旅行は「慰安」や「社員同士の親睦」が目的だった。

 しかし、時代は変わった。人口が減って賃金は上がらないという悪循環の中で、地域経済を守るには「持てる人」にカネを落としていただくしかない。「縮むニッポン」の中で、助け合っていくしかないのだ。

 令和の社員旅行は自社の利益のためというよりも、「社会貢献」「地方活性化」という意味合いが強くなっていくのではないか。

(窪田順生)

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